第44話 やっぱり砦に
ロックさんたちが、発っていった後、ロックさんが言った通りに、国王の使者が来た。
「マシュー様、砦での王様と魔王の会談に出席いただきたい」
あっちゃー、やっぱりか。
「断ることは?」
「王命で、ありますがゆえに」
がっくし、やっぱりか・・・
「ネネも連れて行っていいですか?」
「ネネ様は、王女エリー様と仲がよろしいと伺っておりますので、ご同行願います」
***
暗い、地下室の円卓で数名の頭巾を被った男たちが、密談をしている。
「王は、魔王と本気で友誼を結ぶようじゃな」
「嘆かわしい事よ、魔族との友誼など」
「そうじゃ、そうじゃ。魔族は下賤の者どもよ、それを」
「一週間後の砦での王と魔王の会談を、ぶち壊す算段は大丈夫か」
「それはもう、万事、抜かりなく」
「ふぉふぉふぉ、良きかな。良きかな」
***
後日、俺とネネは、馬車で会談場所の砦に向かっていた。
道中で、魔物がたまに出現したが、サクッと倒した。
「ねえ、ねえ、会談ってパーティもあるのよね」
「そうらしいね、俺の礼服とネネのドレスも持って来たよ」
「うわぁ、楽しみ。どんな、パーティだろう」
「そうだね、楽しみだね」
そんな他愛のないことを、話していると砦に到着した。
魔族領の門は、魔族兵が検問を行っていた。
「招待された、マシューとネネです」
「はっ!これは失礼を。どうぞお通りください」
砦の中は、結構大きな中庭となっている。
奥に、ステージが置かれ、椅子が並んでいる。王と魔王が座るのだろう。
***
礼服とドレスに着替えた後、案内された人間側の待合室は、軽食とワインがふるまわれており、結構な数の貴族がいる。
平民の俺たちには、場違い感がありまくりだ。
その中の、温和そうな貴族が、話しかけて来た。
「これは、これは、マシュー殿。お初にお目にかかります」
「私は、侯爵のロベルト・フォン・レリックと申します。ロベルトとお呼びください」
結構、お偉い貴族様だった。
「初めまして、ロベルト様。マシューです。そして、こちらがネネ」
「おぉ、魔王様の王女、エリー様と仲のよい、ネネ殿ですか」
「マシュー殿は、国王に呼ばれて?」
「そうです。王命ですから断れなくて、こんな場違いな場所へ」
「それはそうでしょう。魔王様から直々に魔族領に支店を出せと言われた方ですので」
ここで、侯爵は声を潜めて、
「どうやら、魔族との友好を反対する貴族が暗躍してるとかで、くれぐれも、お気を付けてください」
「そうですか、そんな貴族がいるのですね。気を付けます」
「では、私はこれで」
ロベルト侯爵は別の貴族のところに向かって行った。
そんな貴族がいるのか。これは、気を付けないとな。
***
しばらく、歓談が交わされ、会談の時間となった。
貴族たちは、ぞろぞろと中庭に向かう。
奥にステージには、既に王様、王妃様が座り、王様の隣には、魔王と王女のエリーが座っている。
王様が立ち上がり、中庭の人間、魔族の貴族に向かって演説する。
「わが兄の愚行により、魔族たちには多大なご迷惑をおかけしたが、魔王殿の寛大なご配慮もあり、人間領と魔族領は国交を結ぶことが出来た」
「また、魔王殿にもこうして、相まみえることができ光栄の至りである」
「これから、互いに偏見を捨て、人間族と魔族とで友好を深めようではないか!」
「「「おぉぉぉぉぉ」」」という歓声が中庭に沸き立つ。
魔王が立ち演説を始める。
「偉大なる人間族の王よ。ありがとう。多少の行き違いはあったが、賢王と名高い人間族の王に敬意を示す」
「わが魔族領でも、偏見を捨てて人間族と共に歩んで行けることを切に思う!」
「「「おぉぉぉぉぉ」」」という歓声がまたもや中庭に沸き立つ。
「さあ、宴じゃ!宴じゃ!魔族と人間族で大いに語り明かそうぞ!」
魔王が言い、王様と乾杯をする。
「王様、ばんざーい」「魔王様、ばんざーい」
***
その時だった、会場に何かが投げ込まれ、爆発して白煙を上げる。
「きゃーー、何?何?」「何事ぞ!」「何が起こっている!」
中庭は一転、騒然となる。白煙で、一寸先も見えない。
「ネネ!手を!」
「はい!」
とりあえず、ネネの安全は俺が守る。
でも、こう視界が悪いと危険である。
俺は、風魔法で竜巻を起こす。
次第に白煙は、薄れて行く。
その中で、魔王の叫び声がする。
「エリー!エリーはどこじゃー!」
混乱の中、エリーが攫われたのであった。




