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翼よ、あれがパリの灯りだ  作者: 三重野 創


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17/18

菊水盆に帰る

重陽ちょうようの節句ですね」

 桃の節句や端午の節句と比べて、見過ごされがちではある。


「七夕は盛り上がってるほうじゃないかな」

 季節柄、イベントごとが目白押しだ。


「重陽の節句と言えば菊だけど、自分なりに色々調べたことがあるんだよね」

 日本の高貴な方々の紋章となっている。


「菊の紋に似た図案は、けっこう世界各地に見られるんだ」

 ただの偶然で一笑に付されるテーマである。


「日本人のルーツを辿れば、何も不思議なことではありませんね」

 東アジアでは無い。もっとずっと西方である。


「レオンくんは皇家の方とも面識があるの?」

 いま話していいものだろうか。


「私も短くはない年月を生きていますからね」

 他に良いはぐらかし方が思いつかなかった。


「それなんだけど、菊って薬としても優秀みたいだね」

 菊水伝説が言い伝えられている。


「霊薬として珍重されていますね。ありふれたものではあるのですが」

 現代の祭りでは酒に浮かべて飲む程度であるが、しかるべきところには不老長寿の製法が伝承されている。


「レオンくんも飲んだの?」

 生命力とは精の胆力である。


「知らない内に飲んでいたのかも知れませんね」

 錬金術は卑金属を貴金属に変える試みであるが、体内を炉と見立てて錬金術を行えば、人の生はより長命になるであろう。


「これを食べると辛かった時を思い出すんだ」

 メシヤ少年が菊最中を差し出してくれた。その餡を頬張る姿は、異性がほおっておけないであろう愛くるしさがあった。


 暗黒は単に否定的なものではない。たえまなく続く生産の切っ掛けにもなる。

輝かしい業績や偉大さは、ともすれば富と権力の強欲主義に陥りかねない。


(奈落の底に落ちたメシヤくんなら、いまの日本の状況を好転させるのは、造作もないことだ)











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