ウォロ・エルゴ・スム
「ナボコフ!」
裁紅谷エリは私のことをこう呼ぶ。ミカエルの翼で同乗するようになってからというもの、メシヤ少年たちと言葉を交わすことも多くなった。
「なんでしょう? エリさん」
彼女はどことなく、亡きジョセフィンの面影がある。
「ありがとウ! お礼を言っておくネ! メシヤが元気になったのもナボコフのお陰だヨ!」
イスラエルの小さなエージェントは、決して任務を忘れたわけではない。まだ15歳。無理からぬことだ。
「いえいえ、私は特に何もしておりません。彼がご自身で奮い立ってくれたまでです」
「そうかナ? デスヘヴンでメシヤが閉じこもった時モ、ナボコフが親身になってくれたからだヨ」
あまり語られていないことだが、裁紅谷姉妹はメシヤ少年に降りかかる物理的厄災を最終的に防ぐ役割を担っている。その気苦労はいかばかりかと目頭が熱くなる思いだ。
「エリさん。アーロン首相から直々に言われていることと察しますが、メシヤくんの警護で四六時中気の抜けないあなたがたのほうこそ、私は頭が下がります」
「いやいヤ、ワタシ達は地獄のようなシゴキを受けてきたから、体力には自信があるんだヨ! それにメシヤの傍にいるのは楽しいからネ!」
「そうですね。彼はとてもユニークですから」
私が同調すると、ライム色の髪をした少女も大きく頷いた。




