第10話「はじめての魔物」
【異世界生活2日目】
朝の冒険者ギルド。
前の依頼を終えたルゥは、
掲示板の前で次の依頼を探していた。
「今日は、どれにするにゃ?」
いくつもの依頼書を見比べていると――
「……あれ?」
一枚の依頼書が目に留まった。
『畑を荒らすツノウサギを追い払ってほしい』
「ツノウサギ……?」
聞いたことのない名前だった。
すると、後ろからミーナが声をかけてきた。
「その依頼が気になるんですか?」
「うんにゃ。ツノウサギって、どんな魔物にゃ?」
ミーナは優しく説明してくれた。
「小さな魔物ですよ。普段は草を食べて、おとなしくしています」
「おとなしい魔物にゃ?」
「ええ。でも、驚かせたり追い詰めたりすると、角で突いてくるので注意してくださいね」
ルゥは依頼書をもう一度見る。
「畑を荒らしてるなら、追い払ってあげるにゃ!」
「無理はしないでくださいね」
「分かったにゃ!」
こうしてルゥは、
初めての魔物に関わる依頼を受けた。
ギルドを出たルゥは、
依頼主の畑へ向かった。
畑には、いくつもの野菜が植えられている。
「ここが依頼の場所にゃ」
周りを見回す。
すると――
「……あっ!」
野菜の葉っぱが、
ところどころ食べられている。
「本当に荒らされてるにゃ……」
ルゥがしゃがんで畑を調べていると――
ガサッ。
「にゃっ!?」
近くの草むらが揺れた。
ルゥが振り向く。
すると――
ぴょんっ!
小さなウサギが飛び出してきた。
額には、一本の小さな角。
「ツノウサギにゃ!」
ツノウサギはルゥを見ると、
ぴくっと耳を動かした。
「……かわいいにゃ」
ルゥが一歩近づく。
すると――
ツノウサギが身を低くした。
「……?」
次の瞬間。
ダッ!!
「にゃっ!?」
ツノウサギが、
ものすごい勢いで突進してきた!
ルゥは慌てて横へ飛ぶ。
ドンッ!
角が地面に突き刺さった。
「にゃ……!」
ルゥの心臓が、ドキドキする。
「びっくりしたにゃ……!」
ツノウサギは角を抜くと、
もう一度こちらを向いた。
「また来るにゃ!」
ダッ!!
今度はルゥも、じっと相手を見る。
「よく見れば……動きが分かるにゃ!」
ツノウサギが近づいてくる。
ギリギリまで引きつけて――
ひらりっ。
ルゥは横へ飛んだ。
ツノウサギはそのまま走り抜ける。
「今にゃ!」
ルゥは畑の反対側へ回り込み、
ツノウサギの進む方向を先回りする。
「こっちはダメにゃ!」
ツノウサギが止まる。
「そっちもダメにゃ!」
ルゥは少しずつ、
ツノウサギを畑の外へ誘導していく。
するとツノウサギは――
「ピョン!」
畑から離れて、
森の方向へ逃げていった。
「逃げたにゃ!」
ルゥはしばらくその姿を見送った。
そして――
「もう畑に来ちゃダメにゃ!」
ツノウサギの姿が見えなくなったことを確認すると、
ルゥは畑へ戻った。
「これで、もう大丈夫にゃ!」
依頼主の猫に報告すると、
嬉しそうな顔でルゥを迎えてくれた。
「ありがとう!
これで畑を荒らされずに済みます」
「よかったにゃ!」
大きな戦いではなかった。
ツノウサギを倒したわけでもない。
それでも――
初めて魔物と向き合い、
自分の力で問題を解決した。
ルゥにとっては、
大きな一歩だった。
冒険者ギルドへ戻ると、
ミーナが笑顔で迎えてくれた。
「おかえりなさい、ルゥくん」
「ちゃんと追い払ったにゃ!」
「それは立派です。
初めての魔物だったのに、よく頑張りましたね」
「ちょっと怖かったにゃ……」
「怖いと思えることも大切ですよ」
ミーナは優しく笑った。
「無理をせず、自分にできる方法で対処する。
それも冒険者に必要なことです」
「分かったにゃ!」
ミーナから報酬を受け取る。
70G。
「70Gにゃ!」
現在の所持金は130G。
今回の報酬を合わせて――
200G。
「200Gになったにゃ!」
ルゥは嬉しそうに冒険者証を見つめた。
薬草を集めた。
荷物を届けた。
なくしものを見つけた。
そして今日――
初めて魔物と向き合った。
「もっといろんなこと、できるようになりたいにゃ!」
その夜。
月のひげ亭に戻ったルゥは、
ベッドの上で今日のことを思い出していた。
「ツノウサギ……初めてだったにゃ」
怖かった。
でも――
ちゃんと向き合えた。
「明日は、もっと頑張るにゃ……」
ルゥは小さく笑って、
目を閉じた。
まだLv.1。
まだFランク。
でも――
今日の冒険で、
ルゥの中には確かな経験が積み重なっていた。
そして、その経験は――
もうすぐ、ルゥ自身を変えることになる。
――第10話・おわり。
次回予告
初めて魔物と向き合ったルゥ。
その経験は、ルゥ自身にも変化をもたらして――。
次回、第11話「はじめてのレベルアップ」




