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転生乙女は頑張っています。  作者: にーやん
頑張る転生乙女 in 女王国
17/29

女装子爵の前世はどうやら鶴のようです。

 ◇




 ……キュイです。

 全然ご機嫌麗しくないキュイです。



 突然美少女王族が現れ、シュヴァルさんに抱きつかれ、告白され、……口論を始めた二人をシュヴァルさんの懐で眺めているこの状況、ご機嫌が麗しくなるはずもありません。頭痛いです。眉間を揉みたいです。でも顔がシュヴァルさんの……少し肌蹴た胸元に押し付けられていてできません。……なんかこの人ヤラシい気がして、ちょっとだけドキドキしている転生乙女、キュイでございます。



 そんな転生乙女であるわたしは、この乱入者らをどうやって追い出そうかと悩んでいたのですが、そんなときに、



 ――ぐるきゅぅうう



 ――くるきゅぅぅうう



 立て続けにお腹の虫を鳴らしてしまうという失態をおかしてしまいました。



 というわけで、夜の帳がおり始めた室内で、わたしは今、羞恥に陥っています!



 外の灯りを消して下さい! この室内を真っ暗にしてください! あぁっ、穴を掘って隠れてしまいたいです! 是非次の転生先は穴掘り大好きダックスフンドでお願いします!








 ――くるきゅう


 確かに、この部屋に来る前から空腹でした。でも、お腹の虫が鳴るほどではなかったんです。ぽっこりお腹が消滅し、少しすいたなー程度だったんです。本当です! ですが、徐々に空腹感は増していき、今では本当に、ひもじぃと表現できるほどにペコペコで……。


 それでも、我慢していたんです。金麦では空腹を知らせるこの音はマナー違反です。恥ずかしいことなんです。ですから、お腹が鳴らないように力を入れて耐えていたんです。


 けど、……空腹も限界値を超えたらしく、うぅ、



 ――くくきゅぅぅぅ。



 ……ま、また鳴ってしまいました。

 やばいです。空腹が止まりません。さっき一週間分食べたばかりなのに……!


 わたしの胃袋はどうなってしまったんでしょうかっ? さっき食べたものはこんな短時間でいったい何処へ行ったんでしょうかっ? 消化速度半端ないですっ。


 ……あぁ、それはそれとして、この音、みなさんに聞こえてしまったでしょうか?

 階下の騒音もありますし、――たぶん片付けが行われているようでガタガタゴトンっと騒音が聞こえていますし、窓の外、煌々と灯る未だ眠らない街の喧騒も入り込んでいますから……、大丈夫ですよね? たかだか小さなお腹の虫の声なんて聞こえてませんよね?


 ……シュヴァルさんにはもしかしたらもしかするかもしれませんけど、でも、知らんぷりしてくれますよね? ね? だって、まさかこんな真剣な睨み合いのシーンで、


「……殿下」


 無視してくれないんですかっ?!

 シュヴァルさんっ、ひ、ひどい! ひどいですあなた!

 睨み合いよりわたしのお腹の音を指摘する方が重要なんですかっ?!


 確かに、貴族にとって腹の虫は鳴らしてはならないものです。しかもこんな緊迫した場面で。でも! そういうときはあとから陰口とか叩くものであって直接注意するもんじゃないと思いますっ、そんなの、そんなの、ただ白い目で見られた方が全然マシですっ!


「空腹なのですね。お可哀想に、すぐに食事の準備をさせますので」


 ――ちょっ?!


 シュヴァルさんは、わたしの肩を優しく押し返してきました。向かい合ったかと思えば頬に触れてきて、顔を覗き込んできます。急に矛先が向いたことに顔が引きつりそうになりますが、そこは我慢。

 でも、頬に触れる指の感触が気になって仕方ありません。何これ。何このバカップルが見つめあってるみたいな――二人きりの世界浸ってるみたいな感じは……?


 ――く、くるきゅぅぅ


 それなのに鳴り続けるわたしのお腹はなにっ? 何匹いるんですかっ?

