アスターの村
「あれがアスターの村か、予定通り半日掛かったくらいだな。」
半日もあるけば流石にパーティにも疲労の色が見えてくる。
「結構歩いたからな、もう疲れたよ。」
「だらしないなぁ、ゼス。少しはジークを見習おうよ。」
「そう言うマリーも結構辛そうよ。直ぐに宿を取りましょうか。」
「そうだね、女の子にはハードだよね。」
「都合のいい時だけ女の子、ってすいません!女の子は大変ですよね!」
また二人から目だけ笑ってない笑みを向けられたゼスが謝っていた。
全くゼスも最初から言わなければいいのにと思ってしまう。
「取りあえずは宿と食事だ。マリー、宿の交渉は頼む。アリスは補給、
俺とゼスは依頼が無いか見てくる。」
「はーい。」
「分かりました。」
「じゃあ行こうぜ。」
街の入り口でそれぞれに仕事を振って別れる。
金銭が絡むものは女性の方が交渉も捗るのでアリスとマリーに頼むのが何時もの事だ。
代わりに繋ぎの依頼を探したり受けたりするのが俺とゼスの役割だ。
「ジーク、こんな田舎村に依頼なんてあるのか?」
「さぁな。取りあえずはギルドに行ってみるか。」
「へいへい。」
ギルドとは言っても片田舎のギルドは酒場の片隅に簡単な依頼が
張り付けてあるような場所でそれこそ依頼も大したものなんてない。
ゼスを連れて入ってみると酒場の店主も少ない客と酒を飲んでいた。
「依頼すくねぇな・・・。」
「そうだな、大したものもないな。」
少しは稼げると助かるのだが本当に大したものはなかった。
子供のお使いかと思うようなレベルのものしかない。
「親父、もう少し金になる依頼はないのか?」
「んぁっ?冒険者か・・・。そうだな、西の魔王直轄領の洞窟に宝があるって話もあるぞ。」
「魔王直轄領の洞窟か・・・。」
「おっ、それっていいんじゃね?」
「お使いレベルの仕事よりはマシ程度か。何があるか分からないしリスクも大きいぞ。」
「だからこそ宝のレベルも高いかもしれないじゃん!」
ゼスの言う通り、当たり外れの大きい仕事になるという事だ。
希望としては安定して利益が出る仕事の方がいいが贅沢も言ってられない。
「洞窟ってここからどれくらいの場所だ?」
「あぁ、西に半日くらいだな。場所を描いてやるよ。地図はあるか?」
「じゃあこれに頼む。」
「宝が見つかったら一割な。」
「あぁ、それでいい。」
店主もどうせ見つかるとは思って居ないのだろう。
場所を書いて貰った地図を持って酒場を出ると既にアリスが迎えに来ていた。
「宿はもう取れたのか?」
「はい、珍しく一部屋ずつ取れましたよ。」
「それはいい。ゼスの鼾に悩まされずに眠れそうだ。」
「ふふっ。」
「ひでぇなジーク。」
2部屋を取る場合が多いが金貨を貰った事もあるしここが布団で寝れる
最後の村だからというのもあるのだろう。これは夕食も楽しみだな。
宿に行ってみると小さいけど割と綺麗な部屋だった。
「悪くはないな。」
荷物を置いて宿屋の1階でみんなで食事を取る。
思っていた通り何時もより贅沢な食事が食欲をそそる。
「ふぁ、美味しいよぉ。ほらジークももっと食べなよ。」
マリーがフォークに刺した肉を差し出して来る。
「子供じゃないんだからひとりで食える。」
「そ、そうだよね、あはは。」
「じゃあジークには私が食べさせてあげましょうか?」
アリスがそう言って椅子を近づけてくるがどうせ冗談だろう。
「じゃあ俺が食べさせてやるよ、ジーク。」
ゼスのその言葉にまるで氷結魔法でも使ったかの様な寒気がその場に吹き荒れる。
目だけ笑ってない笑顔って本当に怖いよな。
「それもゼスのせいなんだろうが。二人共、折角の美人が笑わないのは勿体ないぞ。」
「えっ、び、美人なのか?」
「いやですわ、ジークったらお上手です・・・。」
顔を赤くしながらも嬉しそうな二人に内心溜息が零れる。
「ジークもいい加減罪な男だな・・・。」
「それはゼスの方じゃないのか?いい加減、彼女達を怒らせるなよな。」
「あぁ、それはそう思うんだけどねぇ・・・。」
思っていても実行できなければ意味は無い。ゼスには少し学習という言葉を知って欲しい。
食事を終えて部屋に戻ると直ぐに部屋の扉がノックされた。
「開いてるぞ。」
「えっと、お邪魔致します。これからの事を少し相談しようと思いまして・・・。」
そう言いながらアリスが部屋に入って来る。その手には葡萄酒の瓶があった。
「またゼスが拗ねるぞ。」
「なので、最初からみんなの部屋に置いておきました。」
「それならいい。」
アリスが用意したグラスに葡萄酒が注がれてから軽くグラスを併せる。
割といい葡萄酒を買ったのか上品な味がする。
珍しいな、アリスがこんな高い酒を買ってくるなんて初めての事じゃないだろうか。
彼女とはパーティを組んで2年ほどになるがこんな高そうなワインを買う事もあるんだな。
「美味いな。」
「はい、とても美味しいですね。」
葡萄酒を飲むアリスはよく見ると下着が透けて見えるほど薄着だった。
大きな胸と括れた腰つきがよく分かって目のやり場に困る。
仲間だと思って気を抜いているのか俺を男だと思っていないのだろうか。
「それでこれからの事だったか?」
「はい。ジークは魔王を討伐した後はどうされるおつもりですか?」
「魔王を倒した後・・・。」
全く考えた事も無かった。魔王が居なくなれば世界が平和になるなんて幻想だ。
直ぐに次の魔王が誕生するだけだし魔王領は魔王領だろう。
悪魔を従えている人間なんて想像も付かないからだ。
「あまり考えてなかったな・・・。」
「それでしたら是非私と・・・。」
アリスの言葉を遮るようにまた扉がノックされた。




