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第三十六話 旅行計画

 

 朝礼のために講堂に集められた生徒達はみんな怠そうにしている。僕も二人と別れた後に教室で信三と合流し、講堂でかれこれ十五分椅子に座り待ち続けていた。


「中間試験が終わったと言ってもまだ期末があるんだよな~」


 椅子に寄りかかり、目線を上にしながら信三が話を振る。当然退屈だった僕はその話に乗ることにした。


「あるに決まってるだろ? 何のために試験があると思ってるんだよ」


「試験なんてただのお遊び。成績なんかで人の価値は決められないぜ!」


「うわぁー、いかにも勉強が嫌いな奴が言う台詞じゃん。まあ僕も勉強嫌いだけど」


 しょうもない話で時間を潰しながら、僕も天井の一点を見つめる。すると、信三が思い出したかのように別の話を振ってきた。


「……そういえば、昨日の姉御の方は大丈夫だったんか?」


「あー、昨日か……」


「何か歯切れ悪いな、どうした?」


 信三が歯切れが悪いと言うのも分かるが、昨日の事を話すのは無理だと思う。


「まあ……色々あったんだよ。信三は気にすんな……っと校長が出てきたぞ」


 タイミング良く舞台横から出てきた校長は真ん中に立たせてあるマイクの前まで行き、朝礼を始めた。


「えー、それでは朝礼を始めたいと思います。まずは期末試験の事を話したいと思います」


 ーーえっ!? ーー


 心の声でこう思ったが、朝礼を聞いている多くの生徒もそうだと思ったはずだ。何故中間が終わったばっかりなのに期末試験の話がもう出て来るのか。校長の次の一言でみんなは理解した。


「期末試験は……実施しないこととなりました」


「「「ヒャッホー!!!」」」


 実施しないと言われ、全ての学年はまるで祭りのように盛り上がった。しかし、その中の一割ほどはただ黙って校長の残りの言葉を待っている。僕もその中の一人てある。信三は……どうでもいい。


「はいはい、静粛に静粛に。まだ話は終わってません。ゴホンッ! えー、その為昨日までの試験を期末とし、成績をつけることとなりました。私からの話は以上です」


 校長が舞台から降り、理事長の美羽姉にバトンタッチされるまで講堂は風の音しか聴こえないほど静まり返る。

 美羽姉がマイク前に立ち話を続ける。


「先ほど説明された通り、試験は終了。後の学園は休みとします。誰か質問のある人はいるかな?」


 美羽姉に言われ、多くの生徒は手を挙げる。美羽姉はその中から挙がった手を選ぶ。


「はい。そこの人、質問は何かな?」


「はい。つまり夏休みに早めに入るということで認識してよろしいでしょうか?」


「うん、確かにその通りだね。……でも、こういう考えも出来るよね? 中間サボった生徒が良く分かる。つまり成績悪い子は夏休みに入らず、補習。いつも通りの授業ってこと。皆さん納得できましたか~♪」


「「「出来ません!!」」」


 多くの生徒は理事長を批判する。だが、僕には関係のない事だと悟った。勿論、ちゃんと試験勉強をしたのだから、赤点なんて取るはずがない。生徒の質問を聞き終え他に質問のある生徒はいないか確認する。皆、理事長兼生徒会長の美羽姉を信用しているのか一つの質問だけで朝礼は終わった。実際はもっと反論したいはずなのに。


 *****


 教室の戻り、担任の先生である原野先生から説明を受ける。クラスの皆は黙ってそれを聞く。


「という事で明日から急遽きゅうきょ夏休みとなりました。他の高校生と違ってかなり早めなので羽目を外しすぎたりして他校と問題を起こさないように! それと試験の点が悪かった奴は後で連絡がいきますから。以上解散」


 原野先生はその後すぐに教室を後にした。僕も信三も試験は問題ないだろう。何といっても試験対策の勉強会までしたんだからんな。それより美羽姉はこんなに早く学園を終わりにしたのだろう? 


「信三、美羽姉の所に行って今日の事聞いてみよう」


「ん? おう! 俺は別に構わないぜ!」


 そうと決まれば善は急げだ。僕と信三は屋上にある生徒会室に向かう。隣の教室を通り過ぎた辺りで後ろから声がかかる。


「二人とも~、どこ行くの? あたしも連れてってよ」


 千景のクラスも丁度終わったようで見かけた僕達が行くとこが気になったのだろう。断わる理由は無いので一緒に行くことに。

 屋上に着き、パスワードと美羽姉から渡されていた鍵を使い扉を開ける。生徒会室のドアの前まで来ると、美羽姉が出迎えてくれた。


「カズ君~♪ とその他二名。どうぞ」


「毎回抱き着かないでよ美羽姉」


「だって~婚姻届けに名前書いてくれたでしょ?」


 ピキッと空気が凍り付くのが僕でも分かった。


「和馬? それって美羽姉と結婚するの? そんな事しないよね? だって姉弟なんだから……ね?」


「やめてやめてっ! 言いながら親衛隊の人達に通報するのはマジ勘弁」


 何とか携帯をポケットに戻してくれた千景。危うく親衛隊に伝わって身の安全が無くなるところだった。生徒会室に入り、天峰さんに軽く挨拶をし、美羽姉に今日の事を問う。


「美羽姉どういうつもりなの?」


「どうって? 何が?」


「姉御、とぼけんなって。何で試験を無くして早めの夏休みにしたのかって和馬は聞いてんだよ」


「……歩く排泄物は黙ってて。それで理由を知りたいと、そういう事ね♪」


「そ、そうなんだ」


「んーとね、簡単に言っちゃうと……夏休み長くしてカズ君をバカンスにでも行こうかと思ってるの♪ キャッ! 言っちゃった♪」


「それって……自分の都合でって事?」


「そうだよーだって私の学園だしどうやって運営しようが私の自由だしー」


「……そうですか」


 美羽姉との旅行は正直楽しみではあるのだが、二人きりで行こうとするに決まっている。僕を『弟』ではなく『男』として見ている美羽姉と旅行にでも行ったら……ハネムーンとか言いそう。それだけは絶対に阻止!


