第6話「はじめての荷物運び」
初めてのクエストを終え、50Gの報酬を手に入れたルゥ。
次に向かったのは――冒険者ギルドの依頼掲示板だった。
「次は、どれにするにゃ?」
掲示板には、薬草採取、荷物運び、街のお手伝い。
Fランクのルゥでも受けられる依頼が、いくつも並んでいる。
一枚ずつ眺めていると――
「これにするにゃ!」
ルゥが選んだのは、荷物運びの依頼だった。
依頼内容は、ギルドから街のお店まで荷物を届けること。
「これなら、ルゥにもできそうにゃ!」
依頼書を受付へ持っていく。
「この依頼、お願いしますにゃ!」
「はい。では、この荷物をお店まで届けてくださいね」
受付のミーナから渡されたのは、小さな木箱だった。
「大切な荷物ですから、気をつけて運んでくださいね」
「分かったにゃ!」
ルゥは木箱を両手でしっかり抱えた。
そして――元気よくギルドを出発した。
「てくてく、てくてく……」
街の通りを歩いていく。
この街へ来たばかりの頃は、見るものすべてが知らないものだった。
建物も。
道も。
行き交う冒険者たちも。
だけど――
「この道、前にも通ったにゃ!」
昨日より少しだけ、街が身近に感じられる。
「お店は……こっちにゃ!」
依頼書を確認しながら、目的のお店へ向かっていく。
そのとき――
「……あっ!」
道にあった小さな段差に、ルゥの足が引っかかった。
「にゃっ!?」
身体がぐらりと傾く。
抱えていた木箱も、大きく揺れた。
「落としちゃダメにゃ!」
ルゥはとっさに、木箱をぎゅっと抱きしめた。
なんとか転ばずに踏みとどまる。
「……ふぅ。危なかったにゃ」
木箱を確認する。
傷はない。
「よかったにゃ!」
ルゥは、ほっと胸をなで下ろした。
ただ荷物を運ぶだけ。
そう思っていたけれど――
預かったものを無事に届ける。
それも冒険者の大切な仕事なのかもしれない。
ルゥは木箱を抱え直した。
「今度は、もっと気をつけるにゃ!」
そして、再び歩き始めた。
しばらく進むと――
「あったにゃ!」
依頼書に書かれていたお店が、目の前に見えてきた。
ルゥは急いで店先へ向かった。
「こんにちはにゃ! 荷物を届けにきたにゃ!」
「まあ、ありがとう!」
お店の猫が、木箱を受け取る。
「確かに受け取りました。助かったよ」
「依頼、完了にゃ!」
ルゥは嬉しそうに胸を張った。
無事に届けられた。
それだけのことなのに――
ルゥの胸は、なんだか少し誇らしかった。
ギルドへ戻り、受付で依頼完了の報告をする。
「お疲れさまでした。今回の報酬です」
渡された袋を開けると――
70G。
「70Gにゃ!」
第5話でもらった50Gと合わせると、ルゥの所持金は――
120G。
「お金が増えたにゃ!」
50Gから120Gへ。
まだまだ大きな金額ではない。
でも――
このお金は、誰かからもらったものではない。
自分で依頼を受けて、自分の力で働いて手に入れたお金だった。
ルゥは小さな袋を、大事そうに抱えた。
「……ルゥ、ちゃんと冒険者になってきたにゃ」
ほんの少しだけ、そんな気がした。
元の世界へ帰る方法は、まだ見つかっていない。
この世界のことも、まだ何も分からない。
それでも――
薬草を集めた。
荷物を届けた。
そして、自分でお金を稼いだ。
小さなことだけど、ルゥにできることは少しずつ増えている。
「もっといろんなこと、できるようになりたいにゃ!」
ルゥは冒険者証をぎゅっと握った。
Fランク冒険者。
まだ始まったばかり。
だからこそ――
これから、もっとたくさんのことを知りたい。
もっと遠くへ行ってみたい。
そしていつか――
元の世界へ帰る方法も見つけたい。
「もっと冒険するにゃ!」
ルゥは再び、依頼掲示板の前へ向かった。
たくさんの依頼書が並んでいる。
薬草採取。
荷物運び。
街のお手伝い。
そして、その中に――
「……あれ?」
ルゥが足を止めた。
今まで見た依頼とは、少し違う依頼書が一枚。
「これ、なんにゃ?」
ルゥはその依頼書を、じっと見つめた。
小さな冒険者が見つけた、新しい依頼。
それは――
次の冒険への入口だった。
ルゥの異世界冒険は、まだ始まったばかり。
今日もまた、小さな一歩を踏み出していく。
――第6話・おわり。
次回予告
荷物運びのクエストを終えたルゥ。
でも、冒険者として暮らすには――寝る場所も必要です。
次回、第7話「はじめての宿」




