魔法の原理
「そんなじゃダメだ!!」
「じゃあどうしろって言うのよ!!」
スラム街で2人の声と剣と剣がぶつかる音が響いていた。
「見本見せてやるから打ってこい。」
「はっ!」
レインは力いっぱい剣を振り下ろす。
「………」
すると剣と剣がぶつかった瞬間、ノワールの剣の表面をレインの剣が滑った。
「打ち合うなんてバカのする事だ。剣で必要なのは『足さばき』『脱力』『体術』だ。」
ノワールは得意げに言う。
「『足さばき』が上手くなればスキルよりも凄いことが出来たりするし、『脱力』を覚えれば今みたいな事が出来たりする。」
ノワールは剣を肩に担ぐ。
「『体術』を覚えれば攻撃の手段が物凄く広がるんだ。特に人間はな。」
「でも力いっぱい振り下ろした方がスピードも出るんでしょ?」
ノワールは肩を竦めて馬鹿にしたように言う。
「それが間違いなんだ。世の中の馬鹿共は力こそ正義みたいな価値観を持ちやがる。」
「じゃあ力より早く振る方法って何よ?」
「はぁ……じゃあ俺が今から剣を2回降るから考えろ。」
俺は剣を正中に構える。
上に振り上げ力いっぱい振り下ろす。
すると凄い音を立てて剣が振り下ろされた。
「2個目」
また剣を持ち上げる。
振り下ろすとさっきと変わらない速度で振り下ろされたが音は全くしなかった。
「どうだ?わかったか?」
「………力の入れ具合……かな…?うーん……」
「ま、半分正解だな。正解は『脱力』だ。」
レインは驚く。
「え?『脱力』って……だって1回目と速度変わらなかったじゃない!」
「そりゃそうだろ。剣の重みだけで振ってるんだし。」
「でも力を入れていないと……魔物は切れないんじゃないの…?」
レインははて?と言う感じでこっちを見る。
「お前が考えているのは魔物が真っ二つになる様だろ?俺が教えるのは如何にして少ない傷で倒すか…だ。」
「……弱点?」
「そ、どんな生き物でも弱点は存在する。人なら首、心臓、頭。いずれも少し切ったり貫かれたら死ぬ。」
レインは首を傾げた。
「でも鎧を着ていたらどうするのよ?」
「なんで鎧に攻撃をするんだよ……首とか確実に鎧で守れないだろ。」
「あ、そっか!」
ノワールは呆れる。
「じゃあそれを踏まえてもう1回。」
日は落ち、辺りが暗くなっている。
「さて、今度は魔法について勉強するぞ。」
「……え?勉強?」
「そ、勉強。」
「無理無理無理!私、頭が悪いから!」
「大丈夫だ。魔法なんてスポーツに近い。」
「……本当?」
「あぁ、多分レインなら感覚で解るんじゃないか?」
ノワールが自信満々に言ったのには訳があった。
魔法は貴族サマの特技だと思われがちだが実際、ノワールの教えるの魔法は少しの知識と感覚で成り立っている。
「まず、こういう考え方がある。世の中は小さな、本当に小さなモノの集合体だ。」
「集合体?」
「そうだ。その集合体をバラすと種類がある。」
「何種類ぐらい?」
「数え切れないな!」
「……やっぱり私は無理じゃん。」
「そんなことないぞ。覚えるのは10種類ほどだしな。」
ノワールは木の枝を手に取る。
「まず、魔力を身体から出してみろ。」
「こう?」
「そうそう、そうしたら目を閉じて何か身の回りのモノを察知してみろ。」
「うーん……あ、空気があるね。」
「そりゃそうだろうな。じゃあ空気の中にも神経を集中してみろ。何か癖があったりするモノが無いか?」
「………うん、なんか変なヤツがいっぱいある。」
ノワールは表を地面に書く。
「特徴を言ってみろ。」
「えーと……柔らかいのがいっぱいあって、少し歪な形をしてるのもある。」
地面に書いていく。
「後は?」
「うーん……なんか軽そうなモノがある気がする。」
ノワールは表に書くとレインに目を開けるように言った。
「書いておいたから自分でもっと探して書いてみろ。俺は寝る。」
「ん、わかった。じゃあおやすみー。」
朝、ノワールが起きると地面には沢山の文字が書いてあった。
「やるなぁ。」
隣を見るとレインが寝ている。
この量から察するにかなり遅い時間までやっていた様だ。
「起こさないでおくか…」
昼になるとレインが起きてくる。
「ん……おはよう。ノワール。」
「あぁ、おはよう。もうこんにちはの時間だけどな。」
「え?うそ!かなり寝てた!貴重な時間が…」
「いや、よくここまで発見出来たな。素直に褒めてやる。」
レインは少し下を向く。
「だけどもっとありそうだった…よくわからないモノが多すぎてどうしたらいいのか解んなかったんだ…」
「ここまで出来ていれば大丈夫だ。後は組み合わせるだけだしな。」
「組み合わせる?」
「ああ、これを1個ずつ組み合わせていくんだ。ただし、組み合わせによっては爆発したりするから気をつけろよ。」
「うん、やばいと思ったら逃げるから大丈夫。」
「……その場合、俺が怪我する未来が見えるんだが…」
「……気にしないの!さ、剣を教えて!」
ノワールは呆れながら剣を手に取った。
この日の剣の講義が厳しかったのは言うまでもない。




