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ネットニュースとコンテストをハックして金儲け  作者: 伊藤テル


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5/13

【05 商法】

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・【05 商法】

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 記事は勿論、共有アカウントのSNSもバズったほうがいいので、あえて生成AI丸出しの画像を使い、炎上商法を狙うことになった。勿論舞江お姉ちゃん主導だ。

 イラストは本来、舞江お姉ちゃんが多少なりに描けるらしいんだけども、わざと生成AIを使う。

 ただ本当に著作権に引っ掛かることは舞江お姉ちゃんとしても本意じゃないらしく、オリジナルキャラを舞江お姉ちゃんが描き、それを生成AIで生成AI風に加工したイラストや、アニメにしていくことになった。

 舞江お姉ちゃんの家で画像を生成しながら、舞江お姉ちゃんが、

「大企業が生成AIアニメを作ってもいいけどさ、オリジナルキャラを最初に描けばいいのにな」

 と言っていて、それはホントにその通りだと思った。そういう、キャラ造形から何から何まで生成AIで作って、プロモーション取り消しみたいな事案あるし。

 舞江お姉ちゃんが鼻で笑うと、

「サイコパス過ぎるよな、大企業って」

 と言い、まあそれは確かにそうだとは思った。

 でもその大企業のサイコパスは自分の我を通さない、弱いサイコパスだったけども。

 イラストやアニメも完成したところで舞江お姉ちゃんがそれらをまた生成AIに読み込ませて、

『オシッコで染みたような色合いに調整して』

 という意味分からんプロンプトを指示し始めて、あーしは慌てて、

「何でそんなことするのっ?」

「あぁ、生成AIって、特有の、オシッコ色したイラストを描きがちなんだ」

「確かにそんなイメージあるけども、何でわざわざそんなことするのっ? このままのほうが綺麗だしっ」

「いやだからこれは炎上商法を狙っているわけだから、より生成AIだと思わせて、反生成AI連中にリポスト炎上してもらわないといけないわけだよ。だからいつもよりオシッコ染みさせて『何でこんなオシッコ色なの?』と言わせないといけないんだ」

 姑息というかなんというか、炎上商法ってここまでしっかり計算するものなんだ、と少し感心してしまった。

 そんな感じに投稿した、オシッコ色がキツ過ぎる生成AI画像や動画は見事、炎上バズりをした。

 そんななか、舞江お姉ちゃんは少し悩み事があるらしく、それをあーしに話してくれた。

「ネットニュースはドーパミンが出るモノしか見られないって言ったこと覚えているか?」

「うん、覚えているよ」

「ランキングモノや愛華の活動記録に、アタシと愛華の日常谷間写真を掲載することにより、地元スポーツ新聞社が流してくれているネットニュースは、及第点の閲覧数が取れているんだけども、やっぱりもっとバズりたくてさ」

「それってどうするの?」

 舞江お姉ちゃんは満を持してといった感じに、

「自分はネットニュースをただバカみたいに見ている人間とは違って、ちゃんと脳を使っているんですと思わせる記事を作りたいんだ」

「言い方! というか、どういう記事だしっ! 噛み砕いて教えて!」

「簡単に言えば、謎解きや脳トレが書かれている記事さ」

「そう言ってよ! 言い方が悪過ぎるし!」 

「そういう頭を使う記事もドーパミンが出る記事の一つで。だからさ、愛華の高校に謎解きが得意そうな子いない? ハッキリ言ってしまえば、あのモニカって子のことなんだけども」

 急にモニカという名前が出てきてギョッとした。何故なら夏井モニカ(なつい・もにか)という子が確かに同級生でいるからだ。あの子は欧米系のハーフの子で別にこれといった絡みも無いけども、取り立てて謎解きが得意そうな感じではないし、教室に友達もいる風でもないし。

