第57話 悪魔崇拝
ある教会の地下、黒ずくめのローブを着た男たちが集まっていた。
男たちは、暗い部屋でロウソクの光で照らされた祭壇に向かって祈っている。
その祭壇には、禍々しい姿をした悪魔の像。そうなのだ、ここは悪魔崇拝の場なのだ。
***
「マシュー、この新商品はどこに置くの?」
「あぁ、ネネ、それは、一番目立つそこに置いてくれ」
俺とネネは、開店の準備をしていた。
そこに、ふらりと隣の店の魔族の店長が現れた。
「やあ、マシューさん、ネネさん、精が出るねぇ」
「やあ、これは隣の店の店長。おはようございます」
「景気はどうだい?」
「まあまあってところですかねぇ。今日は新商品を出すので、売れ行きが心配ですが」
「おたくの所の商品は、みんな便利で品がいいから、大丈夫だよ」
「そうだといいんですがねぇ」
魔族領の王都に店を構えてから、結構たつので、すっかりここの商店街に馴染んでいた。
「それはそうと、聞いてるかい。ここのところ、若い娘さんがかなりの人数、行方不明になってるって」
「ネネさんも、気を付けなよ」
「まあ!そうなんですか。怖いわねぇ」
「大丈夫だよ。ネネは俺が守る」
「おーお、お熱いこって。じゃあな」
「はい、また」
「何かの事件に巻き込まれたのかしら?」
「若い娘だけってのが、気にかかるな」
「魔王に聞いてみるか」
***
店の定休日に、俺は魔王城に向かう。
「やあ、魔王様いる?」
「これは、マシュー侯爵。はい、おられますよ。待合室にどうぞ」
門の兵が、俺を促してくれる。
待合室で少し待ってから、謁見室に通される。
「魔王様におかれましては、ご機嫌麗しゅうございます」
「うむ、苦しゅうない。して、どうしたマシュー殿」
「なにやら、不穏な噂を聞きまして」
「不穏な噂じゃと?」
「ええ、最近、若い娘の行方不明が頻発してると聞きまして」
「おう、そのことか、わしも聞き及んでいるぞ」
「それで、街の警備を強化しとるんじゃ」
「そうでしたか、それなら安心ですね」
「じゃが、いっこうに犯人の目星がついておらん」
魔王がため息をつく。
「行方不明になった娘の、共通点はないのですか?」
「これといってないんじゃ、あるのは敬虔な神の信徒ということじゃが」
「敬虔な神の信徒ですか、さっぱりですね」
「そうじゃ、わしも困っておるんじゃ」
「マシュー殿も気にかけておいてくれ、Aランク冒険者じゃろ」
「分かりました。気にかけておきます」
そう言って、謁見室を辞して、家に帰った。
「どう?魔王様、なにか言ってた?」
「街の警備を増やしているが、犯人の目星はついてないって」
「行方不明の娘さんたちは、敬虔な神の信徒だったって」
「ふぅん、教会が怪しいわね」
ニタリとネネが笑う。
「いやいや、教会なんて、犯罪と真逆だろう」
「いいや、怪しい。女の勘よ」
ニタリ。
「女の勘って・・・」
「怪しくなさそうなところが、一番怪しい。女の勘をなめないで」
ニタリ。
まあ、一理あるか。信じてないけど。
その次の日から、俺は教会を見張ることにした。




