第3話:彼氏が消えると、推しが現れる
1:コラボイベント
ある日の昼休み。
教室の空気が、やけに騒がしかった。
「見た!? ルミナちゃんのコラボ!!」
「駅前のアニメイトの上だって!」
「期間限定メニューらしいよ!」
(……ん?)
俺——水瀬奏は、スマホから顔を上げた。
嫌な予感がする。
ものすごく。
教室の反対側を、視線だけで確認する。
星宮あかりが、スマホ画面を食い入るように見ていた。
その目が、みるみる輝いていく。
(やめてくれ)
(頼む)
(こっち見ないでくれ)
「奏くん!!」
来た。
あかりが、ものすごい勢いでこちらへ向かってくる。
机の角をぎりぎりかわして、直線距離で。
目が輝いている。
危険な時の目だ。
「今週末!! ルミナちゃんのコラボイベントがあります!!」
「……そうか」
「行きましょう!!」
「なんで確定なんだよ」
「彼氏ですよね?」
「それ便利ワードだと思ってない?」
「思ってます!」
即答だった。
(チッ……)
あかりはスマホ画面を突き出してくる。
《天音ルミナ×Cafe Stellar》期間限定コラボ開催!
描き下ろしイラスト。
限定グッズ。
録り下ろし店内ボイス。
(……うわ、マジで始まるのか)
正直、聞いてはいた。
事務所側が進めていた案件だ。
だが俺は「録り下ろしボイスを提出したら終わり」くらいにしか思っていなかった。
(現地に行くことになるとは聞いてない)
「奏くん、絶対楽しいですよ!」
「お前がだろ」
「もちろんです!」
「俺を巻き込むな」
「でも奏くんもファンなんですよね?」
(その設定まだ生きてたのか)
あかりがさらにスクロールする。
描き下ろしのルミナ。
白と水色のカフェ衣装に星型ピン。
ふわっとしたエプロン。
ファンの財布が爆発不可避なデザインだ。
「かわいすぎません!?」
「まぁ……」
「“まぁ”じゃないですよ!!」
「いや、俺こういうの詳しくないし」
「嘘です。奏くん絶対オタク適性あります」
(あるよ。中の人だからな)
俺はため息をついて、スマホを裏返した。
「……考えておく」
「本当に!?」
「約束はしてない」
「でも考えてくれるんですよね!?」
「……うるさい」
「やった!!」
(何がやったなんだ)
こうして俺は、なす術もなく自分のコラボイベントにオフで行くことになった。
2:イベント当日
土曜日。
駅前は、人が多かった。
普段の土曜よりも、明らかに。
イベント会場のビルには、巨大なルミナの広告が貼り出されていた。
『あなたの心にログイン♡』
(帰りたい……)
「奏くん!! 見てください!!」
あかりは既にテンションが限界突破していた。
「広告でっっっっっっっか!!!!」
「近い近い。人にぶつかるぞ」
「うわぁ……実在してる……」
(実在してるよ。隣見てみ?)