 あーしはおそるおそる、

「何で急にモニカだし?」

「まあちょっとSNSで調べたらさ、どうやら謎解き好きそうなSNSやっているみたいで。でもモニカには一緒に謎解きイベントへ行ける友達もいなくてって、だからモニカと愛華が仲良くなってさ、モニカの創作した謎解きをアタシらのネットニュースで使うとか出来ないかなって」

「どうやって調べたのっ?」

「まあそれはいいとして」

「それはいいとして、って」

「仲良くなるのが無理そうなら簡単に脅す方向でいくけども、どうする?」

 いやいや! あーし、闇バイトのような犯罪に加担するのが嫌で、なんとか闇金にお金を返そうとしているのに、脅すなんてもってのほか!

 あーしは焦りながら、

「友達になってくるし!」

 と舞江お姉ちゃんに返事をして、次の日、高校で早速話し掛けることにした。

 舞江お姉ちゃんの調べだと、ヨンリオのキャラクターであるボムボムブリンが好きらしい。だからそれを糸口に、ちょうどおあつらえ向きのイベントがあるので、それを使うことにした。

「モニカちゃん」

 あーしが話し掛けながら近付くと、明らかに警戒態勢に入ったモニカちゃん。

 でもあーしは続ける。

「そのバッグについているのって、ボムボムブリンだよね、めっちゃ可愛いしっ」

 モニカちゃんは少し面倒クサそうに、

「は、はぁ」

 と返事すると、あーしは必殺の誘い文句を繰り出した。

「今ボムボムブリンとコラボした謎解きイベントがあって、二人一組で参加しないとダメなんだけども、そこで謎が解けるとオリジナルステッカーがもらえるみたいで、あーしそれ欲しいから一緒に遊んでくれない?」

 するとモニカちゃんはあからさまに笑みを、でもすぐにその笑みを殺しながら、

「な、なんで、私なんですか……」

「いやだってあーしの友達、バカばっかで。頭良くて話が出来そうな子ってモニカちゃんくらいしかいないから」

 挙動不審に首を左右に振り始めたモニカちゃん。

 これはもう一押しだろう。

「ボムボムブリン好きでしょ? モニカちゃんはオリジナルステッカーほしくないっ?」

「ほ、ほしいです……」

「じゃああーしと一緒に行こうよ!」

「は……はい……」

 よっしゃぁぁああああああああ! 落ちたぁぁああああああああ!

 そこからトントン拍子で次の土曜日に行くことになり、当日、ボムボムブリンの謎解きイベントはモニカちゃんがすぐにクリアし、オリジナルステッカーをゲットした。

「謎解きって面白いねっ! 何かもっとやりたいかもだし!」

 と終わったあとに言ってみると、モニカちゃんが目の色を変えて、

「じゃあちょっと近くのカフェへ行きましょう!」

 と言ってくれて、一緒にカフェに来てからはもう怒涛の謎解き祭り。

 モニカちゃんから次々と謎解きを出題されて、あーしはそれに答えまくり。

 結構親切なヒントも散りばめられてあって、ちゃんとあーしレベルでも答えることが出来たり出来なかったり。

 ここはもう本題の出しどころだと思い、一息で言いたいことを言い切ることにした。

「あーしってさ、今顔出ししつつコンテストに投稿して、ゆくゆくは地元を代表する文学者になりたくて、その流れで拡散力を上げるために、ネットニュースの配信が出来る環境を作り上げて、今ネットニュースの配信もしているんだけども、そのネットニュースに載せる謎解きをモニカちゃん、作ってくれないっ?」

 モニカちゃんは目を皿にして、

「え、地元を代表する文学者……で、拡散力を上げるため、ネットニュース……どういうことですか?」

 あーしは女子高生文学者の話と町おこしの話を説明すると、モニカちゃんは分かってくれて、

「つまり、コンテストの結果報告を定点観測のように配信している記事があって、その記事に謎解きを掲載して、より閲覧数を稼ぎたいわけですねっ」

「そうそう、あーしの記事に載せるだけじゃなくて、似潟県や町のPRになる言葉が答えになる謎解きを単体で流してもいいし。むしろそっちの、町おこし側を一緒にやってくれないかなって」

