テストの過去問と単位の裏ルート
学食の乗っ取りから数週間。
愛結商店の学園侵略は、留まることを知らずに加速していた。
「はい、次の人。歴史の過去問セットは金貨二枚、魔法実技の傾向と対策ノートは金貨三枚よ。セットで買うなら金貨四枚にまけてあげるわ」
放課後の空き教室。
愛結は教壇に座り、机の上に積み上げられたプリントの束を次々と生徒たちに売り捌いていた。
隣では、マリアが慣れた手つきで金貨を数え、帳簿をつけている。
「店長、歴史の過去問が在庫切れです。ナイジェル先生に次の束を印刷してもらってきますね」
「お願いね、マリア。ナイジェルには『残業代は出さない』って伝えておいて」
愛結の次なるビジネスは「テストの過去問と対策ノートの販売」だった。
貴族の生徒たちにとって、学園での成績は将来の出世や実家の面子に直結する。彼らは喉から手が出るほど情報が欲しかったのだ。
「しかし、エレノア。過去問だけでは点数が上がらない落ちこぼれもいるぞ。彼らからはどうやって金を搾り取る気だ?」
教室の入り口で客引きをしていたアルベルトが、不思議そうに尋ねる。
愛結はニヤリと笑い、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
「そういう『親の金だけはあるバカ』のための特別プランも用意してあるわ。名付けて『単位取得のための裏ルート(VIPパス)』よ!」
「……裏ルート?」
「ええ。この学園の教師の半数は、すでにハーブが『愛結商店の顧問』として裏で買収済みよ。金貨五十枚を払えば、実技テストの採点が甘くなったり、レポートの提出期限が延びたりする魔法のチケットよ!」
愛結の言葉に、アルベルトはドン引きした。
「お前……ついに学園の成績まで金で買えるようにしたのか。教育機関の腐敗も極まれりだな」
「馬鹿ね、これも立派な『経済活動』よ。社会に出たら、結局は金とコネが全てなんだから。学園のうちからその現実を教えてあげるなんて、私ってなんて教育熱心なのかしら!」
愛結が高らかに笑う中、一人の男子生徒が恐る恐る教室に入ってきた。
いかにも気の弱そうな、小太りの貴族だ。
「あ、あの……エレノア様。その『VIPパス』、僕にも買わせてください……! このままじゃ留年して、父上に勘当されてしまいます……!」
「毎度あり! 金貨五十枚、キャッシュ一括でよろしくね!」
こうして、王立学園の経済と成績は、完全に愛結商店の手によって掌握された。
だが、この傍若無人な振る舞いを、面白く思わない者たちも当然存在していた。
学園の秩序を重んじる、一部の誇り高き貴族生徒たちである。彼らの不満は、静かに、しかし確実に限界点へと達しようとしていた。




