第46話 姫様救出作戦
某町の建物の地下にエリーは囚われていた。
「これで、魔族のお姫様を殺して、魔族領に放り出しておけば、友好はおろか、戦争になるだろうて」
「その戦争で、がっぽりと儲けさせてもらいますよ子爵様」
「うむ、付け届けは、怠らぬようにな」
「わかっておりますよ、男爵様」
「わっはっは、これでわしらの地位も安泰じゃ」
エリーは、その考えにおぞましさを感じていた。
***
姫様捜索隊が、結成された。先頭は魔王、魔力探知のためだ。
その後ろに、俺と魔族の精鋭部隊。
更に後ろに、王様を加えた人間族の精鋭部隊だ。
魔王は、迷いなく進んでいる。
あの方角は、人間族の辺境の町だ。王様も誘拐犯が人間族だというのが、ますます濃厚になって来てかなり憤っているようだ。目が怖い。
町の住民は、突然に魔族が町に入って来たので、パニックになりかけたが、その後ろに、王様を含め人間が続いているので安心した。
魔王が止まった。
「わしの魔力探知では、あの家にエリーがおる」
「あの屋敷の持ち主は、だれだ?」
王様が側近に問う。
「たしか、ロメロ男爵の屋敷の一つかと」
「けしからん!突っ込むぞ!」
「お待ちください。王様。このまま踏み込んだら、エリー姫の身が危険でございます」
俺が、進言する。
「では、どうする?」
「私が、こっそり侵入して姫様を確保いたします。踏み込むのはその後で」
「マシューよ、うまくいくのか?」
「私は、Aランク冒険者です。造作もございません」
「それでは、頼むぞ」
「はい、お任せください」
俺は、魔法を使って体を透明にする。
そのまま、裏口から侵入し、屋敷内を探す。
「いないな、もしかして、どこかに地下室が?」
魔法の千里眼で、足元を見る。
床が透けて、地下室が見つかる。
「いた!エリーだ!」
俺は、足音を忍ばせ地下に下りて行く。
「周りの黒頭巾の男たちがじゃまだなぁ」
魔法で、地下室の隣の部屋の荷物を落とす。
「ドタン」
「なんだ、隣の部屋か?」
黒頭巾の一人が見に行き、他の黒頭巾もそちらを見ている。
「今だ!」
サッと部屋に入り、エリーを小脇に抱えて、階段を駆け上がる。
「おい、お姫様がいないぞ」
と言う声が聞こえるが、もう遅い。
エリーが
「ムー、ムー」「ムー、ムー」と言っているので
「俺だよ、マシューだよ」と告げると、安心感からか泣き始める。
俺は、正面玄関から飛び出て、
「エリー様、確保!敵は地下です!」
と叫んだ。
その途端、人間、魔族の精鋭部隊が一斉に屋敷になだれ込む。
エリーの猿ぐつわ、ロープを解いて、魔王に渡すとエリーが、
「父上、父上、怖かったよぅ」と泣きじゃくる。
魔王も泣きながら、
「もう、大丈夫じゃ、大丈夫じゃ」と声をかける。
そうこうしてると、縄に繋がれた、黒頭巾の男たちがぞろぞろと引っ立てられて屋敷から出て来た。
王様は、つかつかと近づくと、片っ端から黒頭巾を脱がして行った。
「おぬしらは、兄の腹心だったマディソンを後押ししてた貴族連中と武器商人ではないか!」「まったく、なんてことをしでかしてくれたんだ!この大事な時期に!」
王様は、魔王の前に行き、こともあろうに土下座をして謝りだした。
「申し訳ない!魔王殿!人間族の貴族が、魔王殿の愛娘を誘拐するなど。いくら謝っても謝り切れん」
「王よ、立ってくれ」
魔王は王様に手を貸して、立ち上がらせる。
「人間族にも魔族にも悪い者はおる。こんなことじゃ、人間族と魔族の友好は捨てられんよ」
「おぉ!魔王殿!なんて、心が広いのだ」
王様はむせび泣きながら、魔王の両手を握る。
「こやつらの処罰は、人間族にゆだねる。そちらの法で裁いてくれ」
「承った、魔王殿。わが国の法でも極刑は、免れんだろう」
「魔王殿よ、我々は一旦、王都に帰る。近いうちに魔王城に赴かせていただく」
「お待ちしておるぞ、人間族の王よ」
二人は、固い握手を交わした。
俺は、人間族と魔族の友好は大丈夫だろうと思った。
「マシューよ、誠に大儀であった」
「褒章は後ほど、届けさせる」
そう言うと、王様の一行は、罪人を連れて、王都に帰って行った。




