第11話「はじめてのレベルアップ」
【異世界生活3日目】
翌朝。
月のひげ亭の窓から、やわらかな朝の光が差し込んでいた。
「……朝にゃ」
ルゥはベッドから起き上がる。
昨日は、初めて魔物と向き合った。
ツノウサギの突進をかわして、畑から追い払うことができた。
「昨日は、ちょっと怖かったにゃ……」
でも――
「ちゃんと頑張ったにゃ!」
ルゥは小さな胸を張った。
そのときだった。
なんだか、いつもより体が軽い。
「……あれ?」
ルゥは自分の前足を見つめた。
「なんだか、変な感じにゃ」
一階へ降りると、バルドが朝食を用意していた。
「おう! おはよう!」
「おはようにゃ!」
温かな朝食を食べ終えると、ルゥは冒険者証を取り出した。
昨日までと変わらない冒険者証。
――のはずだった。
「……にゃ?」
冒険者証が、ほんのりと光り始める。
「なんにゃ!?」
カードに表示された数字が、ゆっくりと変わっていく。
レベル:1
その数字が――
レベル:2
に変わった。
「…………」
ルゥは目を丸くする。
そして――
「レベルが上がったにゃー!!」
月のひげ亭に、ルゥの嬉しそうな声が響いた。
「レベルが上がったのか?」
バルドが驚いた顔をする。
「そうにゃ! 2になったにゃ!」
「ははは! やったじゃねえか!」
ルゥは冒険者証を何度も見直す。
昨日までレベル1だった。
それが今は――
レベル2。
たったひとつ数字が増えただけ。
でも、ルゥにとっては大きな変化だった。
「これって、強くなったってことにゃ?」
「ああ」
バルドが頷く。
「冒険して、経験を積んだ証だ」
「経験……」
ルゥは昨日までの冒険を思い出す。
薬草を集めた。
荷物を届けた。
なくしものを見つけた。
そして昨日――
初めて魔物と向き合った。
「全部、少しずつ頑張ったからにゃ……?」
「ああ。小さな経験でも、積み重なれば力になる」
その言葉を聞いて、
ルゥの目が輝いた。
冒険者ギルドへ向かうと、
ミーナが受付で迎えてくれた。
「おはようございます、ルゥくん」
「ミーナさん! 見てほしいにゃ!」
ルゥが冒険者証を差し出す。
ミーナはカードを見ると――
「あら!」
嬉しそうに微笑んだ。
「ルゥくん、レベル2になったんですね!」
「そうにゃ!」
「おめでとうございます」
「強くなったにゃ?」
「ええ。少しずつですが、ちゃんと成長していますよ」
ミーナがカードを確認する。
レベルアップによって、
ルゥの能力も少しだけ上がっていた。
HP:12/12
攻撃力:2
その他の能力は変わらない。
「わぁ……!」
ルゥは目を輝かせる。
昨日までより、
ほんの少しだけ強くなった。
それだけなのに――
自分の力が増えたことが、
とても嬉しかった。
「もっと強くなったら、もっといろんな場所へ行けるにゃ?」
「もちろんです」
ミーナは優しく答える。
「でも、レベルが上がったからといって、無理は禁物ですよ」
「分かったにゃ!」
ルゥは元気よく頷いた。
ギルドの掲示板を見る。
昨日までと同じように、
たくさんの依頼書が並んでいる。
薬草採取。
荷物運び。
街のお手伝い。
そして――
今までより少し難しそうな依頼も見えている。
ルゥは掲示板を見上げた。
「レベル2になったから……」
小さな前足をぎゅっと握る。
「次は、どんな冒険が待ってるにゃ?」
まだFランク。
まだまだ知らないことばかり。
それでも――
昨日より、ほんの少し強くなった。
ルゥは、初めて自分の成長を実感していた。
「もっと冒険するにゃ!」
ルゥは新しい依頼を探し始めた。
小さなこねこの冒険は――
また、新しい一日へ進んでいく。
――第11話・おわり。
次回予告
ついにレベルアップしたルゥ。
少し成長したルゥが、次に向かう場所は――?
次回、第12話「北の森の小さな光」




