↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/29

18 九字

 やがて9月の半ばになり、季節は秋になった。


 アイルたちがブリスコーに到着してから10日が経過し、ようやく義勇兵たちに招集がかけられた。


 彼らは、ブリスコー中央の丘の草原に集められた。それは、アイル達が住処としている遺跡のすぐ目と鼻の先であった。そんなわけで、近所の住人たちや暇な冒険者達が丘の上に座り込んで、義勇兵たちを見物していた。


「アイル、がんばんなさいよ!」アイルは後ろから声を掛けられた。振り向くと、村長の奥さんが笑顔で手を振っていた。アイルも手を振り返した。奥さんはブリスコーに着いてからはしばらくは気が沈んでいたが、最近は気も晴れたのか、元の元気な調子のおばさんに戻っていた。


  丘の草原を踏み倒して作られた円形の窪地に、すでにおよそ三十人ほどの若者が集まって立っていた。アイルはそこへ歩いていった。


「よう!」茶色い髪を逆立てた、入れ墨を入れた特徴的な顔と目が合った。「おせーじゃねーか。昨日は楽しみすぎて腰も立たねえか?」トグマが言った。


「うるせえ」アイルは言った。女子たちが顔を赤らめて顔をそ向けた。スホルトの住人がこの草むらで毎晩青姦しているというのは、近所の住民には周知の事実だった。おそらくアイルが腰を振っているのは昨日ばっちり観察されてるんだろう。


 彼が義勇兵たちを見渡すと、その中にひとり、ひときわ小さい女の子がいた。それは、アマンダのお付きの栗毛の小人族の女性だった。


「お前も義勇兵になるのか?」アイルは驚いて聞いた。


「いけませんか」シリカが答えた。


「別にいけなくはないけど……お前は戦えるのか?」


「馬鹿にしないでください。私は近衛侍女です。一通りの剣術はこなせます。あなたみたいに人を見た目で判断する手合は、ブッスリです」彼女はそう言い、


 彼らが他愛もない世間話をしていると、


 石に座っていた丘の上からダイアナが、立ち上がり話し始めた。


 「さて、全員揃ったようだな。改めて自己紹介しよう。私はブリスコー義勇兵団団長のダイアナだ。諸君の献身に改めて敬意を表したい」そう言ってダイアナはしばらく頭を下げた。「では早速訓練を始める」


彼女はそう言うと、異国の文字や象形が描かれた木の板を取り出した。彼女はそれを背後の草に立てかけた。


「さて、諸君にはこれから義勇兵流の魔法を習得してもらう。まずは、そもそも魔法とはなんなのかだが」


 ダイアナはここで一呼吸置き、義勇兵たちを見た。彼らは皆真剣に聞き入っていた。魔法の説明に関しては、どんな漢でも真剣に聞き入るのだ。彼女にはそれがうれしいことだった。


「魔法とは、基本的にこの世界を構築する五元素のうちの一つ”オーラ”を操る術のことだ。五元素とはこの世界を構築する五つの最小構成要素のことで、地、水、風、火、そしてオーラの五つのことであり、前者四つは物質を、後者は魔力を形作っている。


 ”地”は、物質の基本的な要素であり、堅さや固定性を表している。例えば、岩や土、金属などが「地」に分類される。


 ”水”は、流動性や変容性を表す要素であり、海や川、雨、涙などが「水」に分類される。


 ”風”は、動きや変化を象徴する要素であり、空気や風、音などが「風」に分類される。


 ”火”は、エネルギーや活力を表す要素であり、太陽や火災、熱などが「火」に分類される。


 そして”オーラ”とはそれらをつなぎとめる媒質のことだ。一般的にはこれが魔力と呼ばれている。


 世界は物質と物質が魔力によって固く結びついてできている。そしてこれらの結びつきを分解し、再構築する術のことを我々は魔法と呼んでいるのだ。


さて諸君には、これから学ぶものを見せようと思う。君たちは開眼しているがゆえ”見える”はずだ。まずは私の”臨”


(ダイアナが臨を見せる(ダイアナという名前を変える))


