2-21
体を強張らせながら湯に浸かった彼の肩や背中に、薬湯を優しくかけた。
「熱くない?」
「――はい」
「そう。よかった」
何度か繰り返すと、ほぅ……と静かに息を吐き、肩の力が抜けていく。
やっぱりお風呂は良いね。
全てを洗い流してくれる正義だ。
それから水や焼き石を足しながら、入れ過ぎたハーブを使って彼の汚れを拭っていった。
彼にも同じことをお願いしたら、率先してやってくれた。
心なしか、さっきより手つきが軽く見える。
「よしっ。こんなもんかな」
額の汗を拭った時、陽は落ちていて、辺りは暗くなり始めていた。
ちなみに、足した水は途中から『聖水』になっていたのは内緒。
だって、いちいち汲みに行くのが面倒だったんだもん。
「じゃぁ、これで最後ね」
そう言って、彼の背後からケガの消毒と称して『聖水』を頭からざぱーっとかける。
――あれ?
よく考えてみたら『聖水』は「消毒」じゃなくて「浄化」だったね。
……まぁ、良いか。
「どう?少しはすっきりした?」
「――…はい…っ」
お。洗う前より覇気のある声。
良きかな良きかな。
私が渡したタオルで彼が自分の身体を拭いている間に、使用した場所や道具をきれいに片づけておこう。
日本人なら誰もが知っている教訓『来た時よりも美しく』だ。
「体拭き終わったらコレ羽織っててね」
そう言って、私が樽の上に放り投げていたマントを彼に差し出す。
「ですが……」
「――…そのままだと風邪ひくよ?」
いくら日中は温かかったとはいえ、陽が落ちて、肌寒くなってきている。
けれど、本当は風邪をひくとか、そういうかわいい問題ではない。
何故なら――
「着る物、ないよね?私、男物の服は持っていないし。それとも今まで着ていた服、着たい?大事なものだった?」
「いえ……そこまでは……」
それでも受け取ることを躊躇う彼に、笑顔でマントをぐっと押し付けた。
「私――全裸で歩かせる趣味は持ってないのよ」
それともなにか?
そんな趣味がキミにはあるのか?
「じゃぁ、部屋に行こうか」
戸惑いながらもマントを羽織った彼を引き連れて、宿の中に戻る。
てゆーか、明るい所で見たら、彼、イケメンなのでは?
身長あるし、痩せすぎではあるけど整った顔立ちしてるし、洗濯したからきれいになったし……は、違うか。
女将さんに水汲み場の礼と、夕食を部屋に運んでもらうよう頼んだ時、彼の姿を見てぽかんとしてたからなぁ。
まぁ無理もない。
さっきまでまっくろくろすけだったのが劇的に変化したんだもん。
ビフォーアフターも真っ青だよ。