 モニカちゃんは笑顔で、

「ネットニュースは基本好きじゃないけども、謎解きの記事は好きだし、そういう、謎解きの記事を流すコネクションがあるなら是非参加したいです! 私もいろいろやってみたいです!」

 と言ってくれて、なんとまさか謎解きが作れる仲間が出来て、すごく良かった。でもこの言いっぷり、モニカちゃんは『自分はネットニュースをただバカみたいに見ている人間とは違って、ちゃんと脳を使っているんです』の人っぽくて、内心ちょっとほくそ笑んでしまった。

 その後、あーしはモニカちゃんを連れて、舞江お姉ちゃんの家へ行き、改めてネットニュースの説明をすることにしたわけだけども、そこでの舞江お姉ちゃんがやたら偉そうに喋っていて、多分、自分が上だということのマウントを取りたいみたいだった。

 こういう上とか下とか気にして、というか、上にいきたがることもサイコパスの特徴だよなぁ、と思った。

 でもモニカちゃんも結構負けていない性格で、話の流れとしては、町のPRになるような、間多布町や似潟県の名物が答えになるような謎解きを作っていこうという話だったのに、モニカちゃんが、

「一個謎解き出来ました」

 と言って書いたモノが、


・

・

・


左から日本人が「①②! オマエ、元気か?」

右から外国人が「ヘ③! ヘ③! ヘ③! ハウ・アー・ユー!」

真ん中にいる人(①②ヘ③な態度だなぁ)

【①②へ③】の答えは何?


・

・

・


 という謎解きで、舞江お姉ちゃんはちょっと不満そうに「分からん」と答えたわけだけども、あーしはちょっと謎解きのコツを掴んでいたので、

「日本人が『おう』で外国人が『ヘイ』でしょ? だから【おうへい】な態度で、答えは横柄だし!」

 と答えて、見事正解した。つまり舞江お姉ちゃんは横柄な態度だったということだ。多分。

 それでついあーしは笑ってしまったわけだけども、舞江お姉ちゃんは鋭い目つきになり、

「面白ぇじゃん」

 と言い、モニカちゃんはニコニコしていた。なんとなくモニカちゃんに友達がいなかった理由が分かった。意外と気が強いんだ。そこは欧米的な感覚なんだ。

 でもまあ三人で(主にあーしが)間多布町や似潟県の名産品を調べ上げて、そのワードでどんどんモニカちゃんは謎解きを作っていき、今後も継続的に作ってくれるという話になって良かった。

 またモニカちゃんには舞江お姉ちゃんから、謝礼金を支払うことで同意となった。

 勿論、謎解きの著作権はモニカちゃん持ちで、こっちはネットニュースやSNSで流すだけで、モニカちゃんの著作権だというキャッシュもちゃんと入れると約束した。

 モニカちゃんとは一足先にバイバイして、あーしと舞江お姉ちゃんで少し会議をすることになった……というより、あーしも帰ろうとしたら止められた。

 舞江お姉ちゃんはモニカちゃんがたくさん作ってくれた謎解きを「これはダメ、これは良い」と言いながら選別し始めた。

 そのダメといったなかには、あーしが気に入っている良問があったので、

「何でこれはダメだし? めっちゃ良いじゃん」

「これは使いづらい」

「え、難易度とかもちょうどいいと思うんだけど」

「そうじゃなくて、謎解きに謎解きの画像以外にもアタシたちの記事として、アタシたちの画像を乗っけるんだけども、そういうエロめの画像を撮りづらいヤツは却下する」

「そんな理由でっ?」

 あーしは目を点にしてしまうと、舞江お姉ちゃんは真顔で、

「だって、エロい人にはエロく見える写真が無いと、両面(りゃんめん)でバズらないでしょ?」

「何そのエロい人にはエロく見える写真って!」

「その名の通り。よく見ると谷間が見えるとか、ブラ線が浮いているとか、そういうエロい人用の写真のことだよ。謎解きを真っ直ぐ楽しむ人は気付かないような、微妙なラインのヤツ。だから水着を着ているとかはアウトで」