 彼女のオーラは、身を守るハリネズミのように、彼女の体から放射状に迸った。それは夏至の夜空に燐光する北極星の硬質な輝きのようだった。


「では他の人間にも人間に手本を見せてもらおう。ザック、ランドル、立て」


 ダイアナの呼びかけに応じて二人の男が立ち上がった。


「諸君ら二人は既に騎士の薫陶をうけた。君たちの魔法を見せてくれ」


 ザック達は、何も握っていない両手で架空の剣を正眼に構えた。そうしてしばらく佇んでいると、彼らの周囲を取り巻く微弱なオーラが、だんだんと波うち、次第におおきくうねる渦のように体の表面からほとばしった。


 二人のオーラは似たような形質、色味そして感触を持っているように思われた。


「これはロードランの騎士が持つ”固有オーラ”だ。このオーラの形質のことを”表現型”と呼ぶ。ロードラン騎士の表現型は”ルーラン”と呼ばれている」ダイアナは言った。「見ての通り、二人はおなじ質感のオーラを持っている。お前たちはいつから魔法が使えるんだ?」


「肉体の修行を終え、騎士の叙任を受けた時からです」


「叙任式で剣の峰で肩をたたかれたとき。そうだな?」


「はい」

「そして主君に忠誠を誓い、そのオーラをわが物として受け継いだのだな」


「はい」


「基本的に軍隊は作戦行動にて皆で同質のオーラを使う。騎士階級は主君が古来から受け継いできたオーラを皆で共有し戦うのだ。同質のオーラを使う理由はいろいろあるが、基本的には同じオーラを多人数で共有することで、個人が扱えるよりも強い魔力を纏うことができる。そして彼らは一つの大きな意志となって行動し、敵を討つ。それが軍隊の戦い方だ。しかしこの方法には弱点がある。それは皆が同じオーラを共有しているがゆえに、そのオーラ固有の弱点も共有せざるをえないということだ。無論”ルーラン”も長年の戦い方の中で洗練されてはいる。しかし、義勇兵の行うような遊撃戦にはあまり用途として向いてはいない」


 ダイアナは改めて壁に立てかけた白板を振り向いた。


「義勇兵の諸君には、己の持つ世界に一つだけのオーラを磨いてもらう。そのための義勇兵流の修行術がある。それは”九字”というものだ」ダイアナはそう言うと、地面に棒で文字を書いた。


「”九字”とは、簡単に言うと東方に伝わる武術の様式のことだ。諸君らの中には他にも西方魔術を既に取得しているものもいるが、義勇兵の用兵にはこちらのほうが実践的であるがゆえあらためて九字を習得してもらう。九字とはなにか。九字の意味するところは9つの文字。道家、つまり東方の思想家の一派によって呪力を持つとされた9つの文字のことだ」そういうとダイアナは地面に9つの異国の複雑な文字を書いた。


「これらはりん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜんと読む。この文字は表意文字であるがゆえそれぞれに固有の意味を持つ。そしてこれらの文字は、九字護身法においてそれぞれオーラの基本表現型に対応している……わかりやすくいうと、それぞれが武術でいう”型”を表しているということだ。


 そして九字は字だけでなく、それぞれに対応する”印”を持っている。


 ”印”とは、西洋魔術で言うところの詠唱と同じようなものだ……まあ口で長々と喋ってもわかりづらいのでまず手本を見せよう。君たちは開眼しているがゆえ”見える”はずだ。

 まずは”臨”」


 ダイアナは手を独特な形組み、仁王立ちになりオーラを纏った。


(ダイアナが再び臨を行う絵)


 それはアイルたちの持つ揺蕩ったぬるいオーラとは真逆だった。


 彼女を中心に放出する刺々しいオーラが、高周波の振動音を出して彼女の体から屹立していた……そう、そのオーラからは音が響いてきたのだ。


 これは聞き間違いか?アイルは隣に立つアリアを見て、目線を送り耳を触った。彼女もこくりとうなずいた。どうやら空耳ではないらしい。


 そして、アイルはこの音に聞き覚えがあった。


「気付いた者もいると思うが、私が君たちの魔力を解放したあの日、その体に纏っていたのは私のオーラだ。より正確には、君たちのオーラが、私の表現型を纏ったのだ。


 ”臨”とは臨む、ということ。己の持つ真なる資質に対して、正面から向き合うということだ。


 今の君たちのオーラとはずいぶん違うだろう。個々人の持つオーラの自然な形を”純表現型”と呼ぶ。


 私の表現型の影響が君たちのオーラから完全に消え去るまで、いままで時間をおいていたのだ。もっとも、騎士や魔法使いのように、長年にわたって特定の表現型を叩き込まれた人間は、なかなかそれを捨て去ることはできないがな。


