2-22
そして今、私は非常に困っている。
何故ならば――…
灯りの付け方がわからないから!
部屋に入った途端、自宅と同じように壁のスイッチを探したんだけど、当然そんなものはないわけで。
じゃぁ灯りはどこから取るんだろうと、薄暗い室内を見回してみたら、テーブルの上に置かれていたランタンと目が合ったわけですよ。
キャンプとかでよく見るアンティークっぽいヤツ。
でも、ランプのどこを触っても点け方がわからなくて……
「――…これの点け方、わかる?」
自分で解決するのも大事なのは知っているけど、なにせここは異世界。
分からないことしかないので聞いた方が早いと、振り向き様ランタンを持ち上げ、背後の彼に聞いてみた。
「……は、い」
彼は不思議そうに私とランタンを交互に見比べた後、「失礼します」と言ってランタンを手に取る。
上部の摘みに指を押し当て、目を閉じること数秒後。
「わぁ」
温かい灯りがぽぅ……と点り、室内を明るくする。
その摘み、私も触ったけど、うんともすんとも言わなかったんだよなぁ。
「どうやって点けるの?」
「――…この摘み部分に魔力を流します。そうすれば内蔵されている魔石が反応して、灯りが点る仕組みです」
彼がもう一度、摘みに触れた瞬間、ランタンの灯りが一際強くなり、一層室内が明るくなった。
摘みを回せば灯りの強弱ができるみたい。
へぇ~すごーい。
もしかして、これが竜賢さんの言っていた『魔道具』なのかな。
電気もガスもなさそうなこの世界じゃ、かなり便利な道具なんだろうなぁ。
魔力を持っていない私には無理な話なんだけどねっ!
そのまま彼が部屋に備え付けの棒でランタンを天井から吊るしてくれた。
「ありがとう」
「――…いえ……」
――さて。
それよりも、まだやることはある。
夕食の前に終わらせなければ。
「疲れたでしょう?とりあえず、そこに座って?」
ベッドを指さしながらテーブルの上に置かれた陶製の水差しに視線を移す。
中にはきれいな水が入っていた。
めちゃくちゃ喉が渇いてるんだけど……これ、飲んでも大丈夫、なんだよね?
今まで飲み水を『聖水』で済ませていたツケが、こんなところで出るとは……
コップに移した水を恐る恐る口に含み、舌の上でゆっくり転がしてみる。
――うん。大丈夫。
変な味もにおいもしない。
……あ。この水、硬水だ。
「そうだ。これ飲んでおいて―――」
お風呂上がりの水分補給は大事だからと、彼にも飲んでもらおうと思い、振り向いた瞬間。
「………」
思わず、持っていたコップを落としそうになった。
――…ちょっと待って?
何故、彼は、ベッド前の床に座っているのだろう。
「…………ナニ シテ イルノ カナ?」
「ご命令通り、座っています」
いや、命令してないし。
床に座れとは言ってないし。
「私は……ベッドに、座って、と言ったつもりだったんだけど……」
「ベッドはご主人様が使用される物です。奴隷である私が使用するものではありません」
いや、そうなんだろうけど、そうじゃないんだ。
……そんな、きっぱり言わなくても。
逆にこっちが悪いこと言っているみたいになるのはなんで?
「その状態だと、私が何かと不便なので、ベッドに座ってもらえるとありがたいんですが……」
「しかし――」
彼が何かを言う前に、私の中の何かがプツンと切れた。
「しかしも案山子もねぇ!四の五の言わずにさっさと座る!!」
「っはいっ!」
「そして水を飲む!」
「はいっ!」
頭と語尾には"サー"を付けろ!!(笑)




