墓参り
ブリスコーの東側の山の斜面には、カルスト地形の石灰の岩露頭を直接削った、四角い墓標が無数に並んでいた。
それは遥か2000年前から続くこのブリスコーの習わしだった。死体は火葬にされ、魂は灰となって天に舞い、そして肉体はラインベルクの鷹揚な大河に流されるのだ。
斜面の麓には教会立っていた。その教会前には広場があり、そこには百を超える英霊の遺体が柩に入れられて安置されていた 。
棺の蓋は空いていた。彼らは剣を握らされ、彼岸花の赤い花弁で胸元を飾られた。
黒い喪服に身を包んだ修道士がバデの前で祈祷を捧げていた。
葬儀にはブリスコーの人間全員が集まっていた。騎士たち、商人たち、人相不定なスラム街の住人から、普段は飲んだくれている浮浪者まで、そして本来無関係である冒険者たちまでが、列の後方で直立していた。
祈祷が終わりバデに火がつけられた。木組みの塔は天高く真っ赤に燃え盛った。その火はやがて棺に燃え移った。
遺体は灰となって空へと帰った行った。みな頭を垂れて黙祷していた。
こうして日々は過ぎ、やが十四日になり、義勇兵団からの召喚状が届いた。
明日から義勇兵団による訓練が始まる。アイルはその時を待ちきれなかった。
彼は自分の右手を太陽に透かしてみた。今は中洲の闘いのときよりだいぶ魔力が弱まっているが、それでも少しだけ右手から立ち上る瘴気を薄っすらと感じ取ることができた。
早くこの力で戦ってみたい。そして、できれば緑青……あの緑髪のオークと対決したい。それが彼の望みだった。
彼が興奮で眠れず何度も寝返りを打っていると、戸口に人の気配がした。
アイルは振り向いた。戸口にネネが立っていた。
「ねえ……」
彼女はゆっくりとアイルのいるベッドに近づいてきた。
「どうした?」アイルは訊いた。
彼女はベッドに尻を腰掛けた。そして言った。
「母さんとおじさんがセックスしてる」
二人は夜の草むらを歩いた。今日は真夏日だったからか、夜の風も生ぬるかった。
家の壁に掲げた松明の明かりがすすきの穂を照らしていた。
ねねが草むらの一点を指さした。
男が、女に覆いかぶさっていた。汗に濡れた背中が松明の光をぬらりと反射していた。
艶めかしい喘ぎ声と、腰を打ち付ける水気のある音が響いていた。
彼らの他にも、草むらのあちこちからも別の喘ぎ声が聞こえてきた。部屋では子どもたちが寝ているため、大人は外に出て草むらのあちこちでセックスに励んでいた。
ネネがアイルの手を引いて、草むらに入った。
「ねえ」彼女は言った。そしてアイルの腰に手を回した。
彼女は潤んだ目でアイルを見上げて、口づけした。
二人は草むらに倒れ込んだ。そして二人は結ばれた。




