王子
学校の入学試験は筆記試験と実技試験に別れている。
割合としてはちょうど50:50の点数となる。
ただし筆記試験はちゃんとしたテストなのに対し、実技試験は教師の目測で点数が付けられる。
最低でも入学するのに100点中60点は無いと入学出来ない。
正直ノワールに関しては問題無かった。
問題があったのはレインだった。
レインは実技試験こそ得意な分野だがスラムにいたのもあり、国の歴史や魔法の構築理論など全て分からなかったのだ。
いくら実技試験が満点でも60点無ければ入学出来ない。
ノワールがその事に気がついたのは試験日の朝だった。
「とりあえずこれとこれとこれは覚えておけ!」
「………」
ノワールがテストを予想してレインに覚えさせる。
そんな地獄の様な時間が朝から始まっていた。
「もう無理じゃない?私?」
意気消沈した様子でレインが言う。
「いや、大丈夫だと信じろ……」
「バカでありんす。」
ノワールの肩に乗っているタモからもダメ押しされた。
「私……実技試験で満点近く取らないと行けないんじゃ無い……?」
「…………」
ノワールは肯定こそしなかったが黙っている事こそが肯定を意味していた。
「はぁ……しょうがないヤツらでありんす。わっちが手を貸しんしょう。」
「え?いいのタモちゃん?」
「ただし今日のご飯は豪華にしておくんなし。」
それだけ言うとノワールの肩からレインの頭へ移動した。
「大丈夫か?」
ノワールは不安げに呟いた。
学校の前へ行き、受付を済ませる。
「じゃあここからは別々だ。」
「うん、じゃあね。」
「………」
レインとタモは試験場へ向かっていった。
「さて、俺はどうせ最低クラスに入る予定だし……そこそこ頑張りますか。」
会場へ向かうと外から歓声が聞こえてくる。
俺はそちらを向くと人の輪の中から1人の胡散臭いヤツが出てきた。
「どっかで見た事があるな……どこだっけか?」
金糸の様な髪とアメジストの様な蒼い目をした男性がニコニコしながら会場へ向かっていた。
「あれが王子様か……」
誰かが呟く。
「ああ、王子サマか。あんなチンチクリンが大きくなったな。」
ノワールが最後に王子を見たのは騎士団長として仕えていた頃まで遡る。
やけに聞き分けのいい大人びた子供がいた。
才能があると言われて1回だけ見に行ったのだ。
結果は期待したほどでは無いが、弱いわけでも無い。と結論づけた。
その当時ノワールの周りには才能に溢れた人がいっぱいいたのだ。
ザールにテレーゼ。果ては副団長も才能があった。
俺は少し王子を見ていると横に1人の女性が見える。
「………は?」
思わず2度見してしまった。
女性と言うよりは少女と言った方がしっくりくる。
少しの間だが一緒に暮らしていた。
そう孤児院の年長者ロレスがそこにいた。




