断罪イベント開幕
「エレノア・クライス! 貴女の数々の悪行、もはや見過ごすことはできませんわ!」
大講堂の中央。
カトリーヌは扇子を閉じ、ステージ上に立つ愛結を鋭く指差した。
本来であれば、ここは「悪役令嬢がヒロインをいじめた罪」を糾弾される、シリアスで劇的なシーンである。
しかし、今の愛結は「漆黒のセパレート水着」に「純金のティアラ」という、およそ断罪される側とは思えない破廉恥かつ堂々たる出立ちだった。
「ちょっと、カトリーヌ嬢。せめて服を着させてからにしたらどうだ……」
「黙りなさい! 彼女が自ら望んでその格好をしているのですから、このまま糾弾しますわ!」
カトリーヌの取り巻きの男子生徒が小声で突っ込むが、カトリーヌは止まらない。
彼女は懐から分厚い羊皮紙の束を取り出し、高らかに読み上げ始めた。
「第一に、学園の食堂を強引に乗っ取り、暴利を貪った罪! 第二に、神聖なるテストの過去問を売買し、生徒の射幸心を煽った罪! 第三に……これが最も重罪ですわ! 教師を買収し、成績や単位を金貨で取引した罪です!」
会場がざわめく。
事実を知らなかった王族や学園の理事たちは顔を見合わせ、VIPパス(単位の裏ルート)を買っていた生徒たちは一斉に顔を青ざめさせた。
「これらの不正行為は、王立学園の歴史と誇りを泥で塗る行為! よって、我々有志一同は、エレノア・クライスの学園からの永久追放を要求しますわ!」
カトリーヌの宣言に、取り巻きたちが「そうだ、追放しろ!」と声を上げる。
完全な包囲網。逃げ場のない告発。
しかし、愛結はティアラを直しながら、フッと鼻で笑った。
「……で? それだけ?」
「なっ……!? これだけの罪を突きつけられて、まだ余裕ぶるつもりですの!?」
「罪? 勘違いしないでよね。私がやったのは全て『合法的な経済活動』よ。学食は正式な契約を結んだし、過去問はただの情報商材。単位の件だって、教師たちが『自主的に』採点基準を見直しただけじゃない」
愛結はステージの縁に歩み寄り、カトリーヌを見下ろした。
「それにね、カトリーヌ。あんた、私を追放するって言ったわね? ……本当に、それができると思ってるの?」
「当然ですわ! これだけの証拠があれば、いくら公爵家でも――」
「公爵家とか、そういうケチな話をしてるんじゃないのよ」
愛結が指を鳴らすと、ステージの袖からナイジェルが、銀盆に大量の書類を乗せて歩み出てきた。
彼は無表情のまま、その書類の束をカトリーヌたちの足元にバサリと落とした。
「……何ですの、これは」
「あんたたちの実家の『権利書』と『借用書』よ」
愛結の言葉に、カトリーヌたちの動きがピタリと止まった。
大講堂の空気が、一瞬にして凍りついた。




