砂漠の国の王都到着
オアシスでの「氷水ぼったくりビジネス」で荒稼ぎした愛結商店の一行は、数日後、ついにアルキミアの王都へと到着した。
巨大な城壁に囲まれた王都は、砂漠の国とは思えないほど活気に満ちていた。
石造りの建物が立ち並び、市場には色鮮やかな香辛料や織物が並べられている。
「ふぉっふぉっふぉ……。アユ様、私の完璧な計略によりますと、この王都は豊かな水源と特産品を持っていますが、一方で『娯楽』や『他国の最新技術』が圧倒的に不足しておりますな」
荷馬車から降りたバルガスが、腰を叩きながら胡散臭い笑みを浮かべた。
「つまり、我々の魔導具や王都の流行品を持ち込めば、莫大な利益が見込める……まさに、大局を見極めた完璧な布陣!」
「あら、バルガス爺さんにしてはまともな分析じゃない。その通りよ」
愛結は満足げに頷き、王都の市場をぐるりと見渡した。
「アルキミアは今、若い新女王が即位したばかりで、古い体制から新しい体制への過渡期にあるの。つまり、国全体が『新しい刺激』に飢えているのよ」
愛結の瞳が、再び金貨の形に輝き始める。
「先生。それはつまり、また何かろくでもないことを企んでいるという顔ですね」
ナイジェルが、ため息をつきながら荷物の点検を終えて歩み寄ってきた。
「人聞きの悪いこと言わないで。私はただ、この国の発展に協力してあげようと思っているだけよ。……というわけで、さっそく王宮に乗り込んで、女王に直接『極悪な不平等条約』を突きつけるわよ!」
「結局ろくでもないじゃないですか」
ナイジェルのツッコミを無視し、愛結は振り返ってメンバーに指示を飛ばした。
「ゴードン! あんたは荷馬車の警備よ。近づく奴がいたら威嚇して追い払いなさい!」
「アユ様あああああ!! 承知いたしましたぞおおお!!」
ゴードンが、市場の喧騒を掻き消すほどのバカでかい声で叫んだ。
「近づく盗賊どもは、このゴードンが一人残らず素手で引き裂いてご覧に入れますぞおおお!!」
「だから殺すなって言ってるでしょ! 威嚇だけでいいのよ!」
愛結が頭を抱える。
「シャーリー! あんたは王宮に潜入して、女王の側近たちの弱点や、市場の裏相場を調べてきなさい」
「……ん。わかった。邪魔な護衛は、首の骨を折っていい?」
「ダメよ! 外交問題になるから、あくまで情報収集だけにしなさい」
「……ん。なら、毒を盛るだけにする」
「それもダメよ!!」
シャーリーは無表情のままナイフをしまい、音もなく人混みの中へと消えていった。
「さて、と。それじゃあ私たちは、正面から堂々と王宮に乗り込むわよ」
愛結が視線を向けた先には、砂漠の熱気で完全にダウンしているアルベルト王子と、なぜか現地の人々に囲まれてポーズを決めているユリアン皇子がいた。
「あ、あつい……。もう歩けない……僕を王宮の涼しい部屋に運んでくれ……」
「フハハハ! さあ、私の美しさにひれ伏すがいい! 砂漠の民よ、私の汗は金貨よりも価値があるぞ!」
「……先生。本当にあの二人を連れて行くんですか? 外交問題どころか、入城を拒否される気がするんですが」
ナイジェルが、絶望的な表情で呟く。
「大丈夫よ。アルベルトは『顔と身分』のパスポートだし、ユリアンは『歩く客寄せパンダ』だから。……さあ、アルキミアの富を根こそぎ奪い取るわよ!」
愛結の高笑いが、砂漠の国の王都に響き渡る。
こうして、愛結商店の「王宮乗っ取り(ビジネス)作戦」が、いよいよ幕を開けたのだった。