 舞江お姉ちゃん、そんなこと考えていたんだ。

 正直”エロて”よりも、そんなことまで考えるんだと感心してしまった。

 そこから舞江お姉ちゃんはその基準で、どんどん選んでいき、使う謎解きが決まったところで、また写真撮影となった。

 舞江お姉ちゃんの家にはたくさんのコスプレグッズがあって、若干服がよれているので、そういう時に使ってきたんだろうなとは少し思った。

 まあ綺麗げにはしているので、別に良いけども。

 あーしと舞江お姉ちゃんは似潟県や間多布町のPRになるような、謎解き+エロい人にはエロく見える写真をどんどん投稿していった。

 正直エロく見える写真ありきで謎解きを選んでいったので、少し滑稽な謎解きもあるんだけども、舞江お姉ちゃんから謝礼金も出すということで、モニカちゃんとしてもお金がもらえるということは嬉しいみたいだった。

 それに伴い、舞江お姉ちゃんから指示があり、あーしは高校でそのことをモニカちゃんへ直接伝えた。

 するとモニカちゃんはちょっと大きな声で、

「エロそうな謎解きを考えてほしいっ?」

 とビックリしてしまい、すぐさま口を手で覆った。

 教室はいつもの喧騒でモニカちゃんの台詞はあーしにしか聞こえていなかったみたいでホッと一息。

 最近はモニカちゃんと教室で雑談もするようになって、ホントに普通の友達という感じで嬉しいわけだけども、こんなお願いをしないといけない時があるというのは、何か水を差すなぁとは思う。いや元々それ用の関係なわけだけども、せっかく普通に仲良しになってきたのになぁ。

 モニカちゃんはう~んと唸ってから、

「そもそも私、謎解きにちょっとだけ変な写真を載せること、あんま了承していないんですけどもっ。あれは偶然ですかっ、それとも愛華ちゃんの趣味ですかっ」

「いやあーしの趣味ではないよっ、偶然とかでもなくて、そっちのほうがバズるからって舞江お姉ちゃんが。というか、あれがその、エロい写真だって分かる?」

「分かるというか、何かそんな気がするような気がして。ほら、ブラ線が透けていて、そういう写真は弾けばいいのになぁって」

 なるほど、どちらかと言うと、そういう写真は使わないほうがいいという親切ベースで分かったみたいだ。真っ直ぐ”隠れエロ過ぎでしょ!”というわけではないらしい。

 あーしのなかのモニカちゃんと解釈一致なので、それは良かった。

 まあとにかく、

「何事もバズることが大切だから、分かる人には分かるくらいで」

「まあ謎解きを大勢の方々に見てもらえることは嬉しいですが、本当にそういう人って謎解きを解くんですか?」

「それはまあ分からないけども、でも閲覧数はただ画像とコンテスト報告している記事よりも人気が出ているよ。やっぱしサムネイルに謎解き画像があると強いね」

「それならいいんですがっ」

 あーしは何だか本題がどっかにいってしまったような気がしたので、改めて念を押すように、

「で、本題のエロそうな謎解きなんだけども」

「それ忘れてました! ちょっとソレ! どうなんですかっ!」

「でもまあちょっとエロしやすい謎解きの答えだったり、文章だったりするといいかなって、舞江お姉ちゃんが」

「エロしやすいって言葉なんですかっ、でもそんな器用なことはさすがに出来ません。作問はまだまだ素人なので」

「そうだ。似潟県全体は勿論、間多布町ってチューリップが有名だからさ、チューリップが答えになるような謎解きは浮かばない?」

「そういうお題があると作りやすくはありますけどもっ」

 モニカちゃんは斜め上のほうをちょっと見たと思ったら、すぐに、

「じゃあこういうのはどうですか?」


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キスマーク(赤色)①②③(ここは愛華ちゃんのキスマーク)

