↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネットニュースとコンテストをハックして金儲け  作者: 伊藤テル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/13

【11 百合ということが知れ渡り】

・

・【11 百合ということが知れ渡り】

・


クサがっているあーしが吹き出しで「①②③②難儀……」と言っている写真が鏡に写されていて、その吹き出しも鏡に映されて反転している。また、その鏡じゃない画面外に『くさい』と文字が何個か書かれている。


・

・

・


 いっそのことクサいモノには蓋、のように、アンタッチャブルな存在になれればいいのに、ホントにこういうことを宣言すると難儀な人生が待っているんだなぁ、と思う。

 あーしとモニカちゃんが二人っきりでいると、教室内でも構わず冷やかされるようになった。しかも、聞こえるような声で何かを言ってくるのは男子よりも女子のほうが多い。男子は遠巻きからクスクス笑ってくる感じで、正直このクラスは陰湿だと思う。というか最初から結構そう思っていた。この高校自体が陰湿。似潟県の県民性は、引っ込み思案で真面目とかよく言われるけども、ホントのところは”空気を読み続けて、そこから外れた人間のことを狂ったように攻撃する”だと思っている。

 ある時、男性教師からモニカちゃんと一緒に空き教室へ呼び出されて、一体何だろうと思っていると、とんでもない説教だった。

「若いうちはそうやって好きにしてもいいが、ちゃんと男性を好きになったほうがいい。女性とは子供を産むという役割があるんだ」

 もう呆れるというかなんというか、適当に「はぁ」と相槌を打っているわけだけども、この男性教師は止まることを知らない。

「女性が子供を産むことにより、社会というものは回っていくんだ。少子化は次の世代のテーマなんだからな」

 何かもう『このまま種付けしてやろうか』という声が聞こえてきそうなくらい息がクサい。モニカちゃんも辟易とした表情をしているのに、まだ止めようとしない。

「異常性欲は出来るだけ断ち切り、早く男性を欲する人間になれたほうが真人間だ」

 かなり危険な思想バラまいていない? むしろ心配になってきた。というか別に性欲でモニカちゃんのこと好きなわけじゃないし。この人、尊敬し合う愛というものをまだ知らないのかな? 薬指に指輪が光っているけども、パートナーのこと中出し専用機ぐらいにしか思っていないのかな?

「まあ高校生くらいじゃ、まだ良い男が見つからないということも分かるけどなっ。近間とくっついて遊んでいるほうが楽しいか、ハッハッハ」

 何笑ってんだ? イカれてる。でも言っていることも分かる。似潟県の男性となんて絶対に付き合いたくない。陰湿だから。まあこのままやり過ごして終わらせるしかないと思っていると、なんとモニカちゃんが口を開いた。

「さっきから何を言っているんですか? 私は好きな人がたまたま同性だっただけです。同性愛者と決めて生きているわけではありません。たった三年間しか一緒にいない人にそんなこと言われる筋合いはありません。私は私が尊敬する人たちと私の大切な人生を語り合います。先生はただの職業教師です。踏み込み過ぎじゃないでしょうか」

 すると男性教師はムッとしてから、

「女がたてつくな!」

 と声を荒らげ、最悪オブ最悪だった。生徒ならまだしも”女”って倫理観が終わっている。まあこの男性教師、去年女子トイレ盗撮騒動が起きた時、女子トイレを盗撮した男子を二週間の停学にしただけで、なあなあで許した張本人だし、もう終わっていて当然なのかもしれない。ちなみにあーしは、主に、その女子トイレを盗撮した男子たちからクスクス笑われている。勿論あーしとモニカちゃんのことを揶揄していないような男子もいるけども、あーしやモニカちゃんをそういう扱いしているのは女子トイレを盗撮した男子たちだ。

