【07 こっちのほうも】
・
・【07 こっちのほうも】
・
ウミガメ系のクイズ。
葉っぽいが抹茶アイスじゃない。
Q.緑色ですか?
A.YES。
Q.甘いですか?
A.アイスなので。甘くない調理法もあります。
Q.違法ですか?
A.NO。誰でも手に入れることが出来ます。
Q.茶の種類ですか?
A.場合によってはYES。ただ厳密には、植物学的には茶ではありません。
Q.雑草ですか?
A.YESという認識で合っています。あまり育てている人はいません。
・
・
・
久しぶりに舞江お姉ちゃんに喫茶店へ来いという要請があった。賛成要員として、自分の言うことに何でも賛成してほしいらしい。
舞江お姉ちゃんが、周りが常連のお客さんだけになったタイミングで喋り出した。
「マスター、新商品なんてどうでしょうか」
マスターは相変わらず白いアゴ髭を触りながら、
「あー、あんま面倒なことはしたくねぇけどなぁー」
舞江お姉ちゃんは自信満々に、
「大丈夫です。ペーストを作って、それを既存の料理に練り込むだけなんで。ホットケーキとかに」
マスターは少々怪訝そうな顔で、
「ペーストねぇ……改めて材料を入荷するってなると大変だしなぁ……」
なるほど、マスターは否定癖があるみたいだから、あーしは今は黙っていて、んでもって頃合いを見て、賛成してしまえばいいというわけか。
舞江お姉ちゃんは舌を鳴らしてから、
「よもぎなんてどうでしょうか? 似潟県ならその辺に生えていますから」
「よもぎ? よもぎなんて笹団子だけで充分だろ」
「いいや、絶対よもぎブームというのがきますから。抹茶ブームの次はよもぎブームです!」
舞江お姉ちゃんはいつもあーしやモニカちゃんに話し掛けるような、やや横柄な感じじゃなくて、従順そうに喋る。まあ言い合っているわけだから全然従うわけじゃないんだけども。
「よもぎってブームになるのか?」
「はい! 既に若い子の間では流行っています!」
嘘だし。舞江お姉ちゃんは続ける。
「で! よもぎ味のスイーツとして売り出して、うちが元祖と名乗りましょう! 喫茶店では元祖です!」
マスターは小首を傾げて、
「本当に元祖になるのか? 他で作っていないかぁ?」
「マスター、スキー発祥の地ってどこですか?」
「そりゃ似潟県だろ、レルヒさんという軍人が広めたモノで、レルヒさんはゆるキャラにもなっている。商売人ならそのくらいのことは知ってるもんだろ」
「いいえ、北海道にもスキー発祥の地と言い張ってる不届きな連中がいるんです」
「何っ? それは不届き過ぎるな!」
「だからそういう元祖やら発祥の地って言ったもん勝ちなんです! アタシたちも元祖よもぎ味のスイーツとして売り出しましょう!」
マスターはう~んと唸っている。舞江お姉ちゃんは畳みかける。
「絶対何か名物となるものがあったほうがいいです! よもぎソーダとか! メロンソーダじゃないんですね、メロンソーダよりも健康なんですね、みたいな!」
ここだと思って、あーしは喋り出した。
「それめっちゃ良いです! よもぎって健康食ですし、老若男女好きな味だと思います!」
するとマスターはあーしと舞江お姉ちゃんの顔を交互に見てから、
「まあ若い子二人が推しているのなら、それも悪くないのかな。そんな金も掛からないみたいだし」
舞江お姉ちゃんはキャピキャピと喜んでいるけども、多少は演技なんだろうなと思う。
というか普段来ないあーしが急にやって来て賛同していたら、怪しいような気もするけども、このマスターはそこまで頭が回らないらしい。
まあ何はともあれ舞江お姉ちゃんの思った通りになったことは良かった。これも多分、喫茶店を乗っ取るための布石とか、そういうことなんだろうなぁ。
でも、実際、舞江お姉ちゃんはここからどうやって喫茶店を乗っ取るのだろうか、普通にマスターと仲良くなっているような気がする。情が湧いて乗っ取るとか出来なくなるのでは? まあ舞江お姉ちゃんに限って、サイコパスだからそんなことは無いんだろうなとも思う。
というか舞江お姉ちゃんって、もしかするとモニカちゃんが作った『葉っぽいが抹茶アイスじゃない』のクイズに触発されて、こんなこと言い出している? まあ確かに似潟県には、もっとよもぎを全面に押し出すということをやっている企業もあるしなぁ。よもぎー茶ってヤツ。勿論、あのウミガメ系のクイズの答えは、よもぎだ。
・
・
・
勉強が苦手なギャルは間違えて覚えているが、偶然合ってもいる。
誤答「春に丈が伸びるって感じでしょ?」
一体何を言っている?
