御伽噺
朝、登校し席に座っていると王子が入ってくるのが見えた。
「やぁ、おはよう。君、ノワール君だっけ?よろしくな。」
「……あ、ああ、よろしく。」
思った以上に王子が気さくに話しかけてきたので少しキョドってしまった。
「今日は座学らしいけど、君は得意かい?」
「まぁ、それなりにはね。」
「へー!それは意外だ!いつも一緒にいるレインさんは戦闘が好きらしいからね。君もそうなのかなと思っていたんだよ。」
俺は思わず苦笑してしまった。
レインが戦闘狂とも言える性質を持っているのは俺も最近知った。
それも戦闘に対して誇りを持っているような……。
「それはそうと、従魔召喚とかあるけど出来る自信はあるかい?」
「……正直従魔召喚がどんなモノなのか理解していないからな。どうとも言えない。」
「なるほど!君みたいな人でも知らない事があるのか。」
王子はニッコリと笑う。
どうやら俺を思った以上に過大評価しているらしい。
「従魔召喚は術者自身の力量によって召喚されるんだ。従魔の方はそれを拒否することも出来る。だから、召喚された従魔は基本的には従ってくれるんだけど……。」
「だけど?」
「意地の悪い従魔に当たったら……ご愁傷さまって感じだね。」
王子は笑うが正直笑えない。
つまり王子が言いたいことは『従魔に殺されるな。』ってトコロか。
「そろそろ授業が始まるね。じゃあまた。」
「ああ、また。」
退屈な時間が流れていく。
ロベルト先生が教えているのは俺が常識として知っている事ばかりだった。
「ノワール君?聞いているのかなぁ?」
先生が少し怒ってしまったようだ。
「ええ、聞いてますとも。」
だから俺も少し煽ってみた。
理由は『面白そうだから』これにつきる。
「はぁ……。少し雑談しますか。何か話して欲しい事などありますか?」
先生はクラスを見渡すと1人の生徒から手が上がる。
「はい!昔の御伽噺に7人の英雄の話しがありました。これが説によると8人いた、と言われているそうですが、先生はどう思いますか?」
この御伽噺は有名な話だ。
7人の英雄が世界を救った『本物の英雄』の話だ。
だが、この英雄達にはリーダーがいなかった。
いや、いないと言うよりは、リーダーと思われる人物が否定をしたのだ。
だから実は8人目がいるのではないか?そう言われてきた。
「そうですね。8人目はいたと思いますよ?」
「なんでですか?」
「リーダーと思われていた人が否定したのは有名な話ですが……。メンバーにいた1人の女の子が忠実に慕っていた人の話が出てこないのですよ。」
先生は少し言葉を切る。
「女の子が慕っていたのはリーダーだった人では無いと、その人も言っていたと文献があったのでね。辻褄が合わないので8人目がいると思っていますよ。」
話が終えたタイミングで鐘が鳴る。
「ああ、ここまでですか。では授業を終わります。」
俺は支度をすると寮に帰って行った。