 男性教師は締めの言葉も言わず、不機嫌そうに空き教室から出て行った。守備力が低過ぎるし。モニカちゃんは笑顔でこちらを振り向き、

「愛華ちゃん、教室に戻りましょっ」

 と言ってきて、ホントに強い子だなぁ、と尊敬した。

 教室に戻ったとて、女子からも男子からも、ニヤニヤペチャクチャされるだけなんだけども、モニカちゃんと二人でいられるなら平気だ。

 でもあーしは思う。品行方正であるべきなんだろうな、ということを今まで以上に感じている。だから最近は今まで以上に勉学にも力を入れている。今まさにモニカちゃんの家へ行って、モニカちゃんの部屋で、二人っきりで勉強を教えてもらったり、休憩時間に一緒に作詩したりしている。

 しかしながら時折、あーしのような穢れた女子でいいのかな? とは思ってしまう。オンラインカジノして、闇金融から借金していた過去もあって、モニカちゃんには相応しくないんじゃないかな、って。だからって過去を変えることは出来ない。あーしには未来しかないんだから。未来を一生懸命全うして、過去を許してあげられる自分になるしかないから、なんて、心を奮い立てようとしても、やっぱり面持ちは暗くなってしまうもので、憂鬱そうな表情になっていたんだろう、モニカちゃんが、

「またそんな顔になって、どうしたんですか? 愛華ちゃん」

 ここは正直に言うべきだと思って、

「やっぱりあーしさ、過去が穢れているからさ、そんなあーしがモニカちゃんと一緒にいてもいいのかなって、不安なんだ」

「そんな、私だってそんな真面目だけの生活じゃないですよ、金髪ですし」

「それは不良やぶつかりおじさんに絡まれないためでしょ? 前にそう言っていたじゃん」

「うう~ん、まあそうですけども……とにかく! 私も不真面目ですから!」

 あーしはちょっと言うかどうか迷ったけども、

「モニカちゃん、何か具体的なエピソードある?」

 モニカちゃんが黙ってしまった時に、やっぱり言わなきゃ良かったと思った。ちょっとした沈黙後、モニカちゃんが喋り出した。

「具体的なエピソードは、まあ何も無いですけども、でもその、あの、じゃあ」

 と言った時にモニカちゃんは一緒に座って勉強しているあーしのことをハグしながら、

「これから一緒に不真面目になりましょう」

 と言われて、それだけで心臓が爆発しそうになる。

 そうだ、それでいいんだ、モニカちゃんはあーしのことを好いてくれているんだから、それを信じて生きていけばいいだけなんだ。モニカちゃんがあーしのことを嫌いになれば別れればいいし、好きならずっと一緒にいればいいし。ただそれだけ。相手の言葉を額面通り受け取って生きていけば、充分なんだ。

 夕方遅くになってから、近くのスーパー内ではあるけども、そこのゲームセンターで二人で遊んだ。モニカちゃんはUFOキャッチャーが得意らしく、モニカちゃんからお揃いのぬいぐるみをゲットしてもらった。

 モニカちゃんは少し恥ずかしそうに、

「私、ずっと友達がいなくて、ずっとゲームセンターで入り浸っていたから、ぬいぐるみを取るのは簡単なんだよね」

「だからって誰でも簡単に取れるわけじゃないし! モニカちゃん! すごい才能だよ!」

「いやいや、こんなの理論を知っていれば意外と出来るもんだってば」

「じゃあその理論というの教えて! あーしもモニカちゃんくらい取れるようになりたい!」

「まあ理論と言うほど、仰々しいものじゃないんですけども、まずはUFOキャッチャーの爪を見るべきなんです。爪というのは先端の曲がっている部分です」

 あーしは今やっていたUFOキャッチャーの爪を見た。何もしていない待機状態では両方の爪が平行で、ちょっと重なり合っているくらいだ。モニカちゃんはそのUFOキャッチャーの爪を指差しながら、

「このUFOキャッチャーの爪は正常で、これは店側がまだ取らせる気のあるUFOキャッチャーです。だからこそ、設定が少し甘めなんです」

「それって取らせる気のないUFOキャッチャーもあるってことなの?」

「そうです。この爪が斜めで、引っ掛かった部分があったとしても、ずり落ちるように坂になっている爪は本当に取らせる気のないUFOキャッチャーで、爪がそうなっている時点で初心者は基本的にやらないほうがいいです」

