第15話「もう一度、薬草採取」
【異世界生活5日目】
朝。
月のひげ亭で朝ごはんを食べながら、ルゥは昨日のことを思い出していた。
荷車を守るために魔物を誘導したこと。
戦わなくても、依頼を達成できたこと。
「ルゥ、ちょっと冒険者らしくなった気がするにゃ!」
そう思うと、今日も何か挑戦したくなってきた。
「もっと、いろんなことができるようになりたいにゃ!」
ルゥは元気よくギルドへ向かった。
冒険者ギルドの依頼掲示板。
今日もたくさんの依頼が並んでいる。
薬草採取、荷物運び、街の見回り――。
その中で、ルゥは一枚の依頼書に目を止めた。
『薬草を採取してほしい』
「これ……前にもやったにゃ!」
初めて受けた依頼。
あの頃は、薬草を見つけるだけで精一杯だった。
でも、今なら――。
「もう一回、やってみるにゃ!」
ルゥは依頼書を持って、ミーナのところへ向かった。
「ミーナ、この依頼をやりたいにゃ!」
「薬草採取ですね」
ミーナは依頼書を確認してから、少しだけ付け加えた。
「今回の薬草採取は、前より少しだけ難しいですよ」
「難しいにゃ?」
「森の中には、よく似た植物があります。間違えないように、特徴をよく確認してくださいね」
「わかったにゃ!」
ルゥは胸を張った。
今までの冒険で覚えたことを、ちゃんと使ってみたい。
ルゥは街の近くの森へ向かった。
以前にも来たことがある森。
けれど、今日は見え方が少し違った。
「あっ、あれは……」
白い花を見つける。
ルゥは近づいて、じっと観察した。
花の形。
葉っぱの形。
茎の色。
「……違うにゃ」
以前なら、見つけたと思ったらすぐ採っていたかもしれない。
でも今日は、慌てない。
ミーナから聞いた特徴を思い出しながら、ひとつずつ確認していく。
そして――。
「あったにゃ!」
木漏れ日の下。
小さな白い花が咲いている。
「葉っぱも、茎も……これにゃ!」
ルゥは慎重に一本を採った。
「一本目にゃ!」
少し先へ進む。
「二本目にゃ!」
そして――。
「三本目にゃ!」
「三本そろったにゃ!」
ルゥは嬉しそうに尻尾を揺らした。
そのとき――。
ガサッ。
「……にゃ?」
森の奥から、何かの音が聞こえた。
ルゥはすぐに足を止める。
昨日の護衛のときと同じだ。
まず、周りを見る。
右。
左。
木の陰。
草むら。
「……何かいるにゃ?」
しばらく待つ。
けれど、何も出てこない。
ルゥは無理に近づかなかった。
「依頼は終わったにゃ。今日は帰るにゃ!」
危険かもしれない場所へ、必要以上に近づかない。
それも、昨日覚えたことだった。
ルゥは来た道を確認しながら、森を後にした。
ギルドへ戻ると、ミーナが薬草を確認する。
「はい。三本とも、ちゃんと依頼の薬草です!」
「やったにゃ!」
今回の報酬は――60G。
ルゥの所持金は、
430G → 490Gになった。
「前より上手にできたにゃ!」
「そうですね」
ミーナは嬉しそうに笑う。
「前は薬草を見つけることに夢中でした。でも今回は、ちゃんと特徴を確認してから採っていましたね」
「にゃ!」
ルゥは胸を張った。
すると――。
手元の冒険者証が、淡く光り始めた。
「……にゃ?」
カードから、ふわっとした光が広がる。
「これは……!」
ミーナが目を見開く。
「ルゥさん。もしかして――」
光が一段と強くなった。
ピカッ!
「レベルアップです!」
「レベルアップ……にゃ?」
ルゥの目が大きくなる。
これまでの冒険。
薬草採取。
荷物運び。
なくしもの探し。
ツノウサギへの対処。
北の森の見回り。
道標の確認。
そして、昨日の護衛。
一つ一つの経験が、少しずつ積み重なっていた。
「ルゥ、また強くなったにゃ!」
冒険者証には、新しい数字が刻まれていた。
Lv2 → Lv3
そして、身体にも小さな変化が現れる。
HPは、
12 → 14
攻撃力は、
2 → 3
防御力は、
1 → 2
素早さは、
2 → 3
魔力と運は、前と変わらなかった。
大きな力ではない。
でも――。
昨日までのルゥにはなかった、新しい一歩だった。
「すごい……!」
ミーナも嬉しそうに笑う。
「これまでの冒険が、ちゃんとルゥさんの力になったんですね」
ルゥは冒険者証を大切そうに見つめた。
「もっと頑張るにゃ!」
ギルドを出ると、エルニアの街に暖かな風が吹いていた。
ルゥは空を見上げる。
まだ知らない場所も。
まだ見たことのない魔物も。
まだ受けたことのない依頼も。
たくさんある。
でも、もう最初の頃のルゥではない。
少しずつ経験して。
少しずつ考えて。
少しずつ強くなっている。
「次は、どんな冒険が待ってるかにゃ?」
ルゥは尻尾を揺らしながら、月のひげ亭へ向かって歩き出した。
こねこの冒険は、まだ始まったばかり。
そして今日――
ルゥは、また一歩。
冒険者として前へ進んだ。




