第69話 母の味とその後
馬車が屋敷に着いた。馬車から降りたリリさんは、固まった。
そうだよなぁ、俺もしばらく固まったもの。
「侯爵様のお屋敷って、こんなに大きいの」
「王様が言うには、標準らしいですよ」
「ネネ、こんなお屋敷に住んでいるの?」
「うん、もう慣れちゃった」
***
そこに、セバスチャンが現れる。
「あなたが、ネネ様のご母堂ですな。どうぞ、こちらへ」
リリさんは、呆然としつつ、セバスチャンに連れられて行く。
リビングに移り、ようやくリリさんは普通に戻って、お茶を飲んでいる。
ネネは、お母さんに引っ付いて離れない。
「どうでしょう、リリさん。今夜は泊まってゆかれたら?」
「お母さん、お願い。一緒に寝ようよ」
「あ!そうだ!私、お母さんのお料理を久しぶりに食べたい!」
「ネネ、それはいい考えだな。俺も久しぶりに食べてみたい」
「もう、二人とも、こんなお屋敷の料理があるのに、私の料理なんて」
「いいじゃない、食べたいの!マシューいいでしょ?」
「賛成!リリさん作ってよ」
「二人がそう言うなら、厨房借りるわね」
「やったぁ!お母さんの料理だ!」
「だれか、リリさんを厨房へご案内してあげて」
リリさんは、メイドに連れられてリビングから出て行った。
「よかったね。ネネ」
「そうだね、マシュー、今夜はいっぱい話すんだ」
そして、夕食の時間となった。美味しそうな料理が並ぶ。
「そうそう、この味。猫屋を思い出すなぁ。めちゃくちゃ旨い!」
「あぁ、お母さんの味だ」
ネネが泣きながら食べている。
「そんな、私の料理なんて、大したことないわよ」
「いや、美味しいから、チェーン店がどんどん増えているんだよ」
「そうだよ、お母さん、自信を持って」
楽しい夕食が終わり、お風呂に入ったネネとリリさんがネネの部屋へと向かう。
親子二人で話すことも、沢山あるだろう。
***
翌朝、二人は寝不足気味だった。大いに語りあったんだろう。
朝食をとった後、リリさんが言った。
「じゃあ、そろそろ、私は帰るわ」
「えーー、お母さん一緒に暮らそうよ!いいでしょマシュー」
「俺はいっこうに構わないよ」
「ネネ、聞いて。私はね、今の仕事が楽しいの。もっと続けるつもりよ」
そう言われると、ネネは何も言い返せない。
「でも、たまには、会いにきてね」
「もちろんよ、ネネ。親子なんだから」
こうして、リリさんは、馬車で送られて行った。