「そうだったんだ……爪、ちゃんと見たほうがいいんだね」

「そうです。そこで店側の意志を感じ取ることが出来ますから。あと基本的に握力は全部弱くて、五千円使ったら握力が一時的に強くなるとか、そんなんばっかりなので、そもそもUFOキャッチャーはあまりオススメ出来ません」

「元も子もないし」

 あーしは少し笑ってしまうと、モニカちゃんは大真面目といった感じで、

「でも実際にそうなんです。ゲームセンターで遊ぶならUFOキャッチャー以外のゲームをオススメします。掴んで下に引っ張るヤツや棒を入れて引きずってくるヤツとかは今のところは実力だけでどうにかなりますんで」

「何か、モニカちゃんのUFOキャッチャー指南って、舞江お姉ちゃんのハック方法に似ているね」

 モニカちゃんは吹き出して笑ってから、

「別にサイコパスとかじゃないですっ」

 と頬を膨らませて、本当に可愛かった。

 あーしはモニカちゃんとバイバイして、家に戻ってきて、まずやったことと言えば、モニカちゃんからもらったお揃いのぬいぐるみの写真をすぐにSNSにアップロードした。あまりにも嬉し過ぎて。

『クサがっているあーしが吹き出しで「①②③②難儀……」と言っている写真が鏡に写されていて、その吹き出しも鏡に映されて反転している。また、その鏡じゃない画面外に『くさい』と文字が何個か書かれている』という謎解きの答えは、ギンナン難儀だ。ギンナンナンギと回文になっている。悪臭を放つ、クサい連中は多いけども、モニカちゃんと二人でいれば難儀なことはない。


・

・

・


①(①立)

①(①分)

(①白)

白①

応援が励みになります! バズるためにリプしてくれると嬉しいです! いっぱいコメよろしく!


・

・

・


 SNSはいつもバズるようになり、コメントもリポストも多く、ネットニュースも安定した閲覧数を記録するようになってきた。

 そんな順風満帆なある日、あーしが舞江お姉ちゃんの家で二人きりでいると、舞江お姉ちゃんがあーしにとあることを言ってきた。それは、

「最近性欲を刺激するモノを抑え気味にしてきているのは知ってるよな? ランキングモノも全部嘘だからもう全くやっていなくて」

「それは気付いているよ、それがどうしたの?」

「安定して謎解きと、愛華とモニカの百合営業だけで閲覧数が稼げるようになってきてさ」

「百合営業って言うな、本気でお付き合いしているしさ」

「で、ネットニュースにはバズる方法がまだあるんだけども、それ分かるか? ドーパミンがめっちゃ出るヤツ。これが一番ドーパミンが出るかも」

「方法……いや分かんない。コンテスト受賞報告とか? バズるようになってからすると、さらに褒めてくれるみたいな」

「まあ真逆だな」

 と言った舞江お姉ちゃん真逆って何? と思っていると、舞江お姉ちゃんが、

「正解言うぞ、それは一緒になって怒りたくなるニュースだ」

「あぁ、それはそうかも。でも、そんなニュースなんて方法とかじゃないじゃん、勝手に起きることじゃん」

「それを意図的に作り出して同情を誘うってわけだよ」

「うわっ、舞江お姉ちゃん、久々のちゃんとした、真っ当なサイコパスじゃん」

「だからほら、愛華は最近お気に入りのぬいぐるみがあるだろ? あれを盗まれたというネットニュースを流したいんだよね」

 お気に入りのぬいぐるみ……いや!