キスマーク(黄色)④⑤⑥(ここは舞江さんのキスマーク)

①②③④⑤⑥


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 モニカちゃんは書いた紙を見せながら、

「もしかしたら、どこかの謎解きと被っているかもなくらいシンプルですが、まあエロそうな感じというお題と間多布町のPRと合わせれば、意外と無いのかなって」

 あーしは既にお題(答え)知っているので、

「チュー・リップってことねっ、これはめっちゃ良いと思う!」

 と少し大きめの声が出てしまうと、モニカちゃんは鼻高々に、

「間多布町のPRとかかっているところがいいですよね!」

「そう! そこが一番だし! ちょっとくらい被っていたとしてもこっちにはコンセプトがあるから!」

 あーしはモニカちゃんとハイタッチして、何だか気分が高揚した。ハイタッチくらいでこんなテンションが上がるなんて、自分でも思ってもいなかった。

 そこからいつも通り、モニカちゃんと雑談をして、時間を過ごしていった。昼ご飯も一緒に食べて、最近は本当にずっとモニカちゃんと一緒にいる。

 あーしをオンラインカジノに誘った悪友は中学の頃の悪友で、同じ高校ではない。

 この高校では広く浅く人間関係をやってきたわけだが、ついにモニカちゃんというちゃんとした友達が出来た。

 広く浅くなってしまっていたのは、放課後に民宿の手伝いをしないといけないせいだったわけだけども、モニカちゃんはあーしの事情も分かってくれているし、前に高校で友達になろうとしていた人と違って「そんなことより一緒に遊ぼうよ、わたしのこと優先してくれないんだ」みたいな面倒くさいことを言ってこない。

 こうやってあーしのことを尊重してくれるモニカちゃんが友達として大好きだ。あの悪友たちもそんな面は無かった。

 あーしは授業中、舞江お姉ちゃんにチューリップの謎解きを教えると、すぐさま返信があり、

『じゃあ今日の放課後、チューリップの写真を撮りに行こう』

 今は四月中旬、確かにチューリップが咲いている季節だ。

 間多布町をPRするなら、確かにチューリップの写真も掲載したほうがいい。

 次の休み時間にモニカちゃんにアポをとり、授業&授業で放課後になったところで、舞江お姉ちゃんの車に校門から乗り込んで、チューリップ畑に直行した。

 舞江お姉ちゃんは谷間がギリギリ見える服を着ている。あーしは制服のままで大丈夫という話だ。

 最近は舞江お姉ちゃんがギリエロ担当で、あーしはあんまり露出しなくていいということになっているので有難い。

 まあSNSではたまに水着の写真や谷間が揺れているダンス動画を上げるようにという指示があるけども、やんわりと緩和され始めている。

 もしかしたらモニカちゃんとの関係を優先してくれているのかもしれない。いやどうだろう、舞江お姉ちゃんは他に何か作戦があるのかな? サイコパスだから何を考えているかは分からない。

 間多布町のチューリップ畑は一本二本が花壇に並んで生えているわけではなくて、もう本当に、球根を売るための畑で、畝にびっしりとチューリップが生えている。

 見渡す限り、チューリップで、色も品種もいろんなチューリップがある。赤・白・黄色は勿論、橙や紫、マーブル状にカラーが何色にも見えるチューリップもある。八重になっていて、まるでバラのようになっている品種もあり、正直このチューリップの写真だけでバズりそうだ。