 ”臨”の修行において、君たちにはゼロから、己自身の魔法を構築してもらう。


 では次、”兵”」


(ダイアナが兵を行う絵) ダイアナの輪はソリス


  全身から放射されるオーラがその鋭さを増し、さらに大きく身を包んだ


 アイルたちはその鋭さに気圧された。まるで二百本の鋭い槍が四方八方に殺意を漲らせて向けられているかのようだ。その高周波の振動音は夜中の蝙蝠の悲鳴のように空気を揺らし、アイルの鼓膜を突き破った。

 そのオーラは触れれば刺し貫かれるかのようだ。


「”兵”の意味は兵士。”臨”よりさらに強いオーラを纏うことだ。”臨”を磨くことでまず己の表現型に集中し、”兵”でその出力を上げる。


 次は”闘”。これは兵で纏った強いオーラを用い戦う事だ」


 彼女は股を開き腰を落とした。そして肩を怒らせ、右腕を深く振りかぶった。


「ぜあ!!!!」


 彼女は鋭い絶叫とともに地面を殴った。


(絵)


 炸裂弾の爆発跡のように地面はえぐれ、あたり一面に瓦礫が吹き飛んだ。


 そして細かいがれきが雨のようにパラパラとしばらく周囲に降り注いだ。


 彼女は右手を前に突き出した。その皮膚は割け、血がにじんでいた。


「次は”者”。これは自身のオーラで体を癒やすことだ。」


 彼女は目を閉じ方の力を抜いた。すると彼女のオーラは刺々しいそれからは変化し、柔らかな綿のような軟質なそれへと変化した。


 アイルたちが見ていると、皮膚の傷はみるみるうちに塞がった。


 「義勇兵は基本的に少人数の遊撃戦を行う。したがって常に治療法が用意されているとは限らない。だから自分の身を自分で癒す手段が必要になる。


 次は”皆”、これは他人とオーラを共有することだ。実際にやってみせよう。アイル来い」


 アイルは立ち上がり、ダイアナのそばに立った。彼女が手を差し伸べたので、彼はそれを握った。



(絵)


 するとアイルの前身は”あの感覚”に包まれた……魔力を人生で初めて纏った、あの感覚に。


 アイルの顔は紅潮し、掌が汗ばんだ。動悸が激しくなり足に力が入らない。


 この浮遊感。そう、浮遊感だ。地面に足がはっきりつかないような、この極度に浮ついた感覚。なんでもできるという感覚だ。この高揚状態があったからこそ、アイルは緑青に無謀にも戦いを挑んだのだ。アイルはこの感覚を取り戻したかった。


 しかし、ダイアナはぱっと手を離すと、アイルに座るよう鼻で指示した。アイルは仕方なしに腰を下ろした。


「次は”陣”。これはオーラにて敵を探知することだ。


(絵)


 彼女のオーラが薄く広く引き伸ばされた。


 アイルたちは彼女のオーラに包まれた。生暖かく、なにか膜のようなものに包まれている感触だった


「君たちは今私のオーラに触れられている感触があるだろうが、逆もまたしかりだ。これによって敵を感知する。


 ”列”。これは戦士の使う”技”であり、魔法使いの使う”魔法”だ。まあもっとも私の列は地味だがな……」


 彼女はそういうと、壁に立てかけてあった盾を握り、頭上に振りかぶると、それを地面に叩きつけた


 その瞬間、地面が爆発した。



(絵)


 轟音が周囲をつんざき地面が揺れた。兵団事務所の立て看板がばたんばたんと壁を打ち付けた。


 音に驚いた義勇兵宿舎の住人が窓から何人か顔を出した。


 茶色い土くれがしばらくアイルたちの頭に降り注いだ。アイルは頭と肩に積もったそれを払った。土くれは湿った感触がした。


 広場の中央には直径20フィートのクレーターが穿たれていた。盛り上がった茶色い地面が周囲の石畳を突き破り、空気に露頭していた。


「この盾は鎢鋼と呼ばれる金属でできている。錬金術師が言うところのタングステンというやつだな。重さは200ポンドある。私は肉体を鍛えることでこれを振り回して戦うのだ。


 次は”在”。これはオーラを看破すること。


 隠れた相手を探し出すことに使う。




(絵)


 そして最後に”前”。オーラを隠匿することだ」


 突然目の前の彼女の存在が希薄になった……今目の前にいるにも関わらずだ。


(絵)