 何匹でもいいからみんな空気読んで! わたしのお腹の虫たちよ空気を読んでください! そんなに鳴り続けてると実はオナラなんじゃない? ぷ。――なんて思われてしまいますることよ!


「店主、注文をお願いできますか?」


「――ハっ! お、おうよっ!」


 混沌とした思考回路を持て余すわたしを無視して、シュヴァルさんはすぐに、二人の口論に呆けていた居酒屋の主人を正気付かせて、各種料理を大盛りで注文してくれました。けど、……あれ、これはもしかして、作戦ですか?


 だって、


「――では、店主、急いでください」


「あ、あいよ!」


 急がせると、おじさんはいい返事を残して駆けていきます。


 ――ぉお! おじさんを退出させることに成功しました。

 なるほどなるほど。やはりこれは作戦だったわけですね。

 わたしの腹の虫をダシに使ったことに怒りは湧きますが、飛んで火に入る腹の虫。不幸中の幸いってやつです。無事に一人退散させたので結果オーライ。許してあげましょう。


 ……あとはこの美少女王族ですが、どうするつもりですか?

 まさか空腹だからとか食事するからとかで追い出せるわけもありません。第一、美少女王族にはきっと腹の虫の音は聞こえなかったはず――


「お聞きの通り、殿下は空腹です」


 ぅ、聞こえていたんですね。


「この空腹の音色を哀れと思うならば、お引き取りを」


 ……く、くうふくの、ねいろ……?

 空腹の、音色! くはっ! 今急速に空腹ゲージが上がりました。何かが大きく削られました。普通に腹の虫と呼んでくださいよっ!

 しかも可哀想って、可哀想って言いましたねっ? そ、そんなに大きな音でしたかっ? 数は多めでしたけどそんな哀れなほどでしたかっ?!


 ……いやいや、落ち着いて。そんなはずないです。そんな言い方ないです。シュヴァルさん、それは無理があります。ほら、美少女王族も唇をアヒルにして呆れてるじゃありませんかっ?


「――姫君、何人たりとも守護騎士を侍らす者への食事の邪魔はしてはならない。空腹の音色が鳴るとき、それは退くがとき。……これがこの国の常識のはず」


 食事の邪魔をしてはいけないんですか、何人たりとも。そうですか。そんなローカルルールが。


 ――ぐるきゅう


「さぁ、急ぎお引き取りを、姫君。殿下はこれからお食事をなさいます」


 ――ぐるくるきゅぅぅ


 あのシュヴァルさん? せ、せかしてますけど、いくらルールがあってもそんな食事するくらいで退出なんてしないでしょう? おじさんは退散しましたけど、でも、わたしがシュヴァルさんを襲って――るように見える状況でも出て行かなかったんですよ? 待つよ、とか一緒に食べるよ、とか言うんじゃ――


「ふん、まぁ、いいよ。空腹なら仕方ないよね」


 ――ぐるきゅぅう?


 ……そこは引いてくれるんですね。

 ルール遵守するんですね。そんなに大切なルールなんですか、それ。


「ま、今日は挨拶に来たようなものだからね、これで退散してあげる。……それで? そこの先祖返りの、姫君、の名前は?」


 ――くるくるきゅるるぅ!


 誰が姫君かっ!

 そこ強調しないでください!

 というか腹の虫うるさいです!


 姫呼ばわりされてムカつきましたが、それでも問われた以上答えようとすると、わたしが口を開くよりも早くシュヴァルさんの胸にまたも顔を押し付けられてしまいました。う、動いたからまたお腹が……。


「こちらはキュイジーヌ殿下です。姫ではなく、公爵殿下です」


 どうやらわたしが余計なことを言わないようにという配慮のようですが、突然引き寄せられたせいで鼻を打ちましたよ。地味に痛いですよ!


