王子
「受験生の皆さん。トーナメント表を確認して各場所に集まってください!」
どうやら声のする方にトーナメント表がある様だ。
出来ればロレスとは当たりたく無いものだが……
「あぁ、これはちょっと不味いかもしれないな……。」
トーナメント表を見て泣きたくなってくる。
確かにロレスとは決勝でしか当たらないしレインも決勝でしか当たらない。
ここまでは良かったのだ。
まさか王子サマと当たるとは思ってなかった。
王子サマ相手なら負けてもいいと思えるが当たる場所が悪い。
2戦目に当たるようになっていたのだ。
2戦目に敗北したとあってはレインにも見損なわれるのでは無いか。
そもそも流石になけなしのプライドが許してくれなかった。
「しょうがない……か。」
俺はちょっと覚悟して背伸びをする。
「優勝しちまおうかな。」
「あ、ノワール!」
声のするほうを見るとレインがいた。
「ノワールとは決勝で当たるね!初めての勝利をここでもぎ取るんだ!」
どうやらテンションが高くなっているようだった。
俺と戦える喜びか……それとも元から戦闘狂なのか……?
「あぁ、バーサック………」
戦闘狂の確率が高い気がする。
そもそも戦闘狂じゃなきゃあんなスキルがあるはずが無いように思えてきた。
「じゃあ決勝で!」
「ああ、決勝でな。」
さて、まずは王子サマをどうにかしないとな。
「第1回戦初め!」
俺は刃引きした剣を持って突っ立っていた。
「こんな奴が相手かよ。軽くひねり潰してやるぜ!」
相手は威勢のいい掛け声だが……。
威勢がいいだけであった。
「うおおおおお!」
駆け寄りながら上から剣を振り落としてくる。
それを見て溜息をつき、下から上に剣を振る。
それだけで決着が着く。
俺の振った剣は相手の剣より先に相手の腕に届いていた。
「ぐ………。」
そりゃ痛いだろうよ。
全力で振った腕には自分の力以外にも重力も足されていた。
それを思いっきり下から鉄を振りたげられたのだ。
痛みは想像を絶する。
「ああはなりたくないもんだな。」
相手に少しだけ哀れみを感じるノワールだった。
「さて、次はどうする?どうやって勝つのが正解だろう?」
ノワールの頭では勝敗では無くどうやって勝つかにシフトしていた。
ちなみにロレスもレインも瞬殺していた。
レインの頭にはまだタモちゃんが乗っているが……いいのだろうか?
「第2回戦初め!」
「どうかお手合わせお願いします。」
「いえ、こちらこそ王子サマと戦えて光栄です。」
「はは、王子と言っても僕は第3王子だから王子としては継承権が無い。だからこんな所にいるんだけどね。」
「それはそれは……。」
「さあ、始めようか。」
王子は剣を構える。
俺も割と真面目に構えた。
「では、オリオン=ブルト。参ります。」
「………ノワール。参ります。」
そして互いに動く。
オリオンの剣は立派だったと言う他無い。
それは剣聖であるザールを前にしても1分程は持ちこたえたかもしれないと思うほど、完成されていた。
しかし俺と相性が悪かった。
オリオンの使う剣は騎士や兵士など様式美を取り入れた剣術だ。
しかし俺は実践でしか使わないような様式美など無い剣術だった。
オリオンの綺麗な剣筋が目の前を通る。
俺はそれを剣で受け止めることもせずに体捌きだけで避ける。
実際攻撃した瞬間というのが最高の反撃のチャンスではある。
ただそれが難しいだけ。
俺はオリオンの剣を避けながら顎めがけて剣を振っていた。
「ぐっ……。」
顎に当たった剣を引き戻すと構えを解く。
オリオンは膝を着くと両手を上げた。
「勝負あり、勝者ノワール!」
俺はオリオンに近づく。
「剣筋は立派でした。とても良かったですよ。」「ははは、そう言って貰えると有難いな。」
顎を打ったことでふらついている足を意思だけで持ち上げる。
「ではまた。」
「ええ。」
こうして一刀のもと王子サマを切り捨てた俺はどうなるのか。
想像もしたくないノワールだった。




