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孤児院の英雄  作者: 夜猫
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失望

〈レイン視点〉


「ノワール大丈夫かな?」

「大丈夫でありんす。あの男が負けるなどありんせん。」


レインはタモちゃんを頭に乗せたまま会場に来ていた。


「でも少し不安で……。」

「わっちからしたら貴方サマの方が不安でありんす。」

「え?なんで?」


タモは少し考える。


「貴方サマと準決勝で当たる《英雄の弟子》とか言うあの女……かなり強いでありんす。」

「タモちゃんが言うほど強いの?」

「ええ、間違いはないでありんす。」

「へー、そっかぁ」


レインは少し俯く。


「どうしたでありんすか?」

「ううん、なんでも無いよ?」

「……なんで笑ってるでありんす?」


レインは少し戯ける。


「ちょっと楽しみだなぁって思って……ね?」

「………はぁ、好きにやるでありんすよ。」

「うん、わかった。」

「じゃあ少しだけ用事があるでありんす。頑張るでありんす。」


レインは頷くとタモはどこかへ行ってしまった。


「さて、頑張ろうか。次は準決勝。あの《英雄の弟子》……全力でやっても死ぬことは無いんじゃないかなぁ。」


レインは笑いながら会場へ向かう。

その笑みには狂気が少しだけ浮かんでいた。



「準決勝!選手を紹介するぜ!」


会場が唸り声で埋め尽くされる。


「ここまでの試合は全て瞬殺!流石《英雄の弟子》か!?赤コーナー。ロレス!」


ロレスが出てくると真ん中から少し離れた所で立ち止まる。


「突如現れたダークホース!詳細は不明!青コーナー。レイン!」


レインは会場に入るとロレスを見て笑う。

それを見てロレスも微笑む。


「貴方と出会えて良かったと感謝します。」


レインはロレスに頭を下げる。


「どう言う意味かしら?」

「ええ、少し不遜な態度かも知れませんが……。私が全力で戦っても死ななそうな人はこれまでに1人しか見てきませんでしたから。」

「………その1人が気になるけれど、少し誇らしいわね。」


2人とも笑う。


「では両者構えてください!」


レインとロレスは全く同じ構え方をする。」


「初め!」


審判が掛け声をすると同時にロレスが動く。


「はぁ!!」


大袈裟な声をかけて上から剣を振る。


「そんなあからさまな剣術……私に通じるとでも思っているのなら……ガッカリしますよ?」

「………!?」


ロレスは上から振った剣を体のバネを使い横振りに突如変更するがレインは分かっていたようにガードしてくる。

それも受け流す形で。完璧に。


「その守り方といい、構え方といい……誰が師匠です?」

「勝てたら教えてあげなくもないよ?」


レインは笑って挑発する。


「気になるので少し本気でやります。」

「ええ、ええ!どうぞ!」


ロレスはどうやらスキルを使ってくるようだった。

その証拠に最初とは違う構え方をしていた。


「っ!」


ロレスが1歩踏み込むと同時に視界からロレスが消える。


「………。」


目で見えないスピードで移動してくるロレスに対してレインは少しだけ体を半身にする。


「!?」


すると半身にした場所をロレスの剣が通る。

それと同時にロレスの腹に木刀を思いっきり叩きつけた。


「ーーー!?」


しかしスキルによって強化されたロレスは少しのダメージを受けただけとなった。


「貴方。本当に《英雄の弟子》ですか?私の師匠の半分以下ほどしか実力が無いように思えますが?」

「………。」


しかしロレスに攻撃が通らないレインに勝つすべが無い。

どうしようかとレインは考えていた。


「私は《英雄の弟子》だと担ぎ上げられていますが……実際にそれを名乗る資格があるとは思っていません。」

「なら、なぜ?」

「私がこうやって名乗ることで私の基礎を作ってくれて、拾ってくれたあの人に会えると思うからです。」

「………つまんな。」

「え?」


レインはそう呟くと審判の方へ向かう。


「私、降ります。勝者はあちらの人で。」


レインはそのまま会場を出ていってしまった。

ロレスは呆然とその後ろ姿を見るしか無かった。



「おい、なんで降参したんだ?」


振り向くとノワールがいた。


「なんで……なんでかぁ。」

「相手に失望したからでありんせん?」

「……そうかもね。」


タモが言う通りあの人には信念が無いように感じた。

戦いのさなかで見た剣術やスキルは立派だったと思う。

しかもあの人が言う見つけたい人は多分……


「ううん、ノワールも頑張ってね。」

「……俺が頑張ったらダメじゃないか?」


ノワールは本気で戦うことが嫌いじゃないし隠すつもりも無かった。

それでも本気でやらないのには理由があるのだが…….。


「そうじゃないの。あの人にはそれが大事だと思うから。」

「……そっか。なら8割ぐらい本気でやってあげるよ。」

「うん、それでいいよ。」


ノワールはレインの悲しげな背中を見つめながら控え室に入っていった。

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