「姓は先祖返りのため伏せさせていただきます。姫君も、素性の詮索はなさいませんように」


 顔を歪めた美少女王族は、「分かってるよ、そんなこと」と言って立ち上り、わたしをまっすぐに見下ろしてきました。


「今日は引き下がるけど、僕、諦めないからね」


 左腰に手を当て、もう片方でビシッと指を差してきます。


「君は可愛い。僕の次くらいに可愛い。だから、女装王族になるべきなんだ」


 ふふん、と不敵に笑う美少女王族は、


「そうだ、忘れてたよ。……僕の名前は、カミューリア。現女王の娘で、女装王族だよ。次に会うときは、僕の守護騎士を紹介してあげるから、君も紹介してね。守護騎士が現れたことへのお祝いとして、そんなダサいパンツより君に似合う、とびっきりのドレスを用意して待ってるから!」


 ……え、女王様の娘? 女装王族? この美少女王族が? ということは、……メイシャさんのご姉妹? あれ? というか、ぇ、待ってる? どこで?


 聞き間違いかと疑っている間に美少女王族――ではなく女装王族、を自称するカミューリアさんはパチコンとウィンクをして部屋から出ていきました。割とあっさりです。






 ――ということで、作戦通り、……たぶんシュヴァルさんの作戦通り、邪魔者は退散し、ようやく二人きりになったわけですが、……わたし、しばらく動けませんでした。

 どっと疲れてしまい、そのまま身体をシュヴァルさんに預けるくらい放心していました。


 けど、ぐるぐるきゅいーん、と空腹のねい――腹の虫が鳴り、ハッと我に返ります。


 そして、


「いつまで抱きしめてるんですかっ!」


 シュヴァルさんの脇腹をぶん殴って差し上げました。渾身の力を込めましたよもちろん。これは腹の虫を指摘された恨みも含まれているコミコミパックパンチです。ふふふんっ。


「――くっ、ひどいですね、せっかくお助けしたのに」


 腹を押さえるシュヴァルさんを無視して立ち上がり、距離を取ります。

 ふん、分かっています。何言ってるのこの人、なんて思ってません。やっぱり、そうだったんですね。って感じです。


 実のところ、二人の会話を聞いていてシュヴァルさんの意図はなんとなくですが把握していたりします。

 まだ推測の域を出ませんが、カミューリアさんと彼の言動を合わせて考えると、そうとしか思えないのです。


 説明されずとも理解できるなんてスゴイっ! 実は天才? ――ってわけではないのですよ。抱きしめられたあの状況で耳を澄ませ、頭をフル回転させた結果なのです。身の危険を感じると、人間とは普段はできないこともできるようになるものです。


 でも、


「……わたしはまだ、あなたを完全に信じたわけではありません」


 その火事場の馬鹿知恵で導き出した結果が動かない事実だったとしても、です。


 ――さ、では、無駄話は抜きで単刀直入でいかせてもらいます。


「――女装王族とは、男の王族のことですか?」


 早くしないとおじさんが大量の料理を持って現れるかもしれませんからね。巻きでいきます。


「あの少女は――いや、少年、とあえて呼びますが、あの少年は、わたしに女装して王族になれと、そう言っていましたよね?」


 まさかあの美少女が男の子だなんて普通ならすぐには信じられませんが、目の前に実は美青年な美女さんがいらっしゃいますし、カミューリアさん自身、女装王族だと名乗っています。

 そして、大前提として、守護騎士が現れた女性だけを王族と呼ぶのであれば、あえて『女装』とプラスアルファーな言い方をしなくてもいいわけです。だって王族イコール女性なわけですから。

 ということは、です。自動的に女装王族イコール男性の答えが導きだされてしまうわけです。


 ですから、シュヴァルさんの答えなど聞くまでもないのですが、


「その通りです」


 ……ですよねー。

 それってわたしの全ての問いに対するコミコミアンサーですよね? うあー、もう、聞いたら聞いたで頭を抱えたくなりました。聞かなきゃ良かったです。


 ……はぁぁ。いや、ね、そんな長ったらしく考えなくても、女装イコール男みたいな雰囲気はありましたよ? なんか妙なフラグ立ったなぁ、って気付いてましたよ? でも、認めたくない男装乙女心を分かってください。


 だって、男装乙女が女装したらただの乙女ですからね? ただの乙女では兄上たちの役に立てませんからね? しかも曲がりなりにも王族ということは、ここに留まらねばならない可能性まであるわけで……、ジーザス! って言葉はこんなときに使えばいいんでしょうか?


