表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と虎の首縊りの迷宮の悪役令嬢  作者: 秦江湖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/74

経費削減バトルと、究極の悪徳キャンペーン

「社長! また経費で『最高級霜降り肉』を落とそうとしましたね! 却下です!」


「うるさいわね! これは龍と虎の士気を高めるための必要経費よ!」


 愛結商店の社長室では、連日のように愛結とハーバートによる「経費バトル」が繰り広げられていた。

 ハーバートは徹底した小市民的コスト管理を推し進め、照明の魔石は最低出力、従業員のまかないは「具なしスープ」、書類の裏紙使用を義務付けるなど、店を極限の節約状態に置いていた。


「いいですか、社長。利益とは『売り上げから経費を引いたもの』です。経費を極限までゼロに近づけることこそが、最も確実な利益創出なのです!」


「チマチマチマチマとうるさいのよ! そんな貧乏くさいやり方じゃ、客の心は掴めないわ!」


 愛結はバン!とデスクを叩き、一枚の企画書をハーバートに突きつけた。


「あんたの『ガラクタ再利用キャンペーン』がなんだっていうの。私がもっとド派手に、経費をドバドバ使って、それ以上の利益を叩き出してやるわ!」


「なっ……こ、これは!?」


 企画書を見たハーバートの顔が、驚愕に歪んだ。

 そこには『第一回・龍と虎の首縊りの迷宮・大サバイバルツアー』と書かれていた。


「迷宮の全階層を貸し切りにして、貴族や大商人の子息たちを集めるの。参加費は一人につき金貨五百枚!」


「き、金貨五百枚!? そんな暴利、誰も払いませんよ!」


「払うわよ。なぜなら、このツアーの目玉は『安全保証付きの英雄体験』だからね」


 愛結は、ニヤリと悪魔のように笑った。


「ゴードンとシャーリーを裏で護衛につけ、龍と虎には『ギリギリのところでわざと負ける』という極上の接待プレイをさせる。そして、参加者には『迷宮を制覇した英雄』という称号と、豪華絢爛な記念碑(金メッキ)を贈呈するの。見栄っ張りの貴族にとって、金貨五百枚で『本物の英雄の肩書き』が買えるなら安すぎるわ」


「し、しかし! 迷宮の貸し切りや豪華な記念碑の作成には、莫大な経費がかかります!」


「ええ、だから惜しみなく使うのよ! 最高の霜降り肉で龍と虎のやる気を限界まで引き上げ、記念碑は無駄にデカく派手にする! 経費を金貨一千枚使っても、参加者が十人いれば金貨四千枚の黒字よ!」


 ハーバートは絶句した。


 経費を「削る」ことしか考えていなかった彼にとって、経費を「投資」として莫大に使い、それ以上の暴利をむさぼるという発想は、あまりにもスケールが違いすぎた。


「……先生。それ、完全に『富裕層向けのぼったくり体験ツアー』ですね」


「人聞きの悪い。私は彼らに『最高の思い出とプライド』を提供してあげるだけよ」


 ナイジェルのツッコミを華麗にスルーし、愛結はハーバートに言い放つ。


「どう? ハーブ。これが私のやり方よ。経費は削るもんじゃない、何倍にもして毟り取るための撒き餌なのよ!」


「……くっ……!」


 ハーバートは悔しそうに唇を噛んだ。


 小市民的な節約術では、この圧倒的な「悪徳のスケール」には勝てない。彼は商人としての敗北を悟り、がっくりと肩を落とした。


「……わかりました。この企画の経費は承認します。ただし、記念碑の金メッキの厚さは、私の計算で極限まで薄くさせていただきますからね!」


「あはは! 好きになさい! さあ、ナイジェル、私は勝負に勝ったから、しばらく有給をもらうわよ!」


 愛結は高笑いしながら、デスクの上の書類をすべてハーバートに押し付けた。


「有給って……先生、どこへ行くつもりですか?」


「決まってるじゃない。海よ! 南の海辺の村で、今度こそ誰も私を知らない場所で、完璧なスローライフを満喫してくるわ!」




 そう言い残し、愛結は嵐のように社長室から去っていった。


 残されたハーバートとナイジェルは、山積みの書類と「大サバイバルツアー」の準備という地獄の業務を前に、深く、深くため息をついた。


 こうして、愛結はついに念願のスローライフ(逃亡)を手に入れたかに見えた。


 しかし、彼女が向かった「海辺の村」で、さらなる厄介事が待ち受けていることを、この時の彼女はまだ知る由もなかったのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