神様
ノワールは8階層を歩いていた。
辺りの魔物も強くなり、気が抜けない状況だった。
「くそ、疲れてるな…」
迷宮に潜ってから2日ほどが経ち、録な睡眠が取れないノワールは注意力が散漫となっていた。
「休憩だ。」
道の見えにくい場所に座り、目を閉じた。
「はっ!ヤバい、寝てしまったのか。」
2日間睡眠が取れなかったノワールは眠ってしまったが幸運な事に魔物に襲われなかった。
「次の階層へ行かないとな。」
この後何度か戦闘をし、9階層へ踏み出した。
「ガアァアァ!」
「くそ!」
狼型の魔物3匹が連携して攻撃してくる。
魔物の割に連携が上手いので手こずる相手だ。
1匹が飛びかかってくると同時に地面を這うようにもう1匹が近づいてくる。
その後ろをもう1匹がカバーする。
「人間でもこんな連携取れる冒険者は中々いないぞ…」
飛びかかってくる狼に対しては剣を、地面の狼には魔法を放つがどれも致命傷には至らない。
「おりゃっ!」
「キャンっ!」
3匹目の狼を剣で切り伏せる。
続いて狼狽した2匹の狼を魔法と剣で倒した。
視線の先にはボスに続くドアがあった。
「一旦休憩しようか。どんな宝物を守っているか…楽しみだな。」
ニヤリと笑う。
休憩を終えてドアを開ける。
そこは真っ暗で何も見えない。
するとかがり火が次々と付き、明るくなる。
「え……?」
俺はその場で硬直する。
なぜなら…
「はぁ、遅いよ!全く…」
ボスだと思われる魔物の死体の上に三日月の形をした浮遊物に乗った酷く綺麗な少年がいた。
「ーー誰だお前。」
ノワールは硬直から立ち直ると話が通じるであろうその少年に問いかける。
「へ?僕かい?僕はねー、そうだな、神様とでも言うかな?」
少年はニヤニヤと笑った。
「は!神様なんぞこの世界には存在しない。魔物か?」
「心外な!魔物等と同列視しないで欲しいな。怒っちゃうよ?」
ニコニコと少年は言葉を返す。
「あ、もういいよ。出てきて。」
「何を言ってーー」
「あぁ、これでいいのか?」
ノワールの後ろから声が聞こえた。
急いで声の主を視界に入れる。
その男は黒いマントを着ていて姿はわからなかった。
声も変えているような印象を受ける。
黒いマントの男はスタスタと歩き少年の近くまで移動した。
「上出来だ!これで僕達はお役御免だね。……あ、でもその子とは1回戦ってみたいかな。大丈夫だよ!命までは取らないし。」
少年はニッコリと笑って言うが闘気は本物だった。
しかもその装いから俺が勝てる相手でも無い事がわかってしまった。
「はは、冗談はーー」
「ごめんね?」
少年は一瞬で俺の前まで来るといつの間にか持っていた剣を振り下ろして来る。
「くっ!」
辛うじて受け流すが剣戟は続く。
「せいや!っと」
少年は軽く振っているのだろうが俺は必死にその速度に追いつく。
一方的に攻撃されていたが少年が少し距離を取る。
「へぇ、流石にこれぐらいは大丈夫かな?」
少年は剣を大上段に構える。
「じゃあ、少し力を入れようか。」
「ーー!」
次の瞬間には言葉にならない程、精錬された剣術が上から落ちてくる。
俺は反応出来無かった。
「ま、こんなもんだよね。」
少年は寸止めをすると軽い感じで言い放つ。
「じゃあねー。あ、そこのお宝は君のものだ。自身に使うようにね!」
俺は少し視線をずらすと宝箱があった。
「と、言っても君じゃ無理かな。」
少年は宝箱の中身を取り出す。
どうやら中身は何かの液体のようだ。
少年はビンの蓋を開けと此方を見てニヤリと笑う。
何か嫌な予感がして逃げようとするが一瞬で移動してきた少年に顔を掴まれる。
「ほいさっと。」
素早く口を開けさせ液体を俺に含ませる。
驚きのあまり俺はその液体を飲んでしまった。
「よし、これでいいね。」
「何を飲ませた!」
「んー、それはあと…そうだな。20秒後ぐらいに解るかもね!」
少年は魔法なのだろうか?何かの力を使いゲートの様なモノを作り出した。
「ついで!サービスするよ。」
もう一個ゲートを作る。
ゲートの向こうには迷宮の入口と思われる景色が広がっていた。
「待て、お前等は何者なんだよ!」
「えー、さっき言ったじゃん。神様だって。」
「んな訳ないだろ!」
「じゃあ僕だけ言おうかな。僕の名前は月詠。月に引き篭っていた神様だ。その僕が与えたその液体。大切にね?」
「ま、待てよ!」
「じゃあねー」
2人はゲートを通り、居なくなっしまった。
ゲートも閉じられる。
「なんなんだ?アイツら」
取り敢えずゲートに近づく。
その瞬間、心臓が跳ねた。
「へ?」
身体が異常な程熱を帯びる。
心臓が早鐘を打つ。
脳も焼ききれそうだ。
「あ、あぁぁぁぁぁぁァァァ!」
そしてノワールは意識を失った。