会場入口には、等身大パネル。
コラボメニューの写真。
グッズ購入列。
完全にオタクの集うイベントだった。
「整理券はこちらでーす!」
「グッズ列最後尾こちら!」
「コースター交換お願いしまーす!」
スタッフの声が飛び交う中、あかりは完全に水を得た魚だった。
「奏くん見て!! 等身大!!」
等身大パネルの前でスマホを構える。
「写真撮ってください!!」
「……はいはい」
カシャ。
画面には満面の笑みのあかりと、ルミナの等身大パネルが並んでいる。
(なんなんだこの辱めは……)
しかもパネルのイラストのルミナが、妙にリアルに描写されていて——
(担当絵師、気合い入りすぎだろ)
「次これ!!」
「まだあるのか」
「当然です!!」
次はアクリルスタンドの棚。
「かわいい〜〜〜!!」
「種類多いな……」
「このSDイラスト神では!?」
(担当絵師がガチ勢だったからな。締め切りギリギリだったけど……)
危うく口に出しそうになって、飲み込む。
ヒヤッとした。
グッズ購入を終えたあかりは、両手に袋を提げながら上機嫌だった。
「奏くんは何も買わないんですか?」
「いい」
「ルミナちゃんのファンなのに?」
「……飾る場所ない」
「保存用に買えばいいじゃないですか!」
「……考えておく」
「前にもそれ言ってましたよ?」
(マジでうるさい)
「あ、缶バッジ交換してきます! ちょっと待ってて!」
あかりが交換スペースへ駆けていく。
俺はその場で、ぼんやりと会場を眺めた。
自分の名前が書かれた看板。
自分のアバターが描かれたパネル。
自分の声で作られた店内BGM——
(……変な感じだな)
こうして”外側”から見ると、天音ルミナがまるで別の存在みたいだ。
俺が動かしているはずなのに。
俺が声を当てているはずなのに。
ここではルミナが独立して存在していて、俺は客の一人として会場を歩いている。
(……こういう感覚、初めてかもな)
「奏くん!! 見て!! 当たり引いた!!」
あかりが袋を振り回しながら戻ってきた。
缶バッジを見せてくる。
キラキラのホログラム仕様。
(ああ、それ限定版か)
「いいな」
「でしょ!! 運持ってますね、私!」
「……まぁな」
あかりは缶バッジを大事そうにケースにしまいながら、嬉しそうに笑った。
その横顔を、俺はつい見てしまった。
(……楽しそうだな)
純粋に、楽しそうだ。
探偵みたいな顔じゃなくて。
俺を観察してるときの目でもなくて。
ただ——好きなものの前に立っている顔。
(……悪くない)
思った瞬間、俺は視線を逸らした。
(何を考えてるんだ、俺……)
3:食事のひと時
カフェ店内に入ると、BGMが聞こえてくる。
ルミナの「歌ってみた」だ。
そして——
『来てくれてありがと〜♡ 今日はルミナのお店へようこそ!』
店内ボイス。
自分の声が、四方八方から降ってくる。
(…………)
地獄だ。
「はぁ……耳が幸せ……」
あかりは恍惚としていた。
「この空間、一生いられる……」
(俺は5分が限界だ)
席へ案内される。
コラボメニューの紙が置かれていた。
ルミナのきらきら星空パンケーキ
夜空のログインソーダ
ふわふわおやすみボイスラテ
(メニュー考えたやつ、絶対楽しんで作っただろ)
「奏くん何頼みます?」
「……コーヒー」
「また!?」
「こういう店で冒険しない派」
「人生損してますよ!」
「あかりが好きなの頼んでみろよ」
「じゃあ星空パンケーキにします!」
あかりはメニューを閉じ、スタッフを呼んだ。
注文を終えると、また写真を撮り始める。
店内。
メニュー。
卓上の特典カード。
内装のルミナパネル。
(……徹底してるな)
俺はコーヒーをすすりながら、会場を流し見した。
お客はほぼ満席だ。
ほとんどが女性客で、グッズを広げたり、メニューを撮影したりしている。
こんなに多くの人が来てくれているのか、と——なんとなく、胸がじーんとした。
(……このイベント、やってよかったかもな)