・
・
・
ある日、舞江お姉ちゃんの家で、舞江お姉ちゃんとあーしが制服を着て、モニカちゃんが撮影をしている時、舞江お姉ちゃんがこんなことを言い出した。
「モニカもコンテストに投稿してさ、愛華と一緒に文学者アイドルでもやってみたら?」
モニカちゃんは突然の話題振りに困惑するように、挙動不審になってしまった。
あーしは即座に、
「いやモニカちゃんにシャバいことさせようとしないでよ、そんなあーしと二人で何かするって普通に迷惑でしょ」
するとモニカちゃんは妙に語気を強めて、
「愛華ちゃんと一緒に何かすることは迷惑じゃありません!」
舞江お姉ちゃんはハハッと笑ってから、
「じゃあなおさらいいじゃん、そうすると一緒にいる時間も長くなるし、コンテストという共通の話題が出来て、より会話が盛り上がると思うぜ」
あーしは間髪入れず、
「コンテスト一緒にしてくれるのは単純に嬉しいけども、そのあとの文学者アイドルというのが気にくわないし! モニカちゃんは見世物になるの嫌でしょっ?」
モニカちゃんはもごもごと俯いた。絶対そうだと思うし、と思っていると、モニカちゃんが、
「でも、それが愛華ちゃんの助けになるなら、一緒にやりたい、かも、です……」
あーしが返事をする前に舞江お姉ちゃんが、
「じゃ決定で! まあアイドルと言っても枕営業するわけじゃないから! 文学者ユニットって感じで! アーティスト集団って感じで! な!」
あーしはモニカちゃんの目を見ながら、
「ホントに嫌じゃない?」
するとモニカちゃんがあーしを見つめながら、
「それこそ愛華ちゃんは私と一緒に何かするの苦痛じゃない?」
「苦痛なはずないし! あーしはモニカちゃんと一緒に何か出来るなら、それほど心強いことないし!」
と、つい本音を言ってしまい、モニカちゃんは笑顔で応えてくれたわけだけども、ここは嘘ついて、モニカちゃんに変な出役させないようにしてあげたほうが良かったかもと少し後悔した。そりゃモニカちゃんと一緒に出来るだけ長い時間居たいから、切磋琢磨出来たら嬉しいけども、こんなことを言ってしまったばっかしに巻き込む形になってしまった。
これは結構反省、反省のはずなんだけども、モニカちゃんの爽やかな笑顔を見てしまうと、これで良かったし、と思ってしまう自分がいて、あーしはホントに心が弱い。だから悪友に誘われるがままにオンラインカジノなんてやってしまったんだろうな、と思って少し鬱になってしまった。
するとモニカちゃんは一瞬のあーしの表情の変化を見逃さず、
「どうしたんですか?」
と言ってくれて、何かホントに嬉しかった。
「別に! 昔の嫌なことを思い出しただけ!」
と返事しておいたけども、こんな、モニカちゃんの前でこんな顔するのはホントに良くなかった。
あーしはもっと、モニカちゃんと一緒にいても相応しいくらいに成長したいと本気で思った。そう、タケノコのように、って、まさしくモニカちゃんが作った謎解き『勉強が苦手なギャルは間違えて覚えているが、偶然合ってもいる。誤答「春に丈が伸びるって感じでしょ?」。一体何を言っている?』まんまだ。
『正解は「旬に竹が伸びるって漢字でしょ?」で筍』という謎解きの。
・
・
・
頬が火照っている加工を施したあーしと舞江お姉ちゃんが、
白いとろりとした物体をスプーンに乗せて、それを舌でツンツンしながら、
「①④⑤が作ったの、とろとろで①⑤④……」と吹き出して喋っている。
ヒント「③②に乗っているモノはこの間多布地区で②”小さい⑤“③④、③と④も有名!」
それぞれ何?
