アイドル皇子爆誕と荒稼ぎ
「さあ、王都の迷える子羊たちよ! 私の愛を受け取ってくれ!」
ユリアン皇子がウインクと共に投げキッスを放つと、愛結商店が王都の一等地に急造した『専用劇場』は、貴族令嬢たちの黄色い悲鳴で揺れた。
お見合いの決闘騒ぎから一週間。ユリアンは完全に「愛結商店専属のトップアイドル」として君臨していた。
「素晴らしいわ……。顔が良いだけのポンコツが、ここまで金を生む装置になるなんて」
劇場のVIPルームからステージを見下ろしながら、愛結は札束の山を数えてホクホク顔だった。
彼女の隣では、ナイジェルが恐ろしいスピードで売上台帳を処理している。
「先生。本日の公演チケットは金貨五十枚という法外な価格設定でしたが、開始三分で完売。さらに、皇子殿下の『使用済み薔薇の花びら(ただの造花)』が一つ金貨一枚で飛ぶように売れています」
「完璧ね。あいつ、自分が『愛の伝道師』として崇められていると信じ込んでるから、疲労も感じないみたいだし。最高の社畜……じゃなくて、商品だわ」
愛結はワイングラスを揺らしながら、悪魔のように微笑んだ。
「でも、そろそろ新しい刺激が必要ね。ただ顔を見せるだけじゃ、客も飽きるわ」
「……嫌な予感がするのですが、先生。今度は何を企んでいるのですか?」
「決まってるじゃない。アイドルといえば『握手会』と『チェキ会(魔法写真)』よ! オプションで『一分間、甘い言葉を囁いてもらえる権』を金貨百枚で売り出すわ!」
愛結の容赦ない搾取プランに、ナイジェルは小さくため息をついた。
「先生の商魂の逞しさには、恐れ入ります。ですが……一つ懸念があります」
「懸念?」
「皇子殿下は、あくまで先生とのお見合いのためにこの国に来たはずです。いくら本人が現状を楽しんでいるとはいえ、本国(ヴァルハラ帝国)がこの状況をいつまでも黙って見過ごすとは思えませんが」
ナイジェルの的確な指摘に、愛結は「チッ」と舌打ちをした。
「わかってるわよ。だから、本国が気づく前に、しゃぶり尽くせるだけしゃぶり尽くすのよ。最悪、バレたら『文化交流の一環です』って言い張ればいいわ」
愛結は全く悪びれる様子もなく、次の集金イベントの計画を練り始めた。
しかし、ナイジェルの懸念は、愛結が思っているよりも早く、そして厄介な形で現実のものとなろうとしていた。