「奏くん、ぼーっとしてますよ」
「……してない」
「してますよ。なんか感慨深そうな顔で」
「コーヒーが体に染みてただけだ」
「ふふ」
あかりが、少しだけ笑った。
注文した料理が来るまでの間。
あかりがふと、口を開いた。
「ルミナちゃんって、どんな人だと思います?」
「……どんな、って」
「画面の中の話じゃなくて。中の人がどんな人か、ってこと」
(…………)
「想像したことないのか?」
「あります。でも奏くんはどう思うか聞きたいんです」
俺はしばらく考えるふりをした。
「……穏やかな人じゃないか」
「穏やか?」
「声が安定してるから。あとコメント拾う時、テンションが落ち着いてる」
「配信ちゃんと見てるじゃないですか」
「……まぁな」
「他には?」
「意外と計算高い」
「え?」
「スパチャの読み方とか、コメントの選び方とか。感情的に見えて、ちゃんと考えてる」
(我ながら自演乙)
あかりは少し驚いたような顔をした。
「……鋭いですね」
「そうか?」
「そういうの、普通は気づかないですよ。奏くん、ほんとにただのファンなんですか?」
「……ただのファンじゃなきゃ何だよ」
「何でしょうね〜」
あかりはコーヒーカップを両手で持ち、じっと俺を見た。
その目が——少しだけ、探偵の目になっている。
(あ、やばい)
「ルミナちゃんのこと、好き?」
「……推してるって言っただろ」
「好きかどうか聞いてるんです」
「……同じだろ」
「違いますよ」
あかりは、静かに言った。
「推すのと、好きなのは、違うと思います」
「…………」
「私は——」
そこで、あかりは少し間を置いた。
「推してる、と思います。ルミナちゃんのことは」
「……そうか」
「でも、好きなのは——」
「……なんだ」
あかりは、コーヒーカップから目を上げた。
「まだ、わからないです」
その言葉の意味を、俺は一瞬考えた。
でも、その答えを出す前に——
「お待たせしましたー! 星空パンケーキでーす!」
スタッフが料理を持ってきた。
あかりの目が、瞬時に輝く。
「わぁ!!!」
(……救われた)
俺は心の底から、そのパンケーキに感謝した。
4:トラブル発生
その時だった。
店内モニターが、突然ブラックアウトした。
「……え?」
BGMが止まる。
ざわつき。
数秒後。
館内アナウンスも沈黙した。
「ちょ、止まった!?」
「え、バグ?」
「演出じゃないの?」
空気が変わる。
さっきまでの“楽しいイベント空間”が、一気に不穏になる。
スタッフが奥へ走っていく。
「サーバー応答ありません!」
「バックアップ切り替えも死んでます!」
「音声素材開けません!」
(……最悪だ)
俺は反射的に状況を理解した。
今日の目玉企画——“ルミナが来場客を迎えるアナウンス演出”。
その中核システムが完全に落ちている。
しかも土曜夕方。
客は満席。
SNS拡散速度も最悪のタイミングだ。
周囲では既に、
「え、これ中止?」
「せっかく来たのに……」
「運営グダってない?」
そんな声が出始めている。
(まずい)
この空気は、一度冷えると終わる。
オタクイベントは熱量で成立している。
空気が死ぬと、全部死ぬ。
「大丈夫かな……」
あかりが不安そうに周囲を見渡す。
俺は意を決して、立ち上がった。
「奏くん?」
あかりが首を傾げる。
「……トイレ」
「え?」
「すぐ戻る」
返事を待たずに、足早に店の奥へ向かった。
バックヤードに続くドアを開け、関係者のもとに向かう。
すると、部屋から運営スタッフが飛び出してくる。
顔面蒼白。
そして——俺を見た瞬間、固まった。
「っ……!」
目が合う。
向こうも察した。
「ル…… ルミナ—— 水瀬さん!?」
スタッフは一瞬迷い——次の瞬間、俺の腕を掴んだ。
「お願いです!!」
小声だった。
でも必死だった。
「もう5分と持たないんです!!」
「は?」
「今から遠隔接続しても復旧に40分って言われて……! 録音素材への切り替えもできなくて!」