「それはダメだよ! モニカちゃんに取ってもらったお揃いのぬいぐるみだから!」

「あーUFOキャッチャーで? そういうストーリーがあるとなお良いな。それにしよう」

「盗まれたと嘘つくために捨てろってことでしょっ? 絶対嫌なんだし!」

「そうじゃない、アタシが半年預かるから。で、半年後、アタシが同じの手に入れたと言ってプレゼントしたことにすればいいからさ。実際はそのまま返すだけな」

「それでも嫌だよ! あーしの今の心の支えなんだから!」

「心の支えはモニカ自身だろ? ぬいぐるみを無くす演技くらいしてくれよ、一緒に怒りたくなるニュースは本当に人気なんだから」

 あーしは渋りに渋ったんだけども、舞江お姉ちゃんは一度サイコパスなことを言い出したら聞いてくれるような人じゃないので、結局モニカちゃんにも了承を得た上で、舞江お姉ちゃんにそのぬいぐるみを渡すことにしたわけだけども、

「舞江お姉ちゃん! 絶対に売らないでね!」

「そんなことはしないって。売って愛華から嫌われるほうが損失だから」

 しっかりそんな損得勘定もしているんだ。いやまあそっちのほうが逆に安心だけども。

 というわけで舞江お姉ちゃんがあーしのぬいぐるみが盗まれたという嘘記事を書くと、そんな“一緒に怒りたくなるニュース”は大バズりした。応援や励ましのコメントもいっぱいついて、若干罪悪感には駆られている。でも全てはバズるために。というか今やっている行動は舞江お姉ちゃんが喫茶店を乗っ取るためにって感じなんだろうけども、ここから喫茶店を乗っ取るルートって存在するの? とは正直思っている。どう考えても、あーしの読者が一緒に怒りたくなるニュースから舞江お姉ちゃんが喫茶店を乗っ取るバタフライエフェクトなんて無いと思うけども。

 それにしてもモニカちゃんが作ってくれたこの謎解き、秀逸だと思っている。

 『①(①立)・①(①分)・(①白)白①。応援が励みになります! バズるにはリプしてくれると嬉しいです! いっぱいコメよろしく!』の答えはもうほぼ書いてある。コメよろしく、つまり米だ。①(①立)は米粒、①(①分)は米粉、(①白)は粕で、白①は白米となる。突然『いっぱいコメよろしく!』と書くと怪しまれるため、先に『応援が励みになります! バズるにはリプしてくれると嬉しいです!』のように、リプライという言葉をリプと表現して、略して言う人だと印象付けてからの『いっぱいコメよろしく!』にすることにより、その”米”だということを隠している。

 モニカちゃんは相変わらず謎解きやウミガメ系の水平思考クイズを作る能力も高く、まあ舞江お姉ちゃんもきっと計画が上手くいっているのだろう。対するあーしは何だか何も無いような気がする。最近は「愛華のエロく見える写真も無くていい」と舞江お姉ちゃんから言われていて、ホントに、ただ文学者アイドルをしているだけだ、と言ってもそんなコンテストで受賞出来るわけじゃないし。最近は勉学も忙しいから。なのにモニカちゃんは両立して、俳句や短歌の受賞も増えているし。あーしばかり何もしていない焦燥感に駆られる。このままでいいんだろうか、いやでもあーしはあーしで頑張るしかなくて。でも頑張るって言ったって……。


・

・

・


ウミガメ系のクイズ。

『真っ赤になった穴を成人が笑顔で食べようとしている』


Q.それは普通のことですか?

A.YES。


Q.性的な行為ですか?

A.NO。


Q.それはおめでたいことですか?

A.部分的にはYES。日常的に食べる人もいます。


Q.男女問わずですか?

A.YES。


Q.比喩ですか?