「……和馬。あたしも連れてって、美羽さんだけじゃ心配だし。美羽さんそういう事でお願いします!」


「ヤダ! チカちゃん連れて行ったらカズ君と二人っきりになれないじゃん!!」


 この二人本当に仲が良くない。千景の全てを否定しそうな勢いで断わってるし。二人の言い争いを横で眺めていると、天峰さんが会話に加わった。


「生徒会長も少しは大人になったらどうですか? 赤崎さん。私も旅行に同行する予定ですし、一緒に行きましょうか」


「ほんとですか! それはありがとうございます!」


「ちょっ!? 杏ちゃん。勝手に決めないでよ」


「私には生徒会長も勝手が過ぎるように思えますが? ……違いますか?」


 少し強めに美羽姉をしかりつける天峰さん。何だか二人が親子みたいに見えてしまって頬が緩む。高校生になってから随分と賑やかになったな。


「カズ君~杏ちゃんがいじめるー」


 僕に引っ付き離れない美羽姉。天峰さんが引きな離そうとしてくれるが、自分の身体も引っ張られるのでなかなか離れない。僕は天峰さんにいつもの事ですよといいこのままにしながら旅行の話を続ける。


「それで天峰さんと千景は一緒に行くんだね?」


「そうです。生徒会長だけでは心配なので……色々と」


「確かに僕も心配ですね……色々と」


 多分、天峰さんと気がかりなところは違うかもしれないが、美羽姉は僕達の事なんてお構いなしだろう。その証拠に旅行のパンフレットを手に電話でホテルの予約をしている。あのようになったら、もう止める事なんて出来ないだろう。


「……という事でホテルの予約は出来たから、明後日に行こうか。カズ君、杏ちゃん」


 どうやら名前を呼ばれた人達の分しか予約していないようだ。呼ばれていない残りの人達は……。


「ちょっと姉御! 俺も行きたいんだけど!」


「そうだ! なんであたしの分のホテルの予約はしてないの?」


「だって……信三は赤点あるでしょ? それにチカちゃんの分まで予約する義理はないし」


「「…………えっ!?」」


 目を丸くし、美羽姉の言葉を待つ。机の引き出しから紙を取り出すと、それを目の前の信三に突きつける。紙を受け取った信三はゆっくりと一文一文目を通す。

 赤点者がここには記載されていた。各学年別に見ていくと、信三の目線がある一点で止まった。どうやら自身の名前を見つけてしまい、顔がとんでもない事になっている。


「あ、姉御。なんで俺の名前がここに……?」


「だって信三邪魔なんだもん〜♪ 誰だって排除したくなるでしょ?」


「信三はともかく、あたしはさっき一緒に旅行行くって言ったのに!」


「やっぱりチカちゃんには旅行は遠慮してもらおうかなって。流石に旅行中もチカちゃんと一緒にいると精神的にキツいから……」


 あっさりと本音を喋った。それに何をしても信三の補習は決定事項らしい。美羽姉に言われ、千景は瞳に涙を浮かべる。


「何よっ! 何よ何よ何よっ! 美羽さんのバーカ! 阿呆ーーー!」


 そのまま生徒会室を泣きながら出ていく。その場が静寂に包まれたタイミングで僕は美羽姉に千景も一緒に行けるように話をする。


「美羽姉。流石にあんな仕打ちはないんじゃない? 千景が可哀想だよ」


「だってー、旅行についてきそうだったし……」


「それくらい許してあげようよ。僕は何かあるなら千景や皆を誘おうと思ってたし。だからさ、今からでも千景達の旅行の参加を認めてあげようよ」


「いーやーだー。カズ君は私とチカちゃん、どっちが大事なの?」


 これはベタな問いをしてきたな。なので僕もベタな答えで返すとする。


「勿論、二人とも大事だよ。今更何を言ってるの? 美羽姉」


「…………バカ……私を選んで欲しかった……」


 僕に背中を向け、小さな声で一言言う。当然僕にはそんな声聞こえるはずもない……というのは嘘だ。本当は聞こえているに決まっている。だが、ここで変に答えるとややこしくなるのは御免被る。わざと聞こえなかったように振る舞った。


「えっ!? 美羽姉。今なんて言ったの?」


「分かったって言ったの! チカちゃんとか皆を連れていけばいいのね?」


「そう、ありがとう美羽姉」


 やっとの思いで話がまとまり、これで僕の旅行先の安全は確保された……はずだ。大人数の中で美羽姉も大胆な行動はしないだろう。

 全くあの日から完璧に美羽姉は壊れている。これから僕は一体どれだけの苦難に巻き込まれるのやら……。







第一部一応こんな感じで終わりにして第二部! 夏休みに突入したいと思います。第二部は少し更新が遅れるかもしれません。一年経つので新作も執筆してたいので……。では、次回もお楽しみに。

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