第68話 王都店の開店と親子の対面
商業ギルドに店舗の設計図を送ってから、しばらくして完成したと報告があった。
俺は、従業員を雇い、開店することにした。
当日、店舗の二階の事務所から覗くと、開店前なのに長蛇の列ができていた。
「私、この店が開店するのを待っていたのよ」
「奥さんも?私もよ。便利な物が売られていると噂だけ聞いてて」
「ねえ、なんで王都には店を作らなかったんでしょう?」
色々な声が漏れ聞こえる。しかたがなかったんだ。長々と魔族領にいたから。
開店と同時に、お客がなだれ込み、従業員に商品の説明を求める。
従業員には、予めマニュアル、もとい、説明書を暗記させていたので、何の問題もなく、お客をさばいている。
「これじゃぁ、私たちは必要ないわね」
とネネが言う。
「そうだね、これで楽ができるね」
俺たちは、裏口に止めてあった屋敷の馬車に乗り、家路についた。
***
屋敷に戻って、リビングでまったりとお茶を飲んでいると、
「ああーーー!」
とネネが叫んだ。
俺は、お茶を吹き出しそうになりながら、
「ごほん、ごほん。なんだよネネ、いきなり」
「マシュー、大変よ!大変!私、お母さんと会っていない!王都にいるんでしょ!」
「ああーーー!忘れてた!そうだった!」
俺は、急いで使用人に、ネネのお母さんの居所を探させた。
小一時間ほどで、ネネのお母さんは王都のレストランの第四号店にいるらしいとわかった。
また、チェーン店が増えていた・・・
俺とネネは、屋敷の馬車で、急いでレストランの第四号店へと向かった。
そこには、厨房の従業員を指導してる、ネネのお母さん、リリさんがいた。
ネネは、「お母さん!」と叫びながら、リリさんに駆け寄る。
リリさんは、びっくりした顔で、「ネネ、ネネなの?」と飛びつくネネを抱きしめる。
「お母さん、久しぶり。会いたかった」
「お母さんもよ。あぁ、ネネ、こんなに大きくなって」
二人とも抱き合いながら、泣いていた。
二人が落ち着くのを待って、俺は声をかけた。
「すいません。リリさん。結構前に王都に引っ越して来たんですが、すっかり忘れてて」
「お母さん、私もよ。すっかり忘れていた」
「いいのよ、それだけ忙しかったんでしょう」
「さあさ、こちらへ」
リリさんは、店の事務所に案内してくれる。
「長々と、娘さんをお預かりして、すみませんでした。心配なされたでしょう?」
「いいえ、マシューさんが一緒だもの、心配はしてなかったわ」
そう言って、まだ抱き着いている、ネネの頭を優しくなでる。
「私、お母さんに話したいことが沢山あるの」
「私もよ、ネネに話したいことが沢山あるわ」
「どうでしょう、今夜はウチの屋敷に来ていただくってのは?」
「そうね、そうさせてもらおうかしら」
ネネは嬉しそうにうなずく。
こうして、リリさんは、ウチの屋敷に来ることになった。