A.NO。食べようとしているのだから、食材です。


・

・

・


 高校では相変わらず、陰湿な声が聞こえてくる。舞江お姉ちゃんの憶測では”男子からのアプローチが無くなる”みたいなことを言っていたけども、そんなことは無く、むしろ、

「おめぇ言ってこいやぁ」

「バカおもしろれぇことなるかも」

「言え言えってぇ」

 あーしとモニカちゃんが二人並んで席に座っているところへ、男子の集団が徐々に近付いてきた。男子の集団と言っても、大人しいほうの男子の集団じゃなくて、女子トイレを盗撮したほうの男子の集団だ。そのうちの一人が急にデカい声で、

「おい! 愛華! モニカ! 俺が男の気持ち良さを教えてやるよ!」

 と言うと、周りの女子も一緒になって、ドッと笑った。気持ち悪い、これの何が面白いんだよ。

 また別の男子がこう言う。

「チンコ見たことねぇだろ! 見せてやるよ!」

 ブフゥッと吹き出して大爆笑の渦。民度が終わっている。似潟県は民度が終わっているのだ。あーしは立ち上がって文句を言おうとしたその時だった。

「嫌です、もう……」

 あーしは即座にモニカちゃんのほうを見ると、なんとモニカちゃんが涙をボロボロ流していたのだ。涙はすごい速度で落下し、机の端を濡らしていた。

 女子トイレを盗撮したほうの男子たちは舌打ちしてから「冗談だろっ」と言い、そそくさと教室の外へ出て行き、さっきまで笑っていた女子はまるでその男子たちを非難するような声で「泣かせたー」と言った。オマエらだって笑って追い打ちかけていただろ。

 あーしはモニカちゃんの背中をさすって顔を近付けていると、別の方向にいた女子が「ガチ百合」と嘲笑したのが聞こえてきた。もうホントに最悪オブ最悪。

 なんとかモニカちゃんは(きっと)無理して泣き止み、

「大丈夫ですから」

 と言ったんだけども、絶対大丈夫なはずはなく。だからって大声で怒り散らしても、あんま芯に響かないような気がして、もう黙るしか方法が無いんだろうなぁ、と。あれもこれも全て舞江お姉ちゃんのせいだ、とも思わない。誰のせいって言ったら、やっぱり民度の低いこの連中で。いや勿論舞江お姉ちゃんのせいでもあるんだけども。好きくらいは好きにさせてほしい。何でこんなに茶化してくるのだろうか。

 授業&授業で今日の高校は終わり、あーしとモニカちゃんは一緒にまた舞江お姉ちゃんの家へ行った。一応クイズの撮影があるから。

 舞江お姉ちゃんはいつもの感じで、冷蔵庫にある五百ミリリットルのコーラを一人一本渡してくれたわけだけども、あーしはすぐさま、

「舞江お姉ちゃんが百合ってバラしたせいで、高校で女子トイレを盗撮した男子たちとか、嫌な感じのスクールカースト女子たちから嫌なこと言われる」

 と攻撃するトーンで言ってやると、舞江お姉ちゃんは「あー」と言ってから、

「それは一緒に怒りたくなるニュースだな」

 とニヤついたので、さすがに腹が立ち、

「何そのリアクション! 舞江お姉ちゃんのせいで困ってるって言ってんの!」

 と、のっけから怒髪天で荒らげると、舞江お姉ちゃんは手で制止のポーズをとりながら、

「いやいや、まあそうだな、そりゃそうだな、でも一個案があるんだ」

「案とかしゃらくさいんだよ! こっちは人生なの! 案とかのたまってんじゃねぇよ!」

 舞江お姉ちゃんは溜息交じりに、

「いや良い案なのにさ……」

 と言ったところでモニカちゃんが、

「じゃあその案というの、教えてください。愛華ちゃんも良い案だったら採用したらいいと思うんです」

 冷静なモニカちゃんがカッコ良く思えた。あーしは落ち着けるように深呼吸してから、

「その舞江お姉ちゃんの案って何?」

 舞江お姉ちゃんは待ってましたと言わんばかりに、

「それはな! その男子たちやその女子たちへ突撃取材をしてやるんだ! アタシが新聞記者に扮して、その男子たちの内心を抉ったり謝罪させてやったりするわ! まさしくこれこそニュース!」

