悪役令嬢の断罪(株主総会)後編
圧倒的な資本力を突きつけられ、大講堂は水を打ったような静寂に包まれていた。
カトリーヌの取り巻きたちは、すでに戦意を喪失し、砂浜に打ち上げられた魚のようにパクパクと口を動かすことしかできない。
「……わ、私……」
カトリーヌは、握りしめた扇子を震わせていた。
貴族としてのプライドが、彼女に「屈服」を許さない。しかし、ここで愛結に逆らえば、実家の侯爵家は明日にも崩壊し、領民たちは路頭に迷うことになる。
彼女の目から、ポロポロと悔し涙がこぼれ落ちた。
「……私の、負けですわ。実家だけは……お父様たちだけは、助けてくださいませ……」
カトリーヌはついに膝をつき、愛結の前に平伏した。
それを見た取り巻きたちも、次々と土下座を始める。
「「「申し訳ありませんでした、エレノア社長!!」」」
正義感に燃えていた貴族派閥は、完全に愛結商店の軍門に下った。
愛結は満足げに頷き、カトリーヌの肩にポンと手を置いた。
「よろしい。あんた、なかなか見込みがあるわ。そのプライドの高さ、営業に向いてるわよ。明日から、学食のVIPルーム担当として働きなさい。時給は銀貨一枚よ」
「……え?」
「泣いてる暇はないわよ! 愛結商店の社員になったからには、馬車馬のように働いて利益を出しなさい! さあ、涙を拭いて笑顔を作りなさい!」
「は、はいっ! いらっしゃいませ、エレノア社長!」
カトリーヌは涙目で無理やり笑顔を作り、営業スマイルの練習を始めた。
その光景を見て、ステージ袖にいたナイジェルとアルベルトは深くため息をついた。
「……また一人、被害者が増えましたね」
「ああ。だが、不思議と悲壮感はないな。むしろ、妙な活気すら感じる」
彼らの言う通りだった。
愛結のやり方は理不尽で強引だが、彼女の元で働く者たちは、なぜか皆「生き生き」としてしまうのだ。
それは、彼女が「身分」や「血筋」ではなく、純粋な「利益」と「実力」だけで人を評価するからかもしれない。
「さあ、これにて第一回・愛結商店株主総会を閉会するわ! みんな、これからも私にしっかり投資(課金)しなさいよ!」
愛結が水着姿で高らかに宣言すると、なぜか会場からは割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。
学園長も、理事たちも、王族たちも、全員が立ち上がって拍手を送っている。
「エレノア社長、万歳!」
「愛結商店、万歳!」
こうして、原作のメインイベントであった「悪役令嬢の断罪」は、愛結の圧倒的な経済力によって完全に粉砕され、学園は名実ともに「愛結商店の支配下」に置かれたのであった。