 舞江お姉ちゃんはある方向を指差しながら、

「田舎のバズ発想だぁ」

 と言って笑い、何だろうと思い、その指先を見ると、そこにはハリボテのような小さな風車が一基だけあった。

 あーしもつい吹き出してしまった。何この簡易オランダ。

 モニカちゃんは頬を膨らませながら、

「こういうの笑っちゃダメですっ」

 と言ったわけだけども、舞江お姉ちゃんは爆笑しながら、

「いやでも一基だけでさぁ! 周りの風景も普通に電柱あるしさぁ!」

 確かにオランダの風車チューリップ写真には電柱は映っていない。そういうところに瞬時に気付くところは、なんというかさすがだと思う。

 モニカちゃんは不満げに、

「こういうところでちゃんと私は写真撮りたいですっ、愛華ちゃんと一緒にっ」

 と言うと、少し舞江お姉ちゃんのほうをキッと睨んだ。

 舞江お姉ちゃんは「まーなー」と軽く仰け反りながら言うと、

「真っ直ぐなヤツもいるし、この辺でやめとくかー」

 と笑うことをやめた。

 あーしも笑う側だったの、ちょっと申し訳無い。というかモニカちゃんと同じ感覚側でありたかったという気持ちが芽生えた。別に人の感性なんてどうでもいいはずなのに。

 モニカちゃんは金髪のボブを揺らしながら、

「愛華ちゃん! さっき吹き出してましたけど写真撮りませんかっ!」

「勿論撮るよ!」

 と何か思ったよりも大きな声で返事してしまい、舞江お姉ちゃんにウケた。

 そんな感じで普通に観光して、それはそれで楽しかった。

 謎解き用の、チューリップバックのキス顔写真も舞江お姉ちゃんと並んで撮れた。モニカちゃんが撮影してくれた。

 そろそろ帰るかとなったところで、あーしは、

「でもさ、町おこしするならその時に撮るんじゃなくて、事前に宣伝する形のほうがいいかもだし」

 と言うと、舞江お姉ちゃんが即座に、

「モニカは時間ある? 先に帰る?」

 モニカちゃんは首を横に振って、

「私だけ帰るなんて嫌です! 私はまだ愛華ちゃんと一緒にいたいです!」

 と言ってくれて、何かめっちゃ嬉しかった。

 いや、というか、

「舞江お姉ちゃん、何かするの?」

 舞江お姉ちゃんは頷きながら、

「ちょっと、間多布町の観光協会に去年の写真とかもらって、PRしやすくしようかなって。写真って合成でなんとかなるから」

 モニカちゃんは小首を傾げながら、

「でもアポナシじゃダメなんじゃないんですか?」

 舞江お姉ちゃんは自信満々に、

「アポナシだからいいんだよ、考える暇を与えない状態で了承してもらうんだよ。間多布町の観光協会なんていつも暇だろうから、いつ行ってもいいし」

 出た、サイコパス的考え方。

 相手のことは想わず、自分が勝つためだけの論理。

 モニカちゃんはう~んと唸ってから、

「そういう作戦ですかぁ……そういうの私は良くないと思います」

 そりゃモニカちゃんは舞江お姉ちゃんの怖いサイコパス具合をまだ知らないだろうけども、強気にいくなぁ、とは思った。

 すると舞江お姉ちゃんは、

「じゃあモニカだけ先に帰っといて、邪魔になるから」

 と冷たく言い放ち、もう少し言い方ってもんがあるでしょ、とは思った。

 モニカちゃんはうぐぐぐと唇を噛んでから、

「別にいいです! どうせ愛華ちゃんとはまた明日学校で会えますし!」

 と言うと、舞江お姉ちゃんが急に柔和な顔になり、

「じゃあ家の近くまで送るよ、ここ間多布町内から外れた場所だから」

 舞江お姉ちゃんは自分の我が通れば、別に何でもいいらしい。こういう変わり身の早さもサイコパス感あるなぁ。

 モニカちゃんは最初ちょっとだけ渋っていたけども、ここから歩いて帰るのも大変なので、舞江お姉ちゃんが運転する車に乗った、わけだけども、さっきはあーしは助手席に座って移動していたんだけども、モニカちゃんがあーしの袖を引っ張って、一緒に後部座席に乗り込んだ。