「私の気配が薄くなって驚いているだろう。すでに開眼している諸君たちにとって、姿かたちとオーラの二つを同時にとらえて認識するのが常だからな。姿が見えていても、オーラがそこになければ存在を見落としがちになる……。


 以上が九字だ。西方魔術との違いとしては、西方魔術がオーラの表現型は他の者から受け継ぎ、古代人残したより高度な表現形式の模倣を探求するものであるのに対して、東方魔術は表現型そのものの探究に重きが置かれているという点だ。


 ”臨兵闘者皆陣列在前”……このうち諸君にはまず義勇兵として最低限必要な臨、兵、闘、そして在と前を覚えてもらう。その後は個別の指導者につき”烈”を磨いてもらう。前線に出るのはそれからだな。では皆、立て!まず”臨”からだ……」


 こうして訓練が始まった。義勇兵は各自体力の限界まで臨を行う。


 まず最初に倒れたのがシリカだった。体が小さいから、彼女は早々にオーラを使い果たし、気を失い地面に顔から倒れ込んだ。


 彼女は団長に体を起こされると、しばらく体を休めた後再び臨を行った。しかし、今度は九に原を抑えると、口から朝食を嘔吐しだした。


「ゔおえええええええ」彼女は女の子とは思えない声を口から吐き出し、胃の内容物を吐き出した後も腹を抱えてえづいていた。彼女の口から透明な胃液がダラダラと流れた。


「気持ち悪いか」団長が言った。「これが魔術師の言う魔力酔いというやつだ。ちときついとは思うが、これを繰り返すことでオーラ総量は大きくなる。まあ、気長に続けることだ。


 彼女が言い終わると同時に、今度はカイに異変が起きた。彼は脚をフラフラさせたかと思うと、草むらに四つん這いになり嘔吐を始めた。彼が二番目に倒れたところを見るに、別に体格はオーラ総量と関係がないらしい。


 こうして、次から次へと義勇兵達が倒れていった。草むらは段々とぷうんと酸っぱい匂いに満ち始めた。


 結局、最後まで残ったのはアイルだった。


「アイル、お前平気なのか?」トグマが訊いた。


「別に全然平気だけど」アイルが答えた。


「なんかお前のオーラってちょびっとづつしか外に出てねえみたいだな」トグマが言った。


 アイルは、たしかに自分でもそれを感じた。自分の頭上を仰ぎ見ると、漏斗のほそい水の流れのように、オーラが細い真っ直ぐな流れで天に登っていくのが見えた。


「そいつの表現系は特殊だ」団長が言った。「まああまり他人と比較するな。今は自分の臨に集中しろ」


 こうして義勇兵たちは何度も何度もオーラ切れを起こしては、少し休み、また臨を行うことを繰り返した。そのうちに丘の上で見ていた冒険者達もこの修行に加わった。


「基礎修行なんて久しぶりだな」冒険者は言った。

 

ナマズ料理が振る舞われる


世間話


やがて時刻は昼を回った。


「休憩だ」エルサそう言って手を叩いた。


 義勇兵たちがその場にへたり込んでいると、コックの親父が 両手に鍋を運んできた。彼は続いて食器の入ったカゴを持ってくると、庭の中央で火をおこし、鍋を再び沸騰させた。


 アイルはちらりと鍋の中身を見て歓喜した。うなぎだ。うなぎのぶつ切りだ。


 皆それぞれ木皿を手に取ると、鍋に一列に並びスープを分け与えられた。


アイルは腰を下ろしながら箸を舌で湿らせた。そしてスープに沈むうなぎをつつき始めた。うなぎの油が染み出し、スープの表面を覆い黄色い大きな膜を作っていた。彼はあっという間にうなぎのスープを平らげた。


「おかわりあるぞ」オヤジは言った。アイルは兵たちの中で一番におかわりをした 。



 

お午後からまた臨 





家に帰った

義勇兵たちの部屋は貸し切りだ

おまえ しっぽりはめに行くのか

うるせえ


覗いていいか

いいわけねえだろ



んねねとはめまくる


寮の部屋に帰ると、皆寝ていた。

部屋割りされていた

これが俺たち6人のパーティーらしい

アンナ

すでに仲良くなっていた


アンナは魔法使いなので訓練には参加していなかった。

よろしく


じゃああたつぃたち、夜警の仕事があるから




なかなかうまくいっているようだな。では

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。