学食買収とプレミアム・ランチ
翌日の昼休み。
王立学園の生徒たちが学食に向かうと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「いらっしゃいませ! 『愛結商店・王立学園プレミアムダイニング』へようこそ!」
昨日までの薄暗く埃っぽい食堂は、一夜にして高級レストランのような華やかな内装に様変わりしていた。
厨房では、黒いエプロン姿のナイジェルが、目にも留まらぬ速さで高級食材を調理している。
「な、なんだこれは……!?」
「学食が、愛結商店に乗っ取られているぞ……!」
ざわめく貴族生徒たちの前に、愛結が優雅な足取りで現れた。
「ふふっ、驚いた? 今日からこの学食は、私がプロデュースするわ。貧乏くさいパンとスープは廃止! メニューは『超高級プレミアム・ランチ』一択よ!」
「プレミアム・ランチだと? 値段はいくらだ!」
「金貨十枚よ」
「「高すぎるだろ!!」」
生徒たちから一斉にツッコミが入る。
金貨十枚といえば、平民の家族が数ヶ月は暮らせる大金だ。いくら貴族の生徒とはいえ、毎日の昼食に出せる額ではない。
「ふん、貧乏人はすっこんでなさい。これは『選ばれたエリート』のための食事よ。……ほら、あそこを見てみなさい」
愛結が指差した先。食堂の特等席(VIPルーム)では、数人の生徒がすでにプレミアム・ランチを優雅に楽しんでいた。
「美味しい……! 昨日のパサパサのパンが嘘みたいだ!」
「さすが愛結商店ね。このキャビアのサラダ、最高だわ!」
彼らは、愛結が事前にサクラとして雇った(あるいは弱みを握って無理やり食べさせている)生徒たちだった。
しかし、その美味しそうな匂いと、ナイジェルが作る完璧な料理の見た目に、他の生徒たちの喉がゴクリと鳴る。
「……くそっ! 俺の実家は伯爵家だ! 金貨十枚くらい払えないわけがないだろう!」
「私だって! あんな美味しいものを食べているのに、自分だけ我慢するなんてプライドが許さないわ!」
貴族特有の「見栄」と「プライド」が見事に刺激され、生徒たちは次々と金貨を叩きつけてプレミアム・ランチを注文し始めた。
「あはははは! チョロい! チョロすぎるわ、貴族のガキども! 親の金で食べる高級ランチの味はどう!?」
愛結はレジの横で、滝のように流れ込んでくる金貨を数えながら高笑いした。
ナイジェルは厨房で汗だくになりながら、「私は教師のはずなのに、なぜまた料理を作っているんだ……」と虚空を見つめていた。
こうして、愛結の「学園経済支配計画」の第一歩は、見事に成功を収めた。
しかし、彼女の野望はこれだけでは終わらない。学園にはまだ、彼女が利用すべき「優秀な人材」が眠っていたのだ。