「だからって——」
「このままだとイベント止まります!!」
その瞬間。
店内のざわめきが、一段と大きくなって聞こえてくる。
「え、返金とかある?」
「なんか運営グダグダじゃない?」
「録り下ろし演出目当てだったのに……」
スタッフの顔色がさらに悪くなる。
「お願いします……!」
その目は、本気だった。
心が壊れる寸前の目。
(……どうすりゃいい)
俺は奥歯を噛んだ。
本来、こういう現場介入は契約外だ。
演者が表に出るリスクも高い。
バレたら終わる。
でも——
モニターの向こうで、ルミナのパネルを撮っていた女の子が、少し残念そうに笑った。
「まぁ仕方ないかぁ……」という顔。
その顔を見た瞬間。
(……それは嫌だな)
と思ってしまった。
ここまで来てくれた人たちに、「来なきゃよかった」と思われるのは嫌だった。
俺は深く息を吐く。
「……マイクどこ」
スタッフが、勢いよく顔を上げた。
「えっ」
「貸せって言ってる」
「っ、はい!!」
スタッフが全力で駆け出す。
やがて小さな部屋へと通される。
パイプ椅子と、スタッフ用のモニター。
ヘッドセットを受け取って装着する。
(状況は最悪だが、やるしかない)
俺は小さく目を閉じた。
(切り替えろ)
ここから先は、水瀬奏じゃない。
空気を変える。
人を安心させる。
“会いに来てよかった”と思わせる。
それが——
天音ルミナの仕事だ。
息を緩める。
共鳴の位置を、上に移す。
声帯を、そっと絞る。
「……みんな〜! 待たせちゃってごめんね♡」
その瞬間——
会場から、歓声が聞こえた。
モニター越しに、お客さんが沸いているのが分かる。
(……よし)
「機材さんがちょっと拗ねちゃったみたいで〜♡」
「えっ生!?」
「リアルタイム!?」
「ルミナぁぁぁ!!!」
「でも大丈夫! ルミナがなんとかしちゃいます♡」
(……落ち着け。いつも通りやれ)
会場の空気を上げていく。
モニターに映るお客の反応を、目の端で見ながら——
(来てくれてよかったな)
本当に、そう思った。
5:あかりの違和感
「うわっ、生!?」
「リアルタイム!?」
店内が一気に沸いた。
あかりも思わず声を上げた。
「えっ!! ルミナちゃん、今繋いでるの!?」
モニターの中で、ルミナが笑っている。
自然だ。
本当に、その場にいるみたい。
テンポが、いつもの配信と変わらない。
「すごい……本当に、プロだ……」
あかりは、思わず呟いた。
でも——
(奏くん……?)
まだ戻ってきていない。
トイレにしては、長い。
その時。
隣の席のお客が立ち上がろうとして、バッグの紐がテーブルに引っかかった。
トレイが、ぐらりと傾く。
「あっ——」
その瞬間。
モニターのルミナが反応した。
『危ないっ!』
周囲のお客が笑った。
「ルミナちゃん見てた!?」
「すごいタイミング!」
でも。
あかりは、笑えなかった。
(……おかしい)
もしリアルタイム配信だとしても、ルミナが見ることができるのはモニター越しの映像のはずだ。
遠く離れた会場のテーブルで起きたことに、あれだけ早く反応できるはずがない。
まるで——
(その場を直接見ていたみたいに)
あかりの胸に、小さな違和感が落ちた。
静かに。
でも確実に。
6:帰還
それから5分後。
奏が戻ってきた。
「あ、奏くん」
「……悪い。混んでた」
「長かったですね」
「……そうかな」
椅子を引いて、座る。
その時。
モニターのルミナが笑った。
さっきのやり取りのリピートが流れ始めている。
『ちょっと走っちゃった〜♡ ダッシュは久しぶりだったな〜』
奏の肩が、ぴくっと揺れた。
(…………)
あかりは、そっと奏を観察した。
額に、薄っすらと汗。
喉仏のあたりを、一度だけ押さえた。
声が、わずかにかすれている。
「奏くん」
「なんだ」
「……さっき、どこ行ってました?」
「だからトイレって言っただろ」
「そうですか〜」
あかりはにっこりと笑った。
視線は逸らさないまま。
