第26話 魔族の少女
この世界には、魔族と言う種族がいる。ぶっちゃけ、この大陸の半分が魔族領だ。
そして、人間と魔族は、この大陸の覇権をかけて小競り合いをしている。
ここの所は、魔族の活動もなく、各々の領土で平和に暮らしている状況だ。
***
「じゃあ、ネネ、行ってくるね」
「いってらしゃーい」
今日も冒険者ギルドに向かう。いい依頼があるといいんだけど。
行く途中の狭い路地に、小さな女の子がうずくまっている。
無下にもできず、俺は声をかけた。
「ねぇ、どうしたのお嬢ちゃん、迷子?」
「ヒィッ!」
少女がビックリして、飛んで避ける。
「だいじょうぶだよ、怪しい者じゃないよ」
やさしく、問いかける。
「わらわに、近づくでない!人間ふぜいが!」
飛びのいたはずみに、帽子が落ちる。
頭に角が生えている。
「お嬢ちゃん、その角、本物?」
少女は、急いで帽子を拾い、被りなおす。
「本物の訳、ないであろぅ。付け角じゃ」
付け耳は、聞いたことがあるが、付け角は聞いたことがない。
「お嬢ちゃん、もしかして、魔族ってやつ?」
ビクンッ!少女が反応する。
「ま、魔族がこんな所に、居るわけがないじゃろう」
怪しい。めちゃくちゃ怪しい。
「まあ、いいや。どうしてこんなとこに?」
「うぅ、父上と喧嘩して、家出してきたのじゃ。ぐすん」
「あぁ、泣かないで、それで行くとこはあるの?」
「無いのじゃ。ぐすん」
「じゃあ、とりあえず家に来なよ。猫耳のお姉さんと美味しいごはんがあるよ」
ぐぅーきゅるる。「ごはん、欲しいのじゃ」
「じゃあ、一緒に行こう」
「うんなのじゃ」
少女の手を引いて、家に戻る。
俺がもっと大人だったら、りっぱな事案の発生だった。
***
「ただいま、帰ってきたよ」
「何、さっき出て行ったばかりじゃない。それと、その子なに?」
「途中で、拾った」
「そんな犬猫みたいに、少女拾ってこないで!」
「お腹すかせてるから、なんか食べ物用意して」
「もうほんと、自由人なんだから」
「ほら、こっちにおいで、ご飯あげるから」
「うん、なのじゃ」
「ほらほら、お家の中では、お帽子脱ごうね」
ネネが、パッと帽子を取った。
少女「あ!」
ネネ「つ、角?」
俺「あちゃー」
「マシュー、この子って!」
「付け角と本人が言ってるんだ、付け角だろう」
「付け角じゃないよ。直接生えてるよ」
少女テーブルに飛び乗り、胸をはって、
「ばれては、仕方がない。わらわは、魔王の娘、エリーであるぞよ」
「テーブルに上がらない!」ポカリ!
「痛い、なにをするのじゃ」
「魔王の娘でも、テーブルに上がっちゃダメ!」
ネネは、少女をテーブルから降ろす。
「だから、魔王の娘なのじゃ」
「ダメなものは、ダメ!ごはん上げないよ!」
「むぅ、わかったのじゃ」
そんなこんなで、自称、魔王の娘は、ごはんにありついた。
「美味しい!美味しいのじゃ!」
その頃、魔族軍が進軍をはじめていた。その方向は、この街であった。




