職権乱用! 強制ミスコン開催宣言
卒業パーティーまで残り一週間と迫ったある日。
愛結は、生徒会室のドアを物理的に蹴破って乱入した。
「ちょっと! この卒業パーティーの企画書、どういうこと!?」
生徒会長をはじめとする役員たちが、ビクッと肩を揺らす。
愛結は、手に持っていた羊皮紙の束を生徒会長の机に叩きつけた。
「ダンスパーティー、立食会、卒業生代表の挨拶……はあ? 地味! 地味すぎるわ! こんなの、ただの老人会の集まりじゃない!」
「エ、エレノア様……卒業パーティーとは、本来そういう厳かなものでして……」
「厳か? 馬鹿言わないで。パーティーっていうのはね、もっと派手で、下世話で、欲望が渦巻くエンターテインメントじゃなきゃダメなのよ!」
愛結はバンッと机を叩き、生徒会長の顔を至近距離で睨みつけた。
「何より許せないのは、この学園で『私が一番美しい』ということを、公式に証明する場がないことよ!」
「……はい?」
「だから、プログラムを変更しなさい。第一部のメインイベントとして、『王立学園ミスコンテスト』を開催するわ。もちろん、水着審査ありでね!」
愛結のトンデモ発言に、生徒会室は静まり返った。
数秒後、役員たちが一斉に悲鳴を上げた。
「み、水着審査!? 神聖なる王立学園で、そんな破廉恥な真似ができるわけがありません!」
「そうです! 第一、もう来週なんですよ!? 今からプログラムの変更なんて不可能です!」
「不可能? 私の辞書にそんな言葉はないわ」
愛結は鼻で笑い、懐から分厚い書類の束を取り出した。
「これ、生徒会が懇意にしてる印刷業者と、パーティーのケータリング業者の買収証明書。私が『ミスコンをやらないなら契約を打ち切る』って言ったら、あんたたち、来週のパーティーを白紙の状態で迎えることになるわよ?」
「なっ……!?」
「それに、学園長にはすでに『特別協賛金』として金貨一万枚を寄付済みよ。学園長も『ミスコン、大賛成です!』って言ってたわ」
愛結の圧倒的な「金と権力」による脅迫に、生徒会長はがっくりと膝をついた。
「……わかりました。ミスコンを、プログラムに追加します……」
「よろしい。賞品の『純金のティアラ』は愛結商店が用意してあげるから、せいぜい盛り上げなさいよ!」
愛結は満足げに笑い、生徒会室を後にした。
廊下で待機していたナイジェルとアルベルトが、呆れたような顔で彼女を迎える。
「……お前、自分の美貌を自慢するためだけに、学園の伝統を捻じ曲げたのか」
「当然でしょ? 私は悪役令嬢よ。美しさでも権力でも、誰にも負けるつもりはないわ!」
愛結は自信満々に胸を張った。
彼女は、裏工作を一切せずに「真っ当に」水着審査で優勝し、その上でカトリーヌたちの断罪イベントを正面から叩き潰すつもりなのだ。
前代未聞の、水着ミスコン&断罪イベント(株主総会)の幕が、静かに上がろうとしていた。




