第4話「はじめてのクエスト」
冒険者ギルドの掲示板を前に、ルゥは依頼書をじっと見つめていた。
掲示板には、新人冒険者でも受けられる依頼がいくつも並んでいる。
薬草採取。
荷物運び。
街のお手伝い。
どれもルゥにとっては、初めて見る仕事ばかりだった。
「うーん……どれにするにゃ?」
しばらく悩んだあと、ルゥの目に一枚の依頼書が留まった。
『薬草採取――薬草を5本集めてください』
「これなら、ルゥにもできそうにゃ!」
ルゥはその依頼書を手に取り、受付へ向かった。
「この依頼を受けたいにゃ!」
受付のミーナは、にっこり笑って説明してくれた。
「街の近くにある森で、薬草を5本集めてきてください。採取したら、この袋に入れて持ってきてくださいね」
「分かったにゃ!」
小さな採取袋を受け取る。
その瞬間――
ルゥの胸が、少しだけ高鳴った。
これが、冒険者になって初めて受けるクエスト。
ルゥは袋を大事に抱えて、ギルドを出た。
目指すのは、街の近くにある森。
石畳の道を歩いていくと、少しずつ街の喧騒が遠ざかっていく。
やがて――
木々の間から、緑いっぱいの森が見えてきた。
「わぁ……! 森が見えてきたにゃ!」
ルゥは嬉しそうに走り出す。
けれど、森の入口まで来ると、少しだけ足を止めた。
知らない場所。
初めてのクエスト。
「……ちゃんと薬草、見つけられるかにゃ?」
小さな不安が、胸の中に浮かんだ。
それでも――
「よし! やってみるにゃ!」
ルゥは勇気を出して、森の中へ入っていった。
森の中には、木漏れ日が優しく差し込んでいた。
鳥の声。
葉っぱが風に揺れる音。
街とは違う、静かな空気。
ルゥは地面をじっと見ながら歩いていく。
「薬草……薬草……」
けれど、なかなか見つからない。
「どこにあるにゃ……?」
草むらを覗き込み、木の根元を探し、岩の周りも見てみる。
すると――
「あったにゃ!」
木の根元に、小さな緑色の葉っぱが生えていた。
普通の草とは少し違う。
葉っぱの周りが、淡く光っている。
「これ……薬草かにゃ?」
ルゥがそっと前足を伸ばす。
そして、葉っぱを摘んだ瞬間――
ふわっ……。
薬草が小さく光った。
「わぁ……!」
ルゥの青い瞳が、キラキラと輝く。
「これが薬草にゃ!」
大切そうに採取袋へ入れる。
薬草、1本。
「あと4本にゃ!」
それからルゥは、森の中を一生懸命探した。
木の陰。
草むら。
小さな岩のそば。
見つけるたびに、採取袋へ一つずつ入れていく。
2本。
「あと3本!」
3本。
「あと2本にゃ!」
そして――
「あと1本……!」
残りは、たった一本。
ルゥは辺りを見回した。
けれど、なかなか見つからない。
「どこにあるにゃ……?」
少し歩いても見つからない。
来た道を戻って探してみる。
それでも見つからない。
「うーん……」
ルゥは困った顔で考えた。
そのとき――
木漏れ日の向こうに、小さな光が見えた。
「……あれ?」
近づいてみると――
大きな木の根元に、淡く光る薬草が一株だけ生えていた。
「……あったにゃ!」
ルゥは嬉しそうに駆け寄った。
そっと摘み取る。
ふわっ……。
最後の薬草も、優しい光を放った。
「やったにゃ!」
ルゥは採取袋を開いて、中を確認する。
薬草、5本。
「全部そろったにゃ!」
思わず両前足を上げて喜ぶ。
「やったにゃ! 初めてのクエスト、成功にゃ!」
ほんの小さな依頼。
薬草を5本集めただけ。
けれど――
ルゥにとっては、特別な出来事だった。
何も分からないこの世界で、今日、初めて自分の力で何かを成し遂げた。
自分で選んで、自分の力で、一つのことを成し遂げた。
その小さな成功が、ルゥの胸に少しだけ自信を与えてくれた。
「……ルゥにも、できたにゃ」
そう呟いたルゥの顔には、嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。
採取袋を大事に抱える。
「さあ、ギルドに戻って報告するにゃ!」
ルゥは森の出口へ向かって走り出した。
その足取りは、森へ入ってきたときよりも少しだけ軽かった。
まだまだ小さな一歩。
だけど――
その一歩は、確かに「冒険者ルゥ」の一歩だった。
ルゥの冒険は、まだ始まったばかり。
――第4話・おわり。
次回予告
初めてのクエストを無事に終えたルゥ。
冒険者として、初めての報酬を受け取ることに――!
次回、第5話「はじめての報酬」




