曠野の路
「レオンさん、ここへ来られては困ります」
神父がそう言うのも無理はない。白馬、それからマリア嬢に見られることは避けねば。
「アルゼット、私の目的を知らぬ訳ではあるまい?」
ベネディクトは洗礼名である。アルのことは、赤子のころから知っている。
両手を突き出し首を振る。観念したようだ。
「現代ではミサイルの代わりに讒謗が飛び交うようになった」
その命中率、致死率は、ある意味軍事兵器を凌駕する。
「世論を瞬時に形成し、安価でターゲットを排除する、この上ない方法なのでしょうね」
聖人のような顔をしているが、その法衣の下には鎧を隠している。
「あちらがそのような強制力を発動させるのなら、こちらはこちらで職務を遂行するまでだよ」
メシヤくんほどの影響力はないかも知れんがね。
「呪術ではなく、神言によって、ですね」
アルゼットがバイブルを開く。
『汝 記念べし汝の神この四十年の間 汝をして曠野の路に歩ましめ給へり是汝を苦しめて汝を試験み汝の心の如何なるか汝がその誡命を守るや否やを知らんためなりき 即ち汝を苦しめ汝を飢ゑしめまた汝も知らず汝の先祖等も知らざるところのマナを汝らに食はせ給へり是人はパン而巳にて生くる者にあらず人は主の口より出づる言によりて生くる者なりと汝に知らしめんが爲なり
汝の神の誡命を守りその道にあゆみてこれを畏るべし 汝の神汝をして美地に到らしめ給ふ是は谷にも山にも水の流あり泉ありたまり水ある地
汝の食ふ食物に缺くるところなく汝に何も乏しきところあらざる地なり』
悪言の広まる速度、破壊する力は、現代人ならよく知るところである。だが神言の伝播、浄化する力はそれとは比べものにならない。聖書的生き方は、きゃつらがもっとも恐れるものだ。
(奈保くん? なんだかいつもと雰囲気が違うわ・・・)




