第11話:逃避行と進軍
― ベンデグス視点 ―
俺、ベンデグス大隊長様率いる第1魔導大隊はビアロスよりさらに西にあるサルヴァスヴァメベまでの逃避行を続けていた。
「最近、西へ逃げてばっかりだな。このまま行ったら本当に帝都についちまうぜ。」
ちなみに殿として新兵を100人程配置しているため鉄の破城槌や奇妙な魔法の杖を持った連中は追ってこない。
だが途中で敵機に見つかり空襲を受けた。おかげで逃避行までに部隊の半数を失っちまった。
だが、どうにかこうにか朝方にはサルヴァスヴァメベにたどり着いた。
「はぁはぁ、何とか撒いたようですね。」
ゲルゴーは額から血がにじんだ汗を流しながら眼鏡を指で持ち上げた。
「道中で起きた敵機の襲来は多すぎて10回から先は数えてねぇ。」
「伝令の話によるとぉすでに帝国全土に空襲を行っているという話ですぅ。」
「クソッたれ!それもこれも皆アルバートが役立たずなのが悪いんだ!!」
「そう・・・ですね。」
「役立たずではあったわねぇ。」
「・・・・・。」
「おめえもアルバートに不満持ってるよなぁ!?クラーラ中尉?」
「え、ええ・・・。」
歯切れの悪い返事だが、クラーラからも同意をもらえた俺は気分が良くなった。
「よし!今日は気分がいい!!今夜の俺の相手をする奴はラッキーだ!痛くはしねえから名乗り出る物はいねえか?」
少女たちは怯えながらも数十人程が手を上げた。
俺は普段より多いのが嬉しくて舌なめずりをした。
「へへへへ・・・イイ子たちだ。お兄さんがヨシヨシしてやるから覚悟しろよ?」
「あたしじゃ不満かしらぁ?」
「マグドルナ大尉殿?!」
「不満ではない。だが怖いのだ。」
「怖い・・・ですか。」
「なんのとりえもない男爵家のクラーラはまだしもお前は名のある伯爵家の愛娘、下手に手を出したら両親から何されるかわかったもんじゃないからな。」
「そこは心配不要よぉ。大隊長のお荷物だったアルバートと違ってあなたなら・・・良いってお父・・・様が。」
マグドルナの顔はみるみる赤くなっていった。
「それに、あなたみたいな押しが強い人・・・嫌いになれないからぁ。」
「そうか、ならば今夜はお前もこい!俺も丁度兄貴のせいで出来た心の靄をどこかで晴らしたいと思っていたところだ。クラーラももちろん参加するよなあ?」
「・・・。」
「おい!」
「は、ハイ!」
「アルバート中尉の事が心配なのよぉ。」
「フン!捕虜の末路はお前らも知ってんだろ?それにゴーレムしか作れない能無しだからよしんば生き残ってたとしても、使えねえって蔑まれながらボロ雑巾のようにこき使われてるだろうさ。へへへ、それよりお前もいい加減アルバートの事は諦めなよ。今夜は忘れられない夜にしてやるからよ。」
・・・・・・
― アルバート視点 ―
僕らは早速サルヴァスヴァメベへの侵攻作戦のため協力してくれる人物に挨拶に行った。
「ナダギッシュ反政府軍第1魔導大隊、大隊長のアルバート・フォン・ソングロディア大尉であります!本日はよろしくお願いします。」
「よろしく、私は大日本帝国陸軍戦車第1連隊、連隊長の藤田実彦大佐である。」
フジタさんはスキンヘッドで髭がかなり特徴的な男性だ。
「君のことは整備兵たちから聞いているよ。すごい能力の持ち主なんだって?」
「は、ハイ!『創造者』と言って素材と知識さえあればなんでも自動で作れます。もちろん、既存の武器の強化だって可能です!」
そう言って僕は兵士の方を指さした。
手にはアダマンタイト鉱石でコーティングされた小銃、そばには同じくアダマンタイト鉱石を装甲にした戦車が止まっていた。
「すでにご存じかと思いますがアダマンタイト鉱石は鋼鉄より固く魔法を付与しやすい。ゆえにこうやって武器の材料にするのが一番なのです。」
「素晴らしい!ぜひ君には日本軍と一緒に活躍してほしい!望むものもできるだけ用意しよう!!」
「ありがとうございます!」
「そろそろ出発しよう。君たちはこれからあれに乗ってくれたまえ!」
フジタさんが指さす方を見ると、自分が整備や製造を行ったアダマンタイト製の戦車が連なる中、何とも不思議な形をした馬のない馬車が5台ほど止まっている。素材は鉄か銅だろうか?
「あれは?」
「一式装甲兵車。通称ホキだ。内地・・・日本から引っ張り出してきたものでな。乗員数15名のうち兵士を乗せられる限界は12名だ。」
「ざっと60名を乗せられるのか・・・すごいや。」
フジタは誇らしげに鼻を鳴らした。
しばらく行くと、ビアロスが見えて来た。すでに空爆された後らしくあちこちで煙がくすぶっていた。
道端にはおぞましい数のナダギッシュ・日本双方の兵士たちの死体が転がっていた。
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・。」
何かのおまじないだろうか、日本兵たちは手を合わせながら何かをずっと唱え続けていた。
お昼の心地よい風は死体からでる腐敗臭で台無しだ。
いやな気分になっていたその時、生存者を発見した。
かすかだがもぞもぞと動いている。見た目的にまだ少女だろうか?そばには倒れている少女がいた。
僕は車を止めてもらい、皆の止める声も聞かず飛び降りた。
念のために自分の背丈ほどのあるゴーレムを5体ほど生み出して・・・。
「何かあったらよろしく頼む。」
5体のゴーレムは頷いた。
「おい君たち!大丈夫k。」
振り向いた少女はなんと少女の死体を食べており、真っ赤な口をニチャァっと音を立てながら開け、白目をむいていて僕に噛みつこうとした。
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