別離
阿川が用意した場所へは帰らず、愛理のもとに入り浸るように住み始めた敬斗は、誰かに愛されることの喜びと、誰かを愛することの意味を徐々に知り始めていた。
そんなある日、いつもと変わらず、愛理と一緒に高校へ通っていたが、彼女に好意を寄せていたいじめっ子の一人が目をつけ、敬斗に敵意を向け始め、それはだんだんエスカレートしていった。彼を屋上に呼び出しては、複数人で暴行をし、辱めを与え続けた。これに慣れている彼にとっては、何も感じず、それが終わるのをただ待っているだけだった。彼女には黙っていたが、増え続けるからだのあざに、さすがにやめさせようと彼女がいうが、彼はそんなことをしても意味がないとわかっていた。そのため、何もしないように彼女に言っていた。はずだった。
いつものように、屋上に呼び出された敬斗の前に、「やめて!話して!」と、激しく抵抗する愛理と目が合った。驚く間もなく、いじめっ子の仲間にとらえられ、フェンスに押し付けられると、いじめっ子は彼女の体いじくり始め、胸をもみ、卑猥な声を荒げる彼女の耳元で、よだれを垂らしながら、彼をにらんできた。そしてその手はついに、彼女のスカートの中へもぐりこんでいった。その瞬間、彼は信じられないほどの力で、いじめっ子たちを払いのけ、勢いよく、そのいじめっ子の首をつかみ、壁に押し当てた。
想像もしない力で、壁に抑えられたいじめっ子は、力も入らず、敬斗の腕をつかみ、「やめてくれ。」と、弱弱しい声で懇願することしかできなかった。彼の血走った眼を見た愛理は、「ダメ!死んじゃう!」と、彼の体にとびかかり、制止させようとした。この状況を遠くから見ていた教師たちは、ようやく駆け付け、彼を無理やり押さえつけ、連れて行こうとした。しかし、一度怒りが頂点に達した彼を抑えるのは難しく、教師数人がかりでどうにか抑えることができた。
そこにいた全員を、一度生徒指導室に連れて行ったが、すぐに解放され、敬斗だけが警察に連れていかれてしまった。彼がいなくなったことで、愛理は不登校になり、寝込むようになった。