【①②③④】【⑤⑤⑥】
・
・
・
いつも通り、舞江お姉ちゃんの家で、モニカちゃんが撮影終えたわけだけども、少し頬を膨らませながらモニカちゃんが、
「何か今日の、特にエッチでちょっと嫌かも……」
すると舞江お姉ちゃんが目を輝かせながら、
「これがエッチって分かるんだぁ! モニカって! へぇ! モニカって結構エッチなんだねぇ!」
あーしは矢継ぎ早に、
「モニカちゃんにそういうイジリしないでほしいし! こんなん性教育受けていれば大体分かるもんだし! モニカちゃんは真面目に授業受けていただけだし!」
舞江お姉ちゃんはニヤニヤしながら、
「でもさぁ、性教育受けただけでは、白い液体を舌で舐めようとする行為の意味が分かるなんてないけどなぁ、女性器に入れるものだからさぁ」
モニカちゃんは顔を真っ赤にして俯いている。
いやいや、モニカちゃんの表情を凝視するんじゃなくて、
「とにかく、モニカちゃんにそういうことやるんだったら、あーしは本気でキレるし」
舞江お姉ちゃんは少し不機嫌そうに、
「えー、そんなん言ったら、出るとこ出るかもぉー」
と言って、あーしはウッとなってしまった。なんせオンラインカジノをやっていたことにより、高校生にもお金を貸す闇金融に手を出してしまい、お金を稼ぐために泣きついて、こうなっているわけだから。
あーしは「へへっ」とダサく笑ってしまうと、モニカちゃんが顔を上げて、
「別に! 私だって高校生ですから!」
と言うと、舞江お姉ちゃんはゲラゲラ笑った。腹が立つし、ってそうだ、このことまだ舞江お姉ちゃんに言ってなかったんじゃないかな。空気を変えるには別の話題をすればいい。
「舞江お姉ちゃん、そう言えばモニカちゃん、早速俳句のコンテストで受賞したんだよね!」
モニカちゃんもあーしのパスに気付いたのか、
「あ! そうです! 私受賞しました!」
すると舞江お姉ちゃんはニヤリとしてから、
「両方ビッチの文学アイドルか……」
と呟いたわけだけども、あーしはすぐに、
「モニカちゃんの金髪はハーフだからだし! あーしはそういうファッションが好きなだけだし!」
するとモニカちゃんが急にしょんぼりしたので、一体何だろうと思っていると、
「すみません、私の金髪は染めているだけです……」
と言い出して、あーしはビックリしてしまった。なんせ金髪に染めるほうとは思えなかったからだ。
モニカちゃんは申し訳無さそうに続ける。
「ヤンキーや嫌なおじさんに絡まれないように金髪にしているだけなんです……でも高校にはハーフのソレでって嘘ついていて……カッコ悪いですよね……」
いやいやそんなこと、とあーしが言葉を整えて喋ろうとすると、それよりも先に舞江お姉ちゃんが声を上げた。
「めちゃくちゃいいじゃん! それぇ! その理由めちゃくちゃ文学だと思うから! それ! 良い頃合いで言っていこう!」
なんと舞江お姉ちゃん絶賛だった。そういう考え方もあるんだ。というかそれよりもあーしも遅れながらフォローしよう。あーしもモニカちゃんに言いたい。
「カッコ悪くないし! ちゃんと理由があるわけだし! そういう嘘は嘘じゃなくて賢いことだし!」
モニカちゃんは優しく微笑んで、
「愛華ちゃんにそう言ってもらえると安心します。あと舞江さんも有難うございます」
と言って頭を下げた。めっちゃ良い子過ぎる。だから黒髪だとぶつかりおじさんとかに狙われるわけかぁ、男性って嫌だなぁ、と思った。
だからホントは男性の精子に似せた『白いとろりとした物体をスプーンに乗せて舌でツンツンしながら「①④⑤が作ったの、とろとろで①⑤④……」と吹き出して喋っている』なんて写真撮りたくないんだけどもさ。
『ヒント「③②に乗っているモノはこの間多布地区で②”小さい⑤“③④、③と④も有名!」』だけじゃダメなのかなぁ、まあさすがにヒントが足りないか。
『アイツが作ったの、とろとろでアツい』が最初のヒントで『サジ(匙)に乗っているモノは間多布地区でジッサイ(実際)、さといも(里芋)有名!』が当てはまって、つまり【アジサイ】【ツツジ】になる。勿論、精子に似せて作ったソレは里芋を擦った料理だ。一応『アイツが作った里芋料理、とろとろでアツい』という意味になる。




