表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と虎の首縊りの迷宮の悪役令嬢  作者: 秦江湖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/75

本国からの使者と黒い影

 愛結とナイジェルの間に微かな変化が生じた翌日。


 ナイジェルの懸念は、最悪のタイミングで現実のものとなった。


「先生! 大変です!」


 珍しく血相を変えたハーブが、愛結商店の社長室に飛び込んできた。


「うるさいわね、ハーブ。ノックくらいしなさいよ。どうしたの?」


「ヴァルハラ帝国から、特使が到着しました! しかも、軍艦三隻を引き連れて、王都の港に停泊しています!」


「……は?」


 愛結の動きがピタリと止まった。


 隣で書類を整理していたナイジェルも、険しい表情で顔を上げる。


「軍艦三隻、ですか。ただの視察や抗議にしては、物々しすぎますね」


「ええ。特使の要求は一つ。『ユリアン皇子を即刻引き渡し、皇子をたぶらかした首謀者を引き渡せ』とのことです」


 ハーブの報告に、愛結は舌打ちをした。


「チッ……。バレるのが早すぎたわね。まだ王都の令嬢たちの財布の半分も絞り取ってないのに」


「先生、今は利益を惜しんでいる場合ではありません。相手は軍事国家ヴァルハラです。対応を間違えれば、国際問題どころか戦争になりかねません」


 ナイジェルが冷静に状況を分析する。


「しかも、首謀者の引き渡しを求めているということは、すでに『愛結商店』が背後にいることを把握している可能性が高い。……先生、ここは一度、皇子殿下をお返しして、適当な賠償金で手を打つべきです」


「冗談じゃないわ!」


 愛結は机をバンッと叩いて立ち上がった。


「あいつは今、うちの稼ぎ頭よ! それをタダで引き渡すなんて、私の美学に反するわ! それに、賠償金を払うくらいなら、こっちから慰謝料を請求してやるわよ!」


「先生……」


 ナイジェルは深くため息をついた。


 この悪徳社長は、相手が軍事国家だろうが何だろうが、自分の利益とプライドを手放す気は毛頭ないらしい。


「ハーブ。その特使を、うちの応接室に通しなさい。私が直接交渉してやるわ」


「し、しかし社長……」


「いいからやりなさい! ナイジェル、あんたも同席よ。とびきり渋い顔で、私の背後に立ってなさい」


「……畏まりました」




 数時間後。


 愛結商店の豪華な応接室に、ヴァルハラ帝国の特使が足を踏み入れた。


 筋骨隆々とした巨体に、顔には無数の傷跡。いかにも「歴戦の武将」といった風貌の男である。


「貴様が、我が国の皇子をたぶらかした魔女か」


 特使は、ソファに優雅に腰掛ける愛結を睨みつけ、地を這うような声で凄んだ。

 しかし、愛結は全く怯むことなく、冷ややかな笑みを浮かべて紅茶を一口飲んだ。


「人聞きの悪いことを言わないでちょうだい。私はただ、あなた方のポンコツ……いえ、素晴らしい皇子殿下の才能を、ビジネスとして開花させてあげただけよ」


 愛結の不敵な態度に、特使の額に青筋が浮かぶ。

 応接室の空気が、一気に張り詰めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