第12話「北の森の小さな光」
【異世界生活3日目】
朝の冒険者ギルド。
レベル2になったルゥは、今日も掲示板の前で依頼を探していた。
「今日は、どれにするにゃ?」
いくつもの依頼書を見比べていると――
「……あれ?」
一枚の依頼書が目に留まった。
『北の森・見回り依頼』
「北の森……?」
ルゥは依頼書をじっと見る。
北の森は、エルニアの北側に広がる森。
これまで行った「街の近くの森」よりも、少し奥へ入ることになる。
「森なら、前にも行ったことあるにゃ! でも、北の森は初めてにゃ!」
そこへミーナがやってきた。
「その依頼が気になったんですか?」
「うんにゃ!」
ミーナは依頼書を確認する。
「最近、北の森で小さな魔物が目撃されているそうです」
「魔物……!」
ルゥの耳がピンッと立つ。
「危ない依頼にゃ?」
「それほど危険ではありません。ただ、森の奥へ入りすぎないようにしてくださいね」
「分かったにゃ!」
ルゥは依頼書を手に取った。
「これ、やってみるにゃ!」
エルニアを出て、北へ向かう。
しばらく歩くと――
大きな木々が見えてきた。
「ここが……北の森にゃ」
森の入口から中を覗く。
街の近くの森とは、少し雰囲気が違っていた。
木々が高く、差し込む光も少ない。
「ちょっとだけ、ドキドキするにゃ……」
それでもルゥは、一歩ずつ森の中へ進んでいった。
しばらく歩いていると――
「……あれ?」
地面に、小さな足跡が残っている。
「魔物の足跡かにゃ?」
ルゥはしゃがんで確認する。
小さい。
でも――
ツノウサギの足跡とは違う。
「なんの足跡にゃ?」
ルゥは周囲を見回した。
けれど、何もいない。
「……分からないにゃ」
ルゥは、その足跡を覚えておくことにして、さらに森を進んだ。
すると――
木の根元に、小さな青い光が見えた。
「……にゃ?」
ルゥが近づく。
そこにあったのは、淡い青色に光る小さな石だった。
「きれいにゃ……」
ルゥはそっと前足を伸ばす。
その瞬間――
ピカッ。
石の光が、少しだけ強くなった。
「にゃっ!?」
ルゥは驚いて前足を引っ込める。
そして、石をじっと見つめた。
「……なんで光ったにゃ?」
不思議だった。
この世界に来てから、こんな石を見たことはない。
それなのに――
この光を見ていると、なぜか少し懐かしい気がした。
「……知ってる気がするにゃ」
でも、思い出せない。
「なんでにゃ……?」
ルゥは首をかしげた。
そのとき――
ガサッ。
森の奥から音がした。
「……!」
ルゥの耳がピンと立つ。
「誰かいるにゃ?」
木々の向こうを見る。
でも、何もいない。
もう一度、耳を澄ます。
――シーン。
森は静まり返っていた。
「……気のせいかにゃ?」
ルゥはもう一度、青い石を見る。
しばらく考えてから――
「これは、ここに置いておくにゃ」
依頼は森の見回り。
勝手に何かを持ち帰るのは、よくない。
それに――
「また、ここに来ればいいにゃ」
ルゥは石をそのままにして、森の入口へ戻ることにした。
冒険者ギルドへ戻ると、ミーナが笑顔で迎えてくれた。
「おかえりなさい、ルゥくん」
「北の森、ちゃんと見回ってきたにゃ!」
「お疲れさまでした」
ルゥは森で見つけたものを話した。
小さな足跡。
そして――
青く光る、不思議な石。
「青い石ですか?」
ミーナは少し考える。
「北の森には、まだ私たちが知らないものもたくさんありますからね」
「そうなのかにゃ……」
「気になるなら、今度は無理をしない範囲で調べてみるのもいいかもしれませんね」
「分かったにゃ!」
ミーナは優しく笑った。
今回の見回り依頼の報酬は――
60G。
現在の所持金は200G。
今回の報酬を合わせて――
260G。
「260Gになったにゃ!」
ルゥは嬉しそうに冒険者証を見つめた。
薬草を集めた。
荷物を届けた。
なくしものを見つけた。
初めて魔物と向き合った。
そして今日は――
初めて、北の森へ足を踏み入れた。
小さな依頼。
小さな発見。
でも――
北の森には、まだルゥの知らないものがたくさんある。
ルゥは北の森の方を振り返った。
「また行ってみるにゃ!」
エルニアでの冒険は、少しずつ広がっていく。
そして――
あの小さな青い光もまた、森の中で静かに輝いていた。
その光が、いつかルゥの「帰る場所」につながることを、今はまだ誰も知らない。
――第12話・おわり。
第12話「北の森の小さな光」
次章予告
第1章を終えたルゥ。
小さなこねこの冒険は、ここから新しい一歩へ――。
次章「こねこ冒険者、次の一歩へ」




