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こねこの異世界冒険記  作者: ポンデリング
第2章「こねこ冒険者、次の一歩へ」

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16/25

第16話「はじめての魔物対決」

【異世界生活6日目】


朝。

月のひげ亭で朝ごはんを食べ終えたルゥは、冒険者証をじっと見つめていた。

そこに刻まれているのは――

Lv3。


昨日までのルゥとは、ほんの少し違う。

HPも、攻撃力も、防御力も、素早さも。

これまでの小さな冒険が、ちゃんと力になっている。

「レベルが上がったにゃ……!」

ルゥは冒険者証をしまう。

そして、小さく胸を張った。

「もっと、できるようになりたいにゃ!」

今日もルゥは、冒険者ギルドへ向かった。

ギルドに入ると、ミーナが笑顔で迎えてくれた。

「ルゥさん、おはようございます!」

「おはようにゃ!」

ルゥは依頼掲示板を眺める。

薬草採取。

荷物運び。

街の手伝い。

その中で、ひとつの依頼が目に留まった。

『街道沿いに現れる小型魔物を追い払ってほしい』


「これ、やってみたいにゃ!」

ルゥが依頼書を持っていくと、ミーナは少し真剣な表情になった。

「今回の相手は、グレイファングです」

「グレイファング……?」

「灰色の毛をした小型の魔物です。ルゥさんより少し大きくて、素早く飛びかかってきます」

ミーナは依頼書を指差しながら続けた。

「でも、倒す必要はありません」

「追い払えばいいにゃ?」

「はい。危ないと思ったら、無理に戦わず距離を取ってくださいね」

「わかったにゃ!」

ルゥは元気よくうなずいた。

今日は少しだけ、自分の力を試してみたい。

でも――

無理をしないことも、冒険者の大切な仕事。

そのことを、ルゥは少しずつ覚え始めていた。


街道での遭遇

エルニアを出て、街道へ向かう。

街の外は静かだった。

ルゥは歩きながら、周囲を注意深く観察する。

右。

左。

草むら。

木の陰。

以前よりも、自然に周りを確認できるようになっていた。

そのとき――

ガサッ。


「……にゃ?」

草むらが揺れた。

ルゥが足を止める。

次の瞬間。

灰色の影が飛び出した。

鋭い牙。

鋭い爪。

黄金色の瞳。

「グレイファングにゃ!」

グレイファングが地面を蹴った。

バッ!


「にゃっ!」

ルゥは横へ飛び退く。

爪が、すぐ目の前を通り過ぎた。

「速いにゃ……!」

グレイファングはすぐに振り返る。

そして、もう一度――。

バッ!

「今度も……!」

ルゥは相手の足を見る。

飛びかかる直前、後ろ足に力を込めている。

その瞬間――

「こっちにゃ!」

ルゥは攻撃をかわした。

Lv3の力


グレイファングが再び向かってくる。

今度は、ルゥも一歩だけ踏み込んだ。

「えいっ!」

前足を振る。

その爪が、グレイファングの体にかすかに触れた。

「……当たったにゃ!」

ルゥ自身が驚いた。

体が軽い。

前よりも、力が出る。

これが――

Lv3の力。


「これなら……!」

ルゥは、もう一度構える。

しかし――

グレイファングが低く身を沈めた。

「……!」

次の瞬間。

バッ!


グレイファングが飛びかかる。

「にゃっ!」

ルゥはギリギリで横へ飛ぶ。

その爪が、ルゥの毛先をかすめた。

「……危なかったにゃ」

ルゥは少し距離を取る。

グレイファングは、まだこちらを狙っている。

鋭い牙。

鋭い爪。

素早い動き。

ルゥは考えた。

強くなった。

確かに、前よりできることは増えている。

でも――

正面から戦うのは、まだ危ない。

「……やっぱり、戦い方を変えるにゃ!」

ルゥは街道から離れる方向へ走り出した。

戦わないという選択


「こっちにゃ!」

グレイファングが追ってくる。

ルゥは振り返りながら、相手との距離を確認する。

近すぎない。

遠すぎない。

そして、街道から少しずつ離れていく。

「もうちょっとにゃ……!」

グレイファングが飛びかかる。

ルゥは横へかわした。

その勢いのまま、グレイファングは森の入口近くまで進んでいく。

ルゥはそこで足を止めた。

「ここなら……大丈夫にゃ」

グレイファングも立ち止まる。

しばらくルゥを見つめたあと――

「グルル……」

やがて、森の中へ走っていった。

「……行ったにゃ」

ルゥは、ほっと息を吐いた。

そして街道を振り返る。

誰も傷ついていない。

街道も安全になった。

「これで依頼完了にゃ!」


また一歩、冒険者へ

ルゥはエルニアへ戻った。

冒険者ギルドで報告すると、ミーナが嬉しそうに笑う。

「グレイファングを倒さずに、街道から離れた場所へ誘導したんですね」

「そうにゃ!」

「すごいですよ、ルゥさん」

ミーナは冒険者証を確認する。

「危険な相手だと判断して、戦い方を変えられた。それも立派な冒険者の判断です」

「にゃ……!」

ルゥの胸が、少しだけ熱くなった。

今回の報酬は――

70G。

所持金は、

490G → 560Gになった。


帰り道。

エルニアの街並みを眺めながら、ルゥは今日のことを思い返していた。

第10話。

ツノウサギの動きを見て、攻撃を避けた。

第13話。

相手をよく見て、落ち着いて行動した。

第14話。

荷車を守るため、魔物を安全な場所へ誘導した。

そして今日。

少しだけ攻撃を試して――

今の自分の力では、まだ正面から戦うのは危険だと判断した。

「強くなったからって、なんでもできるわけじゃないにゃ」

ルゥは小さく笑った。

「でも……前より、できることは増えたにゃ!」

Lv3になったこと。

そして、それだけではない。

これまでの冒険で積み重ねてきた経験が、少しずつルゥの判断力を育てていた。

戦う。

逃げる。

避ける。

誘導する。

その中から――

今の自分にできる、一番安全な方法を選ぶ。


それも、冒険者としての力なのだ。

「次は、もっとできるようになるにゃ!」

夕暮れのエルニアを、ルゥは元気に歩いていく。

まだFランク。

まだ小さなこねこ冒険者。

それでも――


ルゥは確実に、冒険者として成長していた。

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