奏が、僅かに目を細める。
「……なんだよ、その顔」
「別に?」
「疑ってるだろ」
「疑ってませんよ」
「……なら、いいけど」
沈黙。
あかりはパンケーキの残りを口に運んだ。
(でも……やっぱり、おかしい)
7:致命的ミス
その後、店内は落ち着きを取り戻した。
コラボメニューを食べ終えて、あかりはデザートの写真を撮っている。
「これ、本当においしいですね……」
「そうか」
「奏くん、一口食べます?」
「……いや」
「またまた〜。遠慮しなくていいですよ?」
「遠慮じゃない。早く食べろよ」
「ふふ、じゃあいただきます」
ざわついていた会場も、ようやく落ち着いてきた。
スタッフたちの表情も、さっきより柔らかくなっている。
(……なんとかなったな)
俺はコーヒーカップを持ち上げた。
そのとき。
「すみません!」
スタッフが一人、こちらへ小走りで来た。
「先ほどは助かりました!」
スタッフは俺の顔を見た。
「それで、お礼の件についてなんですが——」
そして固まった。
空気が凍った。
(……終わった)
スタッフも、それを悟った。
「……あっ」
顔面蒼白。
「……大変失礼いたしました!!」
小声で叫んで、足早に去っていく。
テーブルに、沈黙が落ちた。
あかりが、ゆっくりとフォークを置いた。
「……お礼って?」
俺は、脳をフル回転させて選択肢を整理した。
言い訳の精度を、できるだけ最大まで上げる。
「……スタッフに知り合いがいたから」
「へぇ〜?」
「それで今日のトラブル、様子見に行ってた。俺は何もしてないのに、大げさだよな」
「ふーん」
「……なんだよ」
あかりは、にこっと笑った。
「別に?」
「本当かよ」
「はい」
でも——
その目は。
さっきまでとは、明らかに違った。
探している目だ。
追っている目だ。
獲物を見つけた側の目。
(……やばい)
「奏くん」
「なんだ」
「今日、来てよかったです」
「……そうか」
「すごく、楽しかった」
「……なら、よかった」
あかりは、窓の外に視線を向けた。
夕方の街が、オレンジに染まっている。
「また来たいな」
「……考えておく」
「それ、3回目ですよ?」
「……数えてるのか?」
あかりが、くすりと笑った。
8:検証タイム
その夜。
あかりは自室のベッドに横になりながら、スマホを持っていた。
イヤホンを両耳に差して。
左耳——今日のイベントで撮った動画。
ルミナが緊急ログインした時の音声。
右耳——カフェで録音した、奏の声。
交互に再生する。
比べる。
また再生する。
また比べる。
(……)
完全には、一致しない。
当たり前だ。ルミナの声は柔らかくて高くて、奏の声とは全然違う。
でも——
息の抜き方。
言葉の終わりの処理。
笑い声の最後の一音。
(……似てる)
似ている。
似すぎている。
あかりはイヤホンを外して、天井を見た。
部屋が、静かだった。
(まさか)
胸が、いつもと違うリズムで高鳴っている。
これは——推しに近づいている興奮か。
それとも。
別の何かか。
(……分からない)
あかりは目を閉じた。
今日の奏の顔が、浮かぶ。
トイレから戻ってきた時の、少し乱れた息。
運営スタッフと顔見知りだったこと。
そして——
モニターの中のルミナが、会場の出来事に反応したタイミング。
(……偶然にしては)
あかりはゆっくりと目を開けた。
スマホを持ち上げる。
今日のイベント動画をもう一度再生する。
『みんな〜! 待たせちゃってごめんね♡』
あの声が。
どこかで聞こえた気がして。
「……奏くん」
あかりは、静かに呟いた。
その名前が、以前より少しだけ特別に聞こえた。
(もし本当にそうなら——私は、どうしたいんだろう)
画面の中で、ルミナが笑う。
『また、みんなの心にログインするね♡』
あかりはスマホを胸の上に置いて、目を閉じた。
(次のデートで、確かめる)
“彼氏が消える時、推しが現れる。”
——偶然にしては、出来すぎていた。(つづく)




