第8話「はじめての朝」
月のひげ亭で迎えた朝。
窓から差し込む朝の光で、ルゥは目を覚ました。
「……朝にゃ」
ふかふかのベッドから、ゆっくりと起き上がる。
昨日までなら、目が覚めた瞬間に、
「ここはどこにゃ?」
と、不安になっていたかもしれない。
でも、今日は違った。
「ここ、月のひげ亭にゃ……」
ルゥは小さく笑った。
異世界に来て初めて――
安心して迎えた朝だった。
部屋を出ると、階下からいい匂いがしてくる。
「この匂い……朝ごはんにゃ!」
ルゥは階段を駆け下りた。
そこでは、バルドが朝食の準備をしていた。
「おう! 起きたか!」
「おはようにゃ!」
「よく眠れたか?」
「ぐっすりにゃ!」
バルドは嬉しそうに笑った。
「それなら、しっかり食え。今日も冒険だろ?」
「もちろんにゃ!」
テーブルに並べられた温かな朝食を前に、ルゥの目が輝く。
「いただきますにゃ!」
ぱくっ。
「おいしいにゃ!」
朝の静かな宿に、ルゥの嬉しそうな声が響いた。
朝食を食べ終えると、ルゥはバルドに声をかけた。
「ごちそうさまにゃ!」
「おう。よく食ったな」
すると、バルドが宿代のことを伝えた。
「それじゃあ、昨日からの宿代と飯代で30Gだ」
「30Gにゃ!」
ルゥは財布から30Gを取り出し、バルドに渡した。
「はいにゃ!」
「確かに。ありがとうな」
支払いを終えると、ルゥは残ったお金を確認した。
90G。
昨日までは、50G、70Gと報酬をもらえることが嬉しかった。
けれど今は、少し考え方が変わっていた。
「宿に泊まったり、ご飯を食べたりすると……お金が必要にゃ」
ルゥは手元のお金を見つめる。
冒険するには、食べることも大切。
休むことも大切。
そして、それにはお金がいる。
「もっと依頼を頑張らないとにゃ!」
すると、バルドが笑った。
「そういうことだ。無理はするなよ」
「分かったにゃ!」
ルゥは元気よく返事をした。
宿の入口まで来ると、ルゥは振り返った。
「行ってくるにゃ!」
「おう。気をつけて行ってこい!」
その言葉が、なんだか嬉しかった。
まるで――
帰ってくる場所が、ちゃんとあるみたいだった。
ルゥは笑顔で宿をあとにした。
エルニアの朝の街を歩きながら、ルゥは考える。
昨日までは、知らない世界を歩いているだけだった。
でも、今は違う。
眠る場所がある。
帰る場所がある。
そして――
自分でお金を稼いで、冒険を続けていく。
「これからも、ここで頑張るにゃ!」
やがて、冒険者ギルドが見えてきた。
ルゥは扉の前で立ち止まり、胸を張る。
「今日も依頼を探すにゃ!」
カラン、カラン――。
扉を開けると、掲示板には今日もたくさんの依頼書が並んでいた。
薬草採取。
荷物運び。
街のお手伝い。
これまでに受けたことのある依頼も並んでいる。
けれど――
その中に、一枚。
ルゥがまだ受けたことのない依頼書があった。
「……これ、なんにゃ?」
ルゥの目が、その依頼書に釘付けになる。
昨日までとは少し違う、新しい依頼。
新しい挑戦。
そして――
新しい冒険の予感。
「これ……やってみたいにゃ!」
ルゥの小さな冒険は、また一歩前へ進み始めた。
――第8話・おわり。
次回予告
月のひげ亭で朝を迎えたルゥ。
次の依頼は、誰かの大切なものを探すことにゃ。
次回、第9話「なくしものを探して」