 そこでモニカちゃんから、

「今後車内での移動中は私の隣に来てください!」

 と言われて、何だかめっちゃ心が温まった。というか可愛過ぎる。

 モニカちゃんは最寄りの場所でおろして、そのままあーしと舞江お姉ちゃんは間多布町の観光協会を訪れた。

 どうやら対応してくれる人はおじいちゃんのような人みたいだ。

 若い女性二人であるあーしたちを見るなり、ソファーと机のあるスペースに招き入れて、喜んで喋り出した。

 あーしたちが地元のスポーツ新聞社からネットニュースを配信していることと、そのスポーツ新聞社の名刺を見せたところまでは良かったんだけども、実際にそのネットニュースを見てもらったところで怪訝な反応になっていった。

 そのおじいちゃんのような人は、

「こういうの、ちょっと……あんまり若い子がしないほうがいいのではないでしょうか」

 お色気要素に対して引っ掛かっていることはあーしでもなんとなく分かった。エロい人にはエロく見える画像と舞江お姉ちゃんは言っているけども、正直ある程度の大人ならばみんな分かるようなソレではある。だからこのおじいちゃんのような人は普通の人よりスケベとかそういうことじゃなくて、とは思う。

 あーしは舞江お姉ちゃんのほうをチラリと確認すると、舞江お姉ちゃんは堂々と、

「つまりエッチな要素が良くない、と」

 おじいちゃんのような人は、

「やっぱり自分で分かってやってらっしゃるんですか……そういうお方に観光協会の写真をお貸しすることはちょっと難しいかもしれませんね……その、謎解きだけならいいんですけどもね……」

 と、さっきまで元気に喋ってくれていたのに、みるみるトーンダウンしていった。というか男性でもこんなちゃんと、スケベを拒否出来る人いるんだ。ちょっとビックリ。あーしの周りの男性ってスケベ丸出し大将軍ばっかしだから。

 これは劣勢というか、そのまま諦めるか、それともサイコパス上等で無断使用していくのかと思っていると、舞江お姉ちゃんはこうハキハキと述べた。

「だってお色気で釣らないと、誰も見向きもしないじゃないですか」

 おじいちゃんのような人は呆気にとられている。

 舞江お姉ちゃんは続ける。

「こうでもしないと最初のワンクリックが出ないんです。確かにサムネイルは謎解きなので、謎解き好きは見てくれます。でも継続的に、そういう画像もあるということを知っている人に働き掛けないとダメなんです。こういう画像が常連を作り出すんです」

「でもその……」

「そちらが嫌ならば、逆にキャッシュというか、著作権入れなくてもいいです。観光協会が提供しているって知らせなくてもいいです。でもアタシたちは皆様の写真を使って町おこしがしたいんです。有名な企業も最初は変な仕事で名を売っていったところもあります。まずは知ってもらうことを最優先で、身を削ってでもやらないといけないんです。アタシはこの町をもっと大勢の方々に知って頂きたいんです」

 そう言って頭を下げた舞江お姉ちゃん。すごい。真摯(そう)に語っている。

 おじいちゃんのような人は別の、今度はおばさんを連れてきて、舞江お姉ちゃんが改めて説明をした。

 すると、二人は納得し、観光協会の写真を貸し出してくれることとなった。まあ根負けして、去年の観光写真をたくさん使っていい、と。

 連絡先を交換して、あーしたちは舞江お姉ちゃんの家へ帰って行った。

 車内で舞江お姉ちゃんが言っていたことは、

「真面目な人には誠意を見せる。嘘をつかない。全部言う。変な駆け引きよりもこれが一番効くんだよ」

 と。どうやら舞江お姉ちゃんはタダのサイコパスではないらしい。


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