ここを拠点としよう
ここに来るまで散々な目にあったが、そのおかげで研究施設を得られた。
田舎で、人に被害が出る可能性が低い場所、うん、いい研究所じゃないか。
ひとまず少し睡眠をとってから、ここを探検しよう。
起きると、ボロボロのカーテンから光が入り込んできた。太陽の位置から見て、今は昼間だろう。
探検するにはうってつけの時刻だ。
まず、二階を探索してみよう。
扉を開け、廊下を見渡す。どうやら部屋がもう一つあるようだ。
その扉を開けようとすると、少し手が震えた。ああ、持病を治さなければ…。
中は、劣化したカーペットのようなものと血痕のようなものが広がっていた。そして、ビン玉だけが綺麗に磨き上げられていた。何か魔法でもかけられているのだろうか。見てみよう。
それに手を伸ばす。すると、縄が劣化していたようで、ぶつりと切れてしまった。
急いで手を出し、それを受け止めた。受け止めたはいいが、どこに置いておけばいいのだろうか…。
部屋を見渡すと、ベッドがあった。そこに俺はこれを置くことにした。布団もかけておいた。
一階は荒れていた。割れた花瓶の破片が飛び散っているし、ティーセットも砕け散っていたから。
リビングには、かつての弾力を失い色あせたソファーと足が一本欠けたテーブル、そしていくつかの低い、クッションがついた椅子が置いてあった。
それを横目に夫婦の部屋へと入る。
やはり血痕があった。それと、絵。つたない絵だった。子どもが描いたような絵を壁に貼っていた。子ども思いなのだろう。俺だったらもっとうまく描ける。
割れた花瓶を踏みしめながらリビングを歩く。弾力を失い、色もあせたソファーに座った。
なんだかひどく疲れた。何か口に入れたい気分だ。
キッチンの戸棚を漁るが、何も出てこない。パンの1つも出てこなかった。これは、魚を釣りに行く必要があるな。
そういえば、キッチンの奥の収納スペースに釣り竿があったな。それを使おう。
家から出てしばらくしたところに川があった。やはり海が近いのか潮の香りがする。
そこで釣りを数分して気づいた。餌をつけていなかった。
何か餌を探してきた方がいいな。でないと何も釣れない。
川から引きあげ、少し歩いたところだった。
茂みの奥に何かがいるような気がする。
そちらへ目を凝らす。当然ながら茂みにさえぎられて何も見えない。
なので、魔法を使った。
見えた。狼だ。しかも、群れ。
俺は走った。そして、狼の頭を殴った。狼は昏倒した。それでも殴った。赤い液体が出た。
群れの中の一匹が俺に向かってきたので、殴った。狼は吹っ飛んで行った。俺もそちらへ行き、頭を踏み潰す。
腕にかみつこうとしてきた別の狼は首に魔法の縄をかけた。そして、空へそいつを吹き飛ばし、縄で地面にたたきつけた。ほかの狼は逃げようとしたが、魔法で障壁を作っておいたので逃げれなかった。
だが、わざと一匹だけ逃がした。俺にかかった呪いをそいつにかけて、逃がした。
さて、アイツは後で追うとして、今はコイツらを片付けよう。
かかと落としで狼を昏倒させ、それを踏み台にして上に上がる。とびかかってきた狼の腹を殴り、穴をあけた。
狼たちの中から出てきた不快な物体がへばりついて来た。それでも殴った。もう服は液体できぐちょぐちょだった。
気づけば、地面は狼たちが流した液体で濡れていた。俺もそれで汚れていた。不快だ。服を洗いたい。キッチンの奥…収納部屋に洗濯道具が確か入っていたはずだ。あとでそれを借りよう。
だがその前に、あの狼を追う必要がある。
魔力の流れに集中すると、あの狼がどこにいるのかわかった。…というか、恐らくその狼の見えている景色が見えている。
そこには顔に大きな傷のついた狼がいた。あれが群れのボスだ。
収納部屋に剣を取りに行こう。
茂みからやつの様子をうかがう。ボスから狼が離れたところを見計らって、剣でそいつを切った。
ボスは驚いたようにこちらを見つめた。
そして、森の奥へと走って行った。逃がすものか。
剣は、さやから抜けない。前の持ち主はロクな手入れの仕方をしていなかったと思われる。だが、あのボスを倒すのには十分だ。
ボスを追っていると、大きな崖の下を奴は下って行った。その下は、海が広がっていた。
俺は魔法使いだ。その崖を下るくらい、造作もない。
いや、魔法など使わなくてもいいほど、造作もない。
崖の下へと俺は一歩、踏み出した。
浮遊感に襲われる。俺は剣を無理やり抜いた。さびていて、刀身はボロボロだった。衝撃には到底耐えられそうにない。だが、あのボスを倒すくらいの耐久力まだありそうに見えた。
重力に任せて、その件をボスの首にかける。ギロチンのように綺麗にはいかなかった。
気道に行く手前でその剣は折れてしまった。
俺はボスを浮かせ、崖の上へと放り投げた。そして、崖の突起に足をかけて、俺も崖の上に行った。
狼は、苦しそうに息をしていた。
俺は、ボスを蹴った。何度も蹴った。殺さないように蹴った。痛みを感じるように蹴った。殴りもしたかもしれない。
そんなことをしていたら、ボスは息絶えた。それを木につるした。
釣りをする気は失せてしまった。もう、今はただひたすら寝たい。家に帰りたい。
家に帰る途中で、奇妙な場所を見つけた。雑草が生えないように魔法がかかっている開けた場所だった。
とにかく疲れているので、足を半ば引きずりつつも歩いていたら、何かにつまずいた。
足元を見ると、くるぶしほどの石がそこにあった。その傍には、ドライフラワーのようなものが置いてあった。これにも魔法がかけられており、劣化しにくいようにされていた。
家に帰ったはいいが、1つ、問題が生じた。臭すぎて眠れない。
というかこの状態で寝たくない。だが、洗濯をする気力もわかなければ、裸で寝るのも気乗りしない。
そうだ、換気しよう。
そう思い、窓のカギに手をかけた。
開けた窓からは、潮風が入り込んできた。




