秘密の場所
ニナと一緒に洞窟に戻ると魔物や悪魔が行く手を遮った。
「待ちなさい、彼は客人です。危害を加える事は私が許しません。」
一歩前に出て凛とした態度を取るニナがとても
凛々しく綺麗で、また惚れ直してしまった。
ニナを知れば知る程、ニナの虜になっていく気がしてくる。
そんな事を考えながらもニナの案内で洞窟内の彼方此方見て回る。
普段の冒険者の立場では考えてなかった罠や宝箱の配置というものが新鮮で面白い。
特に宝箱の設置については色々と疑問があったからだ。
洞窟に宝箱を置く事で悪魔がどうやって利益を出すのか、という話だ。
悪魔側は洞窟内で死んだ人間の魂を洞窟というシステムが集めている。
つまり、洞窟で死んでくれる人間を増やしたいのだ。
その為、洞窟に来た人間にある程度宝を持ち帰らせる。
まさに宝を使った広告をしている様な物だ。
そして間引く様に人間を殺して魂を集める。あくまでバランスが大事らしい。
長く、安定した人間の魂の供給をする為の仕組み、それが洞窟でありダンジョンという訳だ。
「そこまで深く考えた事はなかったな。凄く興味深いよ。」
「ジークさんは人間なのにごめんなさい・・・。」
ニナが謝って来るが俺にとってはもう人間とか悪魔とかは関係のない物だ。
「謝らないでいい。俺はニナが笑ってくれる事が一番大切だから。」
「もう、恥ずかしいです・・・。」
逃げる様に先へ進むニナを追いかけて洞窟の最下層へ辿りつく。
部屋には大型の魔獣が鎮座しており、この洞窟のボスって事だろう。
「レベル17じゃ少し弱いでしょうか?」
「いや、この洞窟は人間の村から割と近くにあるからな。それ以上強いと
全滅するパーティが続出するだろう。」
「そうなんですね、流石はジークさん。とっても助かります。」
朗らかな笑顔で人間の殺戮の話をしてもニナは天使だ。
それに別種族なら動物を狩るのと大差はないし仕方がないだろう。
「はい、これで洞窟の調整は終わりです。お疲れ様でした。」
「お疲れ様、ニナ。ちゃんと仕事が出来て偉いぞ。」
ニナの長くて白い髪を撫でると擽ったそうにニナが笑う。
幸せ過ぎて自分が怖い・・・。
「では魔王城へ行こうと思いますが先に私のお気に入りの場所へご案内しますね。」
「ニナのお気に入りの場所か。どんな場所か楽しみだな。」
「ふふっ、そんなに期待されると困ります。普通の場所ですよ。」
ニナが作る転移魔法陣に乗ると一瞬で景色が切り替わった。
「ここは・・・。」
出会った水辺かと一瞬思ったがどうやら別の場所の様だ。
真っ白な水連の花が咲き乱れる水辺があった。
「ここが私のお気に入りで秘密の場所です。結界がありますので
誰も入っては来れないんですよ。」
「ここに俺を連れてきてくれた事が嬉しいよ。」
「ジークさんは、その、特別ですから・・・。」
ニナの隣に座って手を握るとニナが少しだけ恥ずかしそうに微笑む。
このまま時間が止まってしまえばいいのにな・・・。
ニナの髪を撫でるとサラサラとした髪が気持ち良い。
ニナの顔って少し小さくて可愛いな・・・。
指もこんなに細くて可愛らしい・・・。
「まだ今日しか一緒にいませんけど、ジークさんが私の事を
愛してくれているのは凄く伝わってきます。」
「あぁ。伝わってるなら俺も嬉しい。」
「私も・・・、その、ジークさんが好き、です・・・。」
ニナの言葉だけで何という幸福感だ・・・。凄まじいまでの言葉の破壊力・・・。
幸せ過ぎて怖いのを更に突き抜けるほどの幸せがあるなんて・・・。
「俺もニナが大好きだ。ニナが居ない世界ではもう生きる事は出来ない程に・・・。」
「嬉しいです・・・。ジークさん・・・。」
揺れる蒼い瞳に吸い寄せられるように唇を合せると宝石の様な涙がニナの瞳から零れ落ちた。
「ニナ・・・?」
「えっと、笑わないで下さいね。私の様な落ちこぼれでも、いつか王子様が
迎えに来てくれるんじゃないかってずっと思ってたんです。そうしたらジークさんが
私の所へと来て下さいました。あっ、笑わないで下さい・・・。」
「ごめん、ニナが、いや俺のお姫様が余りにも可愛い事をいうから・・・。」
「私でも、その、お姫様に見えるでしょうか?」
「ニナは世界で一番素敵な俺のお姫様だ。」
嬉しそうに微笑むニナにまたそっとキスをした。
「あの、実は少し怖いのです。」
「どうして?」
「私のお姉さま達はみんなお綺麗なので・・・。」
「ニナより綺麗な人は居ないから大丈夫だ。」
「そう、でしょうか?」
「俺を信じてくれ。」
「・・・はい。」
ニナは俺をお姉さんに取られるのを心配してるとか可愛すぎる・・・。
ニナ以上の女なんて全世界を探しても絶対に居ないと断言できるのに。
そうしてニナに連れられて魔王城へと転移する。
魔王からニナを貰う為に俺に出来うるだけの交渉をするしかない。
魔王城の目の前に転移したのかどこかで見た様な城が聳え立っていた。
事前に貰った情報で見たのだったか。正しく情報通りの城だった。
この中に魔王がいるんだな・・・。そして俺は勇者として魔王を
討伐に来たのではなく魔王の娘を嫁に貰いに来た勇者という訳か・・・。
世界中探しても俺くらいだろうな、そんな馬鹿な奴は・・・。
そんな事を考えながらニナの後ろについて魔王城の門をくぐった。




