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翼よ、あれがパリの灯りだ  作者: 三重野 創


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レオンの布告

「レオンくん、これなんだけどさ」

 メシヤ少年は私にも屈託無く話しかけてくる。


「フランス皇帝の布告、ですか」

 またいったいどういう経緯でこの書物を手に取ったのであろうか。


「うん。固有名詞を置き換えるとさ、現代にもバッチリあてはまるんだよ。200年以上も前の人なのに」

 私が書いたとは言わない方が良さそうだ。


「ちょっと僕なりに置き換えてみるよ」




【世界の諸民族よ、人あるいは諸君に言うであろう。私は諸君の生活を破壊しに来たと。その言葉を信じてはいけない。それに対しては答えるがよい、私が来たのは諸君の諸々の権利を取り戻してやるためであり、簒奪者たちを罰するためであって、私は闇皇帝以上に、神と、その預言者と、聖書を尊敬する者である、と。

 彼らに言うがよい。すべての人間は神の前において平等である、と。ただ智恵と、才能と、徳のみが、人間のあいだに差をつけるものである。ところで、いかなる智恵、いかなる才能、いかなる徳を有すればとて、闇皇帝は特権を与えられていて、生活を愛すべく楽しいものにする一切の物を独占しているのであるか?

 よい土地があるとしよう。それは闇皇帝のものである。美人の奴隷、立派な車、きれいな家があるとしよう。それも闇皇帝のものである。もし日本が彼らの小作地であるならば、彼らは神が彼らに与え給うた賃貸借契約書を見せんことを。しかし神は正しく、民衆に対して慈悲深くまします。日本の民衆は呼ばれてすべての職務を管理運営するであろう。最も賢明な人々、最も有徳な人々が統治するであろう、そして民衆は幸福になるであろう】




 そんなことを書いたのだったなと思い出すが、メシヤくんに読み上げられると気恥ずかしいものがあるな。


「新聞でもネットの投稿でもいいんだけど、こういう骨のある文章が失われつつあると思うんだよね」

 たとえ気骨のある名文があったとしても、広まらないように細工されているためであるが。


「現代の言論空間が貧弱になっているのは、差別者のレッテルを貼ってしまえば自分の無理な主張を通せるからなんだよね。さっきのフランス皇帝が平等について論じてるけど、あれこそがあるべき姿だと思う」

 悪平等やことさらに自然の摂理に反した論を立てる者に対して、神の裁きが始まったように私には見える。


「ほうっておくと易き道に流れるものです。パワハラを完全に排除したその先は、滅びの道しかありません。何をやっていても咎められないのですから、当然の帰結です」







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