2-15
神職の服をぴしっと着こなした、何故かにっこにこの神父さんと、いろんな意味でくたびれた、ぼろっぼろの男性。
対照的すぎる――
もうね……ホントに、とっても、すっっごく、聞きたくないんだけど……
「えーと……その方は、ドチラサマデスカ?」
「コレはですね」
コレ?コレって言った?!
仮にも聖職者がどこをどう見ても人間をコレ扱い?!
「実は先日、この集落の有力者がとある事情で逮捕されまして」
「はぁ……」
「屋敷内にあったもの全て差し押さえの上、全財産を没収されたんです」
「へぇ……」
「当然、その中に多くの奴隷も含まれていたのですが……このように、奴隷商も引き取らない程の欠陥奴隷でして」
「ほぉ……」
「さすがにこのようなモノは、この礼拝所はもちろん、集落でも必要ないので」
「私に押し付ける、と?」
まさか、とにこやかに神父さんは笑う。
逆に怖いわ。
てか、礼拝所に奴隷が必要って何?
ちなみに『欠陥奴隷』とは、文字通り、身体の一部がなかったり、何かしらの障害がある奴隷のことを指すらしい。
「このような欠陥奴隷でも、次の街までは何かとお役に立つでしょうから、この際是非」
「いえ、間に合ってます」
確かに私はNOとは言えない生粋の日本人。
でもね。
さすがに犬猫じゃないんだから、そういう問題じゃないのよ。
「ですが、夫はいらっしゃらないんですよね?護衛も」
うっ!それを言われると……
「……えぇ……まぁ……」
「次の街までは最低でも歩いて5日はかかります。昼夜問わず盗賊や魔物が出没します。そんな危険なところをお一人で行かれるのはおすすめできません」
真剣な表情で絶対にやめた方が良いと神父さんは強く言う。
それは、わかってるんですけど……
ちなみに、この世界。
徒歩だと一日約30~40㎞、馬車だと約50~60㎞は行けるらしい。
――…車があるので大丈夫!とは言えない。
「いや……でも……」
「正直、この集落に護衛ができるような腕の立つ者はおりません。10日近く集落を離れられる暇な人間もおりません。なので、貴女の安全を確保するためにも是非」
だから、是非と言われても……
「その……彼が、護衛を務められるのか、甚だ疑問なんですが……」
皮と骨、とまではいかなくても、痩せて、全然筋肉もついていない。
どう見ても、体育会系じゃないだろう。
いや、問題はそこじゃないんだが。
「大丈夫です。そういう時こそ、コレを盾にして逃げれば良いのですから」
「全然大丈夫じゃねぇじゃん!」
聖職者としてその発言はどうよ?!
頼むからものすごい笑顔で断言するのは止めて?!
マジで怖いから!!
「どうしてもコレが役に立たなかったら、次の街で売れば大丈夫です。二束三文くらいにはなりましょう。まぁ、次の街まで生きていればの話ですが……」
そう言って神父さんは懐から一枚の紙と鍵束を取り出し、私に押し付ける。
「はい、こちらがこの奴隷に関する契約書、それと首輪と腕輪の鍵です。駄馬よりも鈍足なので足枷は外してあります」
どうせ逃げられませんよ、と神父さんは朗らかに笑う。
「ねぇ、ちょっと待って?神父さん。お願い、私の話を聞いて?」
「残念ながら待てないのですよ。私は今から礼拝の準備をしなくてはいけないので」
いや、絶対ウソやん?!
なに「いやー良かった良かった。お役に立てて……」とか言いながら奥に引っ込んでくねん!!
ちょっと待たんかい!
戻ってこいや、こるぁ!!




