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こねこの異世界冒険記  作者: ポンデリング
第2章「こねこ冒険者、次の一歩へ」

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第19話「はじめての週払い」

【異世界生活9日目】


【朝――月のひげ亭】

朝。

窓から差し込む光で、ルゥは目を覚ました。

「……朝にゃ」

昨日は、初めてスキル『見切り』を使った。

相手の動きを、ほんの少しだけ先に読むことができた。

でも、何でも分かるわけじゃない。

「もっと練習するにゃ」

そうつぶやいて、ルゥは部屋を出た。

一階へ降りると、バルドが朝食を用意していた。

「おう、起きたかルゥ。朝飯できてるぞ」

「いただきますにゃ!」

パンとスープを食べ終えると、バルドがふと思い出したように口を開いた。

「そういやルゥ。ここに泊まるようになって、もう一週間くらいになるな」

「一週間……にゃ?」

ルゥは少し驚いた。

異世界に来てから、もうそんなに時間が経っていた。

バルドは笑いながら続ける。

「最初の一泊分はもう払ってるだろ。これからは、まとめて払ってくれりゃいい」

「まとめてにゃ?」

「そうだ。最初の一泊分とは別に、昨日までの七日分だな」

一日分は、夕食・宿泊・翌朝の朝食を合わせて30G。

30G × 7日=210G。

ルゥは冒険者カードを確認する。

所持金――740G。

「210G……払うにゃ!」

ルゥは210Gをバルドへ渡した。

740G → 530G


「これでまた、しばらく安心して泊まれるな」

「よろしくお願いしますにゃ!」

バルドは笑って、ルゥの頭をぽんと撫でた。

「おう。好きなだけ冒険して、ちゃんと帰ってこい」

その言葉に、ルゥの耳がぴくっと動いた。

「……帰ってくる場所、にゃ」

その言葉が、なんだか嬉しかった。


【今日の依頼】

エルニア冒険者ギルド。

「おはようございます、ルゥちゃん」

「おはようにゃ!」

ミーナが笑顔で迎えてくれる。

「昨日は『見切り』をちゃんと使えたみたいですね」

「うんにゃ! でも、まだちょっとしか分からないにゃ」

「それで十分ですよ。少しずつ慣れていきましょう」

ルゥは依頼掲示板を見る。

今日選んだのは――

『街道沿いの道に落ちている木の枝を片付けてほしい』

という、簡単な依頼だった。

「今日はこれにするにゃ!」

「はい。気をつけて行ってきてくださいね」

「行ってくるにゃ!」


【小さな依頼】

街道沿いの道を歩きながら、ルゥは落ちている枝を探していく。

「こっちにあるにゃ!」

一本。

「こっちにもあるにゃ!」

二本。

少し進むと、道の真ん中近くに大きな枝が落ちていた。

「これは……邪魔になるにゃ」

ルゥは周囲を確認してから、枝を道の端へ運ぶ。

昨日の『見切り』を使うような危険はない。

それでも、ルゥは周りをよく見ながら、一つずつ丁寧に片付けていく。

やがて、街道はすっきりした。

「これで終わりにゃ!」


ルゥはギルドへ戻り、依頼完了を報告する。

「お疲れさまでした、ルゥちゃん」

ミーナから依頼報酬を受け取る。

報酬は30G。

ルゥは冒険者カードを確認した。

530G → 560G。

ルゥは冒険者カードをしまい、満足そうに尻尾を揺らした。

大きな戦いがあったわけじゃない。

レベルが上がったわけでもない。

それでも――

「今日もちゃんと冒険者できたにゃ!」

ルゥは嬉しそうに笑った。


【帰る場所】

夕方。

ルゥは月のひげ亭へ戻ってきた。

扉を開ける。

「ただいまにゃ!」

「おう、おかえり!」

バルドの声が返ってくる。

その瞬間、ルゥはふと立ち止まった。

「……ただいま」

自然に出てきた言葉だった。

異世界に来たばかりの頃。

ルゥには、帰る場所がなかった。

でも、今は違う。

冒険者ギルドにはミーナがいる。

そして月のひげ亭には、バルドがいる。

冒険へ出れば、帰ってこられる場所がある。


「……ここ、ルゥの帰る場所にゃ」

バルドは少し照れたように笑った。

「そう思ってくれりゃ十分だ」

ルゥは嬉しそうに尻尾を揺らした。

元の世界へ帰る方法は、まだ分からない。

それでも――

今は、ここでいい。

今日も一日、ちゃんと冒険して。

ちゃんと帰ってきた。

「明日は、どんな依頼があるかにゃ?」

ルゥは笑顔で、夕食の席へ向かった。


小さなこねこの冒険は、今日も一歩ずつ続いていく。

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