 ふぇぇぇ、……シュヴァルさんが目の前にいなければ確実にしゃがみ込んで頭を抱えて唸ってましたよわたし。

 兄上を助けに来てとんでもないことになってしまいました。


 けど、――それはそれとして、


「それで、あなたは何故わたしの女装化を阻んで下さるんですか?」


 過ぎ去ったことはどうにもなりませんからね。そこは後でうんと悩むとして、今の問題はそこです。


 女装王族が男の称号だとして、それを阻む言動をシュヴァルさんは繰り返していました。

 わたしのことを好きだといい、抱きしめ、カミューリアさんの「結婚したいんでしょ」発言も否定せずに受け入れていました。


 この国では不思議なことに性別が男女登録制で、籍が同じだと結婚できないけれど、同性でも結婚できるらしい仕組みがあります。

 そして、『女装子爵』であるシュヴァルさんが結婚できるのは男籍にある者だけだということは、メイシャさんの件で明らかになっています。


 ……ここまで考えると、唐突に脱ぎだしたのも、女性発言をしてわたしの逆鱗に触れたのも、破廉恥な行為も告白も、……何故かは分かりませんが、全てが、わたしが女装王族にならなくて済むようにとうってくれたシュヴァルさんの芝居だった――そうとしか思えないのです。


 シュヴァルさんは、誰かが――もしかしたらカミューリアさんがこの部屋に来ることを察して、だからこそあんな行動をあえてとったのではないか。……女装化を食い止めるためにわたしを好きなふりをして、女装子爵である自分が結婚したい相手だから女装王族にはさせられない。そう主張するためだったんじゃないか。

 そう考えると全ての辻褄が合うのです。


「……あなたの目的はなんです? そんなことをして、あなたに何の得があると?」


「目的と言われても、……それがあなたのためかと思ったんですが、」


「ですから、なぜ? どうしてわたしのために?」


 ボランティアなはずはないですよね? こちらの事情を何も知らないのに、ホモ疑惑まで受け入れてわたしの女装化を食い止めるなんて……。


 そうやってかなり疑って掛かっていたのですが、その答えはいとも単純明快なものでした。


「何故って、当然でしょう? あなたは私の命の恩人なんですから」


「…………あぁ、」


 そーいえば、国境超えのときお助けしましたね。


「女王国の出身でもないのにそのような身で、そのような格好をしているのですから、よほどの理由がおありなのではないかと思ったのです。……金麦では直系男子の跡取りがいなくてはお家断絶といいますし、そのへんが関わっているのではないかと」


「…………」


 おわーぉ。ばれてます。

 なんか色々ばれかけてます。

 確信はないようですが、なんか察しているみたいです。この人本当にエスパーですか? 察し過ぎです。


「……では、これはただの恩返しだと? それだけのために、あんなことを?」


 そうなんでしょうか? 本当に?

 眉を潜めて確認すると頷かれました。


「……もうご存知かと思いますが、この国はかなり特殊です。男が女を装い、女が男を装うことが当たり前のように行われています。それは我が国の女王制に端を発しているわけですが、……法律で許されているからといって、誰しもが性別を装いたいわけではありません。男らしくありたいと思っても、女らしく生きねばならない、そんな者もいます」


 シュヴァルさんは腹をさすりながら立ち上がり、ベッドへと座りました。相当痛かったようで、まだ顔がしかめっ面です。


 それとも、彼もまた男らしく生きたいと本当は思っているからなのでしょうか? 男らしく生きたいけれど、それが出来ない事情を抱えているんでしょうか?