 そう拳を突き上げた舞江お姉ちゃん。いや待てよ、それはアリかもしれない。それって、

「舞江お姉ちゃんがやってくれるということだよね?」

「勿論。愛華やモニカにとっては危険な現場になるだろうから、アタシ一人が記者に扮してやってやるよ。勿論取材中はスマホを通話にして、愛華やモニカの指示を聞いたり出来るぞ」

 舞江お姉ちゃんはサイコパスだけども、サイコパスの味方はなんて心強いんだ。それとも、こういう展開になることも見越していたのだろうか。まあそんなことはもはやどっちでもいい。あーしとしてはアイツらを成敗してくれれば、それでいいから。あーしは、舞江お姉ちゃんへ、

「女子トイレを盗撮した連中は主に野球部とサッカー部とテニス部だからさ、まだ部活だろうから今から行ってくれる?」

「いいよ、善は急げだな」

 別に善ではないけども。すると舞江お姉ちゃんは速攻でビキニに着替え始めたので、

「いや撮影会すな、高校に行くんじゃないの?」

「だからさ」

 と言いながら上はビキニ、下も中にはビキニを履き、その上からキワキワのホットパンツを履き始めた。あーしは意味が分からず、

「新聞記者に扮するんじゃないの?」

 舞江お姉ちゃんはあーしの疑問に疑問符で返した。

「ソイツら、どうせスケベだろ?」

 あーしは頷きながら、

「多分そうだけども、それがえっと、何なの?」

「高校生なんざ、アタシのようなピチピチの二十六歳にでも平気でオバサンって言うだろ? でもおっぱいを露出していれば”おっぱい”って思うから、こっちの話を聞かずに通り過ぎることって無くなるんだよね。男子高校生は普段から女子高生を見慣れているから若さには敏感だけども、おっぱいを露出している人のカテゴリーは乏しいから、そっちの枠に入って釘付けにさせる」

 何その理論。そうかもしれんけども、と思っているとモニカちゃんが笑ってから、

「面白い理論ですねっ、やっぱり舞江さんは面白いですっ」

 と屈託なく言うと、舞江お姉ちゃんは、

「おうおう笑え笑え、変なヤツのことを笑うのは正常だからな。アタシも変だと分かっているよ。でも男子高校生には有効な手段なんだ。要はあれと一緒だよ、芸能人を生で見ると容姿が整って見える理論とな。テレビで見ているというカテゴリーに入れると、もっと絶世の美男美女がいるから劣って見えるけども、生で見るのカテゴリーに入ると、実はこれくらい整っている人も稀となる、みたいな」

 何か舞江お姉ちゃんが言っていたことと合っているのか合っていないのか、それぞれ理論として独立しているような気もするけども、そんなことは大なり小なりだ。舞江お姉ちゃんはビキニにホットパンツ、黒いマスクに目元はあえて派手めというか軽めのメイクを施した。普段入れないラメとか入れている。

 あーしは舞江お姉ちゃんに一応ある分のクラスメイトの写真を見せたり、クラスメイトの一部の男子たちが女子トイレを盗撮していた話をちゃんとした。

「じゃっ、言ってくるから。その時になったらスマホ通話にするから」

 そう言って颯爽と舞江お姉ちゃんは家から出て行った。あまりにも行動が早過ぎる。そこらがサイコパスの所以のような気がする。あーしとモニカちゃんは舞江お姉ちゃんの家で勉強やコンテストの意見交換をしていると、舞江お姉ちゃんから通話となり、スマホから舞江お姉ちゃんの声が聞こえてきた。

「すみません、黒田愛華と夏井モニカと同じクラスメイトを探しているんですが」

「あ! 俺俺ぇええっへっへ」

 多分舞江お姉ちゃんの胸元を見て笑いながらそう言った声が聞こえてきた。

「取材の者なのですが、あの二人が百合って本当ですか?」

「あぁもう、めっちゃキスしてるしぃ」

 なんて適当に受け答えるんだ、キスなんてしていない。教室でするはずがない。手だって別に握っていないのに。すぐにそう肉欲と繋げようとしてくる男子がホントに嫌だ。精神的に尊敬し合っているだけなのに。