「あなたが男であることを望むなら、それをお助けすることが恩返しになるのでは、とそう思ったのです。あなたがあなたらしく生きることを手伝えればと、ですが、」


 ――余計なことをしてしまいましたか?


 参りました。

 ……まったくです、なんて言うほど状況を把握していないわけではないのですが……、正直に言うなら、複雑です。


 助けられたから恩を返したとシュヴァルさんはおっしゃいました。と、なると、恩返しとはいえ助けられた身のわたしとしても、その恩を仇で返す行為をするわけにはいきません。


 ですが、わたしは、


「……あなたの秘密を知った私を、殺しますか?」


「――っ!」


 押し倒した経緯もありますし、実際わたしは彼を殺す気でいましたけど、……彼が恩人だと思うと、とてつもない罪悪感がジワジワと胸に拡がっていきます。彼は、バラすこともできたのです。目を光らせてはいましたけど、バラそうと思えばわたしの秘密を暴露できました。

 でも、彼は助けてくれた。ある意味身を呈して……。


「私はあなたの秘密を絶対に守ります。他言はいたしません。お約束します」


 じっと、シュヴァルさんの瞳を見つめます。見つめ返されているので見つめ合ってるわけですが、そこに嘘が隠れていないかを見極めなければなりません。


「それでも私の口を封じるというのなら、致し方ありません」


 静かに息を呑みます。

 瞬時に飛びかかる準備をした身体に、少しだけ悲しくなります。


 でも、そんなわたしの度肝を抜く台詞が聞こえてきました。


「どうぞ、私を殺してください」


「――っ?!」


「殿下に助けられた命です。如何様にも」


「……どうしてそこまで?」


「もちろん、恩を返すためです。わたしを殺すことで殿下が安心なさるなら、それはそれで恩返しとなるでしょう?」


 恩返しをするためなら死ねる?

 この人、本気ですか?


「……私はこの見た目で分かる通り、武芸に秀でているわけではありません。昔から病気がちだったために体力もない。あの時、あなたが現れなければ私は確実に死んでいました」


 おらおら盗賊たちは通行証を奪うつもりだったようですが、抵抗すれば確かに殺されていた可能性はあります。


「心より感謝しているんです。助けていただき、ありがとうございました」


 ……どうしましょう。


 どうしましょう、兄上?


 頭を下げるシュヴァルさんを、わたしはどすれば?


 口封じ? できますか? していいんですか?


 恩を返すために自分から命を差し出すなんて言ってる人を、殺すんですか? 殺さなければいけませんか?


 兄上、わたしはこの人を信じてはいけませんか? もう一度信じてはいけませんか?


「……一生、他言しないと誓えますか?」


 ねぇ、兄上? 口約束なんて信じられませんか?

 でも、この人は命を掛けて恩を返そうとしてくれてるんですよ?


「えぇ、誓えます。私は一生、あなたの秘密を誰にも話しません。死んでからもずっと、あなたが望む限り永久に」


 即答してくれましたよ?

 約束、してくれましたよ? ねぇ、兄上? わたしは、


 ――信じてください。


 シュヴァルさんの言葉が、声が、聞こえてきたような気がしました。


 しばらく見つめ続けましたけど、シュヴァルさんは視線を逸らしませんでした。

 ……結局根負けしたのはわたしの方です。


 ここまで言われて信じないのは人として終わってると思います。もし裏切られても、それはわたしの責任において処理ます。わたしにはまだ奥の手がありますし、……きっと大丈夫です。


「――分かりました。わたしはあなたを信じます。こちらこそ、黙っていてくれてありがとうございます」


 これからも黙っていてください。


 そんな想いで頭を下げました。

 下げた頭を上げると、シュヴァルさんが嬉しそうに微笑んでいて。


 つられたわたしも、お愛想抜きの笑みを、ほんの少しだけ浮かべたのでした。




 ◇

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