「えっと、それは証拠でもあるんですか?」

 舞江お姉ちゃんは慎重な物言いで喋っている。対する男子は警戒ゆるゆるって感じで、

「いやもう音が耳に録音されているんでっ」

 多分近くにいる他の男子たちが、

「えー写真見せろよー」

「そんな音立ててんの? えっろ」

「すげぇー興奮するぅー」

 舞江お姉ちゃんは静かなトーンで、

「それに対して貴方は何か言ったりしていますか?」

「えっとねー、男を教えてやるって感じで、迫ってあげたりしてるわぁー」

 迫って”あげたり”っ? 日本語の意味が全く分からない。何そのサービスでしてあげているみたいな言葉。こっちがサービスで対応してあげてんでしょ。

 すると舞江お姉ちゃんは急に詰問するような声になり、

「それ、セクハラじゃないですか?」

「え……いやぁ……」

 舞江お姉ちゃんが豹変したことに言葉が詰まる男子。舞江お姉ちゃんは続ける。

「そういうのって普通に犯罪ですよ? 大丈夫ですか? 訴えたら負けますよ?」

「いや別に訴えたりしないっしょ」

「彼女らは既に自分たちで稼いでいたり、そもそも地元スポーツ新聞社と馴染みというわけですから、そちらから費用を受け取って訴える可能性も全然ありますよ?」

「でも俺、あの、未成年だしぃ」

「民事裁判は未成年でも訴えることが出来ます。まあ未成年の場合は親権者などの法定代理人と争う形になりますので、まあなんでしょうか、クラスメイトの女子にセクハラかましたからお母さん法定代理人してよって言ってくださいね」

 他の男子が小声で「ダセェ」と言った声が聞こえてきた。

 ずっと喋っていた男子が多分、

「もういいわ。行こうぜ」

 と言ったところで、舞江お姉ちゃんが怒涛の喋りを開始する。

「何でダサい貴方がこの場の男子を仕切っているんですか? え? 貴方がこの場の大将ですか? そんなダサいのに。というか周りの男子さんたちもこの男子をトップに据えているんですか? ダサい集団ですね。平気でセクハラするような人が人望ある部活ってヤバくないですか? というかこの人、前に女子トイレを盗撮していたらしいんですけども、普通部活動も活動停止とかになるんじゃないんですか? 警察とかには言わなかったんですか? つまり高校が隠蔽したということですよね、それも言っていいんでしょうか、それとも女子トイレを盗撮したのはガセなんですか? でもセクハラは本当のようで。こちらも録音していますんで」

「録音!」

 と声を上げた男子と、他の男子が、

「いや、コイツが、あの、トップとかじゃないです……」

 と言うと口々に、

「えっと、はい、別にトップじゃないです」

「普通に対等というか」

 舞江お姉ちゃんは言葉を止めない。

「じゃあこの男子は、トップじゃないのに”もういいわ行こうぜ”と自分がダサいだけなのに仕切ったんですか? 何か腹立ちませんでしたか? ダサいのに仕切りやがったって。それともあれですか? この男子から女子トイレを盗撮した画像とかおこぼれをもらっていて逆らえなかったとかですか? そういうダサい集団として記事にしていいですか?」

 他の男子と思われる人が、

「ダセェと思うよ! コイツのことぉ! 女子にセクハラなんておれのクラスじゃ考えられないし、〇〇科の男子たちがまとまって女子トイレの盗撮したらしいじゃねぇか! 普通科のおれらも内情知られた他校のヤツからイジられるしよぉ! 〇〇科なんて一番学力低いんだから足引っ張るなや!」

 すると、ずっと責められていた多分クラスメイトの男子が、

「なんだよ! オマエ俺より野球下手だろ!」

「クソ! 何が野球下手だよ! オマエは犯罪者だろ! 野球上手ければ上っていう世界じゃねぇよ! この高校は! そういうのは甲子園常連高校で言えよ!」

「オマエはその弱い高校でもベンチに入ってねぇんだよ! 雑魚!」

「何コイツ! ずっと野球の話してる! オマエの人間性がクソって話なのに!」

「雑魚がイキがってんじゃねぇよ!」

「犯罪者が怒鳴ってんじゃねぇよ!」

 どうやら喧嘩をし始めたらしい。舞江お姉ちゃんの声は聞こえないけども、ずっとその場にいるみたいだ。だいぶ言い合いがヒートアップしてきたところで、舞江お姉ちゃんが少しだけ口を挟んだ。

「では女子トイレを盗撮していたことは事実なんですね」

 すると雑魚と言われていたほうの男子が、

「あーそうだよ! 〇〇とか! 〇〇とかさぁ! つーか〇〇科の男子全員じゃねっ? 全員キモっ!」

 あーしとモニカちゃんは小声で「〇〇くんや〇〇くんはそのことには絡んでいなかったよね」みたいな話をしていた。

 舞江お姉ちゃんの声で「取材終わりました。有難うございます」と言うと、雑魚と言われていた男子が、

「サッカー部とか! テニス部にも行ってくれよ! 女子トイレを盗撮していたことニュースにしてくれよ!」

 根源の男子が、

「テメェ! 自分がベンチ入りしてねぇからって、部活動停止になっていいのかよ!」

「別に甲子園常連高校とかじゃねぇんだからいいだろ! 全ての部活二回戦敗退クラスのくせに部活程度で本気になるなよ!」

 ちょっと経って、あの男子の言い合いが聞こえなくなったところで、舞江お姉ちゃんから「他の部活も同じようにやるので」とこちらに声を投げかけてから、また取材へ行ったみたいだ。この感じだと女子に突撃はしないみたいだけども、まあいいかと思った。ある程度、溜飲は下がったし。

 まあ穴があったら入りたいと思うだろうなぁ、とは思う。なんせその後、舞江お姉ちゃんは全てを地元スポーツ新聞社に話し、ネットニュースだけではなくて、ホントのテレビのほうのニュースでも報道されて、高校は一週間休学となった。

 ウミガメ系のクイズである『真っ赤になった穴を成人が笑顔で食べようとしている』の答えはレンコンの梅酢漬け。レンコンのように将来を見通せるような、換気の良い高校にこれからなってくれるといいけども。勿論ネットニュースのほうはより過激に強く、あーしとモニカちゃんの読者が一緒に怒りたくなるニュース&舞江お姉ちゃんのジャーナリズムで相当バズった。


・

・

・

 

ウミガメ系のクイズ。

『露出した種子を口にして、みんな笑顔』

付属の画像には、舞江お姉ちゃんが練乳を舌に乗っけている写真を掲載している。


Q.それは卑猥な話ですか?

A.NO。


Q.みんなとは老若男女ですか?

A.基本はYES。それが嫌いでなければ。


Q.それは食べ物ですか?

A.YES。


Q.種は口から出しますか?

A.NO。


・

・

・


 練乳を舌に乗っけて、まるでソレを乗せているように見える写真、あーしも撮るのかなと思っていると、舞江お姉ちゃんが、

「エロい人にはエロく見える写真、一応まだアタシはやるけども、もう愛華には一切やらせないから。愛華の写真を使う時も、出来るだけ全然エロく見えない、普通のカッコイイ女性の服にするから。もう愛華、あとモニカでも、いやらしい目で見られるようなことは何もさせないから」

 と宣言した。あーしとモニカを百合だと言った反省からなのか。それとも何か将来を見通してそんなことを言っているのか。あーしには分からなかった。

 ちょっとずつ変わり始めたあーしの人生。もう悪事は働かない。そう心に誓って、一歩一歩、歩み続ける。

 『露出した種子を口にして、みんな笑顔』の正解はイチゴ。イチゴは実の周りに種が付いているので。